こんにちは。よりみちねこです。

最近はBSやCSでかなり古いドラマを視聴できる。
ありがたい。

「イグアナの娘」
1996年テレビ朝日 
脚本 岡田惠和
原作 萩尾望都
全11話


これはね、「人魚姫」「鶴の恩返し」「シンデレラ」「みにくいアヒルの子」を合わせたような
人生ファンタジー。
なのだなぁ、ということが最終話で分かった。

萩尾望都のコミックが原作。
岡田惠和は、マンガ原作が得意なのか?
先ごろでは「ど根性ガエル」があった。

よりみちねこは萩尾望都ファンだが、これは読んだ記憶がない。
短編だそうだ。
よりみちねこは、もっぱら、
「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」を枕元に置いて、
当時、毎晩毎晩読みながら寝たものだ。

「イグアナの娘」
自分の娘を愛せない母と、母から愛されない娘の物語だ。

青島ゆりこ(川島なお美)は、女の子を産んだ。
病院のベッドで、なんとその我が娘の顔がイグアナに見え、泣き叫ぶ。
ゆりこは娘を殺して自分も死のうと思ったができなかった。

それからずっとゆりこには、娘・リカ(菅野美穂)がイグアナにしか見えない。
妹・まみ(榎本加奈子)は、かわいい女の子。ゆりこはまみばかりを可愛がる。

母のために何をしても拒否されるリカも、小学生のとき、
入水を試みる。が、同級生の岡崎昇(岡田義徳)に助けられる。
昇はそのときから、リカの母親にいささかの違和感を覚えていた。

リカと昇はずっといっしょに高校まで進んだ。

昇に心惹かれているリカ。
成績優秀で大学進学を望んでいるリカ。
しかしゆりこから、あなたは大学にも行ってはいけないし、恋もしてはいけない、と言われる。
あなたにそんなことはできるわけがないのだ、と。
醜いあなたに、ということなんだろう。

つまりこのドラマは、醜形恐怖症の娘と毒親の物語でもある。

本当に醜かったのかどうかは分からない。
けれども、母親の思い描くかわいらしさとは違ったのだろう。
それゆえ、愛せない。ゆえに辛くあたる。
ゆりこは、今では周知の代名詞になっているいわゆる「毒親」だ。

リカも鏡や窓ガラス、水辺に映る自分の顔がイグアナに見える。
それは母親からそう言われ、刷り込まれてきたせいなのかもしれない。

それでも、リカは健気に懸命に、優しい心で生きている。

転校生・三上伸子(佐藤仁美)の明るさに助けられたリカ。 
その伸子も、辛い過去を乗り越えてきたのだった。
せっかく親友になれたのに、
伸子はリカとの待ち合わせ場所へ急ぐ途中、交通事故で死んでしまう。
リカは自分のせいだと思う。
自分は人を不幸にするんだ、と。
しかし、伸子の明るい母親・三上恵子(木内みどり)に救われるリカ。
そして娘を失った恵子もまたリカに救われたのだった。

妹・まみも、幼なじみ・昇も、母・ゆりこの異常さに気づき、 
リカに同情する。

ゆりこは、獣医の夫・青島正則(草刈正雄)が若い時に描いた絵を偶然みつける。
なんだか知ってるような気がする。ガラパゴス。
キミは知らないよ、いっしょに行ってない、と言う正則。 

そのときの日記を正則は引っ張り出し、読む。
それを机の上に置いたのは、故意だったのだろうか?
ゆりこはそれを読むと、自分がイグアナのお姫様だったことを思い出す。

正則は、岩に挟まって動けなくなっていたイグアナを助けた。
するとそのイグアナは親しみを込めた目で正則を見つめた。高貴でお姫様のようだ。 
正則は、感動する。イグアナにも分かるんだな、と。

イグアナのお姫様は、人間になることを願って許される。
ただし、自分がイグアナだと知ったとき、死ぬ、と。

なるほど、だからゆりこには、正則と結婚するまでの記憶がなかったのか。
ファンタジックに描かれているけれど、
もしかしたら現実にはこういうこともある。
つまり、ゆりこにも親から愛されなかったトラウマがあって、過去のことを心の奥に押し込めて、記憶からも消し去っているのかもしれない。
それは、思い出したとき、生きてはいられないほどの心の痛み・・・。

イグアナのお姫様は、助けてくれた正則に恋をして、お礼もしたかったのだろう。
けれども、人間になったイグアナは、どうして自分が人間になったのか、生きているのか、
その目的と意味を思い出すことができなかったのだろうな。
それは、人間がこの世に生まれ落ちるとき、過去生の記憶を全て失う、というルールと同じだ。
何をするつもりだったのか思い出せない人間は、悩み、彷徨い、苦しむ。
ゆりこの場合は、娘を愛せないという苦しみを背負う。

昇と留学先のボストンへ向かうリカ。
搭乗前に、母のことが気になり帰る。
ゆりこは死んでいた。
遺体の顔から布を取ると、そこにはイグアナの顔があった。
「リカにはイグアナに見えるの?」と正則。
「イグアナの娘」とは、
「イグアナの顔をした娘」ではなく「イグアナから産まれた娘」
ということだったんだな。

正則もようやく悟ったのか、それとも初めから知っていたのか。

ゆりこの肩にあったイグアナ模様の痣が、リカの肩の移る。
けれどもリカは、ゆりこの呪いを受け継ぐことなく、
昇と結婚し、子どもにも恵まれ、優しい母親になっていく。

萩尾望都はすごいな。
毒親と醜形恐怖症の娘の物語を、
見事にファンタジーのなかで描いてみせた。

「人魚姫」と「鶴」はゆりこ。
「シンデレラ」「アヒルの子」はリカ。

秀逸な作品だと思う。


出演者も見ごたえがある。
若かりし(おそらく19歳かそこら)菅野美穂、岡田義徳、佐藤仁美。
今となっては懐かしい榎本加奈子。
今は亡き川島なお美。
草刈正雄も若い!
貴重な映像だ。
余談だけど、
佐藤仁美の母親役の木内みどりって、今、反原発とか平和活動とかしてるよね?


機会があれば、ぜひお薦めだにゃ


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