よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!


「隣の家族は青く見える」木曜夜10時フジテレビ
深田恭子/松山ケンイチ

第9話


こちらで、感想を書くたびに「多様性」の話をしていたが、
今話ではまさに「多様性」というワードが使われた。
小宮家の娘が学校で習った、と。多様性に一番馴染んでいない母・深雪(真飛聖)の長女だ。
さらに、深雪は、次女のアクシデントを朔
(北村匠海)が助けてくれたこともあって、反省。
無知で時代から取り残されていたのは私だけでした」と。
そしてさらに深雪は言う。
「私は、自分と違うものを排除することで自分を守ってた。でも最近、私が守ってきたものってなんだったんだろう、って思うようになって。狭い世界に閉じこもって生きてきたことを今更ながらに後悔しているところです」
すると次のような対話が繰り広げられた。

広瀬渉(眞島秀和)
「誰だってそうですよ。自分が信じてきた価値観を覆すのは勇気がいります」
川村亮司(平山浩行)
悪気なく誰かを傷つけてることあるだろうなって思いますしね」

誰のことも傷つけずに、自分も傷つかずに生きるのって無理じゃないかな」
ちひろ(高橋メアリージュン)
「誰かが傷つくことを恐れて、言いたいこと全部ひっこめちゃうのも違う気がするしね」
大器(松山ケンイチ)
問題はそのあとかもしれないですねぇ。傷つけたとしてもあとで声に出して話し合えばもしかしたら分かり合えるかもしれない」

分かり合えないかもしれない
奈々(深田恭子)
いつか分かり合える日が来るといいですよね」

very goodな意見交換。

よりみちねこは占い師なので、タロットカードで考えてみた。

★16番「塔」のカード。価値観を変えないと倒れるよ。
「自分が信じてきた価値観を覆す」
時代の変わり目というのはいつもそうなのだろう。
ルネサンス時代は単に百花繚乱の華やかな時代だったわけではない。現代の私たちが美しい絵画や建築物を見ると、そう見えるかもしれないが、その時代に生きた人々は、ちょうど21世紀の私たちのように、価値観を変化させることに四苦八苦していたに違いない。
歴史的観点からすると、ルネサンス時代は宗教改革の時代であり、大航海時代でもあることを考えれば、理解しやすい。
そして「自分が信じてきた価値観を覆す」のには「勇気がいる」のだ。
「信じていた」のだからそれを変えるというのはなかなか大変だ。自分の価値すら危うくなる。
深雪はそれが顕著だった。子供は産むべき。同性愛はおかしい。豊かで規則正しい生活。
自分はその価値観に従って生きてきた、それが幸せの源、拠り所なのだから、180度変化させるのは、本当に本当に勇気がいることだろう。

★13番「死神」のカード。古いものは捨てなさい。
「無知で時代から取り残されていた」
このセリフけっこすごい。「無知」なんて言葉を深雪に言わせているところ、なかなかだ。なぜなら深雪はここの家族たちのなかで一番プライドの高い人。
でも、深雪は気づいたので「無知の知」だったわけで、実は知性の高い人なのだろう。
自分の心が時代の変化についていけていなかった深雪。狭い世界で自分を守っていたのはトラウマからくるものだったとはいえ。

「塔」のカードは「心の変化」、「死神」のカードは「時代や環境の変化」を語っている、と考えてください。
「塔」も「死神」も、「“こうあらねばならぬ”ではないこと」を別の視点から教えてくれています。

★1番「魔術師」のカード。コミュニケーションが大事だよ。
「声に出して話し合えば分かり合えるかもしれない」
誰も傷つけず、自分も傷つかないで生きていけるなんてことは100%ないけれど、
それを恐れて「話さない」という状態をつくってしまうことはもっといけないことだ。
問題は話したあと。
声に出して話し合えば分かり合えるかもしれない。けれど、それでも分かり合えないこともあるだろう。でもいつかきっと分かるときがくるはずだ、ということは信じるしかない。
「話す」ということがたいていの日本人は苦手なのではないだろうか。
意見交換ができない、というか、そういう教育を受けていない。
欧米の人たちは、よく喋る。たぶんアジア人も。
そして互いに違う意見を言い合っても、それが致命的な喧嘩にはなりにくい。日本の場合は、勝つか負けるかみたいなディベートだ。聞く耳をもたない人が多い、ように感じる。
沈黙は金であるときもあるが、それはまた別の話で、
黙っていても分かるだろうとか、察しろとか、空気を読め、は違う。
察してあげる思いやりは大事だが、それを強要したり、あたかも当たり前のように振る舞ったりするのは、古い服従文化のなれの果てのような気がする。
外国人って言葉にしないと分からないけど日本人は分かるんだよね、などと自慢する風潮が20世紀にはあった。
誰でも、言葉にしないと分かりません。
前回の感想でも書いたが、人の言動には独特の背景がある。それをも含めて「理解し合える」ということなのだろう、と思う。

★0番「愚者」のカード。勇気を出して!
「勇気がいります」
古いものを捨てて、価値観を変えるのにも、意見や気持ちを率直に話すのにも、他人の気持ちを受け止めるのにも、「勇気」が必要だ、ということだ。
間違った、傷つけた、と思ったら素直に謝る。
深雪のような人は、依怙地になってしまう場合もあるが、このドラマの深雪はちゃんとみんなに謝罪した。
素直になることもまた勇気なのかもしれない。


さて、奈々はようやく妊娠に成功したのに、流産してしまいました。
来週は最終回。
どうなるのかな。