よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

秋ドラマシーズンも終わりました。
いよいよ年末から年始にかけては、再放送やスペシャルドラマを楽しむ時期になりますね。

「先に生まれただけの僕」最終話
主演/櫻井翔


よりみち的には目立った秀作もない今シーズン。
そのなかでは、久々にナイスなセリフの多かったドラマ。
現代の教育、いや大人の人生にも欠けている、
もしかしたら日本人はあまり考えてこなかった個々人を大切にするという感覚を提示してくれて、それがいかに心地よいものであるのかを教えてくれたドラマだった。

全体として役者と配役のバランスも上手に取れていたと思う。

脚本は福田靖。
「救命病棟24時」「DOCTORS」等々を手掛けている。
「CHANGE」もナイスなセリフがあったと記憶している。

そして最終話。
まさにナイスなセリフがあった。
鳴海校長(櫻井翔)から生徒へ向けてのスピーチ。
鳴海校長は、高校の校長として残ることを決意。

その前に、ほっとしたのは恋愛劇。恋愛騒動にならずvery goodだったと思う。
ありがちなのが、必ず恋愛のドロドロや駆け引きを盛り込む話。
よりみち的には、そこは恋愛ドラマでやってくれ、と言いたいところ。
真柴先生(蒼井優)の校長へのほのかな恋心はそれ以上発展することもなく、
鳴海校長の婚約者・松原聡子(多部未華子)は、いっとき鳴海から離れるが、鳴海の仕事を理解して戻ってくる。
その松原に横恋慕の後藤田(平山浩行)は、松原が婚約を解消したと知ってガッツポーズ。しかし、鳴海と松原がよりを戻したあと、彼がどうなったのか分からない。
真柴先生を慕っている島津先生(瀬戸康史)。真柴には全くその気はなかったが(むしろ鳴海に惹かれているので)、最終話では少し近づいた。
このドラマの恋愛エピソードは健全でさっぱりしている。
それは、鳴海校長の真面目さにあるのかもしれない。
先の記事にも書いたが、え、そっち?と思った展開を見たのは、「恋愛」にスポットがあたった回。
ちょっと戸惑ったが、その戸惑いを見事に裏切ってくれた。
鳴海は真柴と、松原は後藤田とより近づく、というパターン。
真柴と松原は女の勘で、互いに探りを入れあってはいたが、不気味な進展は見せなかった。
まずは、鳴海が誠実で松原への気持ちが揺らいでいないこと、それから、真柴も松原も、自分というものをしっかりと持っている女性だということ、そうしたキャラクターが低俗表現を寄せ付けなかったのだろう、というのがよりみち的感想。
よかったと思う。

もうひとつ付け加えれば、加賀谷専務(高嶋政伸)のパワハラ。
コメディシーンとしての登場ではあったが、少し前だとこれがけっこう恋愛同様、本気の騒動になっていたと思う。そっちに気を取られて肝心のドラマの趣旨が見えなくなるようなことがあったが、というかむしろそちらが本筋のドラマが多かったと思うが、ある意味発展型のドラマなのかもしれない。
それも脚本家の腕というだけではなく、鳴海校長というキャラクターがそうさせたと、よりみちねこはあえて感じている。

最後に、鳴海校長のナイスなセリフをご紹介します。

入学試験の日。
今、みなさんの目の前にある試験問題は、京明館高校からみなさんへのメッセージでもあります。奇をてらった難しい問題はありません。中学校の授業をきちんと聞いていれば、解ける問題ばかりです。こっから先は僕たちといっしょに勉強していこう。そんな気持ちを込めて、今日の試験問題をつくりました。今日は悔いのないように、全力を出し切ってください。
太字部分、ナイスですね。
入学試験は、特に大学入試は、いかに落とすかに重点のある意地悪な問題が多いですから。
フランスのバカロレアは超難しいですが、意地悪問題はないと思います。

それから時が過ぎ、夏休み前日。
昨年度みなさんの先輩は京明館高校創立以来、最高の大学進学実績を残してくれました。
でも、みんなは、とくにこの特進クラスのみんなは、そんなことをプレッシャーに感じる必要はありません。隣りの人と自分を較べる必要なんてない。目指すは自己ベスト。自分史上最高の自分になることを目指して、この夏を過ごしましょう。
今高校一年のキミたちと10年後のキミたちは別人ではありません。今日の自分が明日の自分になり、明日の自分が明後日の自分になり、そして10年後の自分になっていきます。
もし10年後、自分がこうなっていたいと思う何かがあるなら、今日のうちにやっておかなければならないことがひとつやふたつあるはずです。

二年生のみんなは、この夏のうちにやれることを思いっきりやってください。勉強することは大事です。でも大学に入ることがゴールではありません。その先に社会があります。学校とは全く違うルールでできた世界に、いずれみんなは出ていかなくてはならない。僕はこの学校の校長先生ですが、だからといって、偉そうにするつもりはありません。僕はただ、みんなより少しだけ先に生まれてきただけなんだから。だから先生としてではなく、ひとりの人間として伝えたい。
これから世の中はどんどん変わってくるだろうし、キミたちの人生もいろいろなことが起こるかもしれません。これでいいのかなぁとか、私に才能なんてないのかなぁとか、何度も不安が押し寄せてくるかもしれません。でも、みんなに未来を見通す力なんてありません。そもそもキミたちが何かをするまで、未来なんて存在しないんだ。だから、キミたちができることは、あがくことだけです。不思議なものであがいて進んでいくと、見えてくる景色があります。やってみないと分からないことがやまほどある。やってみないと分からないことしかない、と言い切ってもいいかもしれません。だから、だからなんでもやってみよう。冒険してみよう。冒険しても文句を言う人はいません。うらやましがる人はやまほどいるかもしれないけどね。

他人と較べるのではなく、較べるなら過去の自分。
今の自分が10年後の自分をつくる。別人ではないけれど発展している。
ならば、今すべきことがあるはず。
「今に集中しろ」は、
自己啓発でもスピリチュアルでも、脳科学でもさかんに言われていることだ。

校長という肩書がどれほど偉いのか知らないが、やたらと威張っている人はけっこういる。
その肩書きを振りかざして文句を言ったり、打ち負かそうとする人もいる。私も実際知っている。
校長の前に教育者の資格が問われると思う。
が、校長に限らず世の中には、簡単に偉くなってしまう人の方が多いのだろう。

「自分が何かをするまで自分の未来は存在しない」とは名言だ。
未来のために、自分がそうなりたい未来のために行動を起こせ、
ということでもあるのだろう。
そして自らの意志や望みに従って行動を起こす、つまり冒険に出る人に文句を言う人はいない。うらやましいと思う人はいるだろう、と。
将棋のプロを目指したい生徒のエピソードで、父親が言っていたね。うらやましい、と。
ただ、文句は言わないかもしれないけれど、うらやましいと思う人たちのなかには、足を引っ張ったり、邪魔をしようとしたり、批判めいたことを言ってきたりする人はいる。そういうやからは無視すればいい。

あがく。「あがいて進んでいくと見えてくる景色がある」、これも名言だ。
この鳴海校長の助言から思い出したことがある。
よりみちねこの息子が高校受験のときの塾の先生が言っていた。
「じたばたしてください、最後まで。じたばたすることを恥ずかしいと思う人もいるようですが、是非じたばたしてください。じたばたした人のほうが希望の高校に受かっています」と。
これだけではなかったけど、とてもいい先生でした。
この先生は、よりみちねこの息子二人が高校生になったとき、
親御さんの介護があるということで東京から関西のご実家へ帰っていったのでした。
商業主義感覚ではない、本当に親身な先生でした。

「先に生まれただけの僕」
まだ視聴されていない方は、ぜひ、機会を見つけてご覧ください。
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