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「記憶」
中井貴一/優香/松下由樹/泉澤祐希/今田美桜/石丸謙二郎/三浦貴大


J:COMフジテレビONE/TWO/NEXTの共同制作ドラマ。
J:COMは初めてドラマを手掛ける。

韓国ドラマのリメイク。
今シーズンは、「シグナル」(カンテレ/フジテレビ)というドラマも韓国ドラマのリメイク。
両作品ともよくできていると思う。
事件や時間が複雑に絡み合う脚本が得意なのだろうか。
日本もがんばって!と思うが、視聴率からすると、日本の場合はどうも単純明快なドラマが好まれるようだ。
韓国ドラマは恋愛ドラマばかりではない、ということがよく分かった。
そういえば数年前の「魔王」も面白かった。

「記憶」
ひとりの弁護士をめぐって、3つのテーマが組み込まれている。
中井貴一演ずる主人公・弁護士の本庄英久のアルツハイマー。
15年前の本庄と前妻・佳奈子(松下由樹)との間の息子・亮介のひき逃げ死亡事故。
15年前の軽井沢の店主殺人事件の冤罪。
そしてそこに、息子のイジメ問題と本庄の父母との関係を通して、本庄自身の家族との向き合い方、家族の愛、が語られていく。
それらがとても丁寧に描かれていたと思う。

中井はこのドラマの出演オファーを何度も断っていたそうだ。
プロデューサーの「これを演じられるのは貴一さんしかいません」という根気で実現した。
9回目のオファーで出演承諾。
中井はなぜ断り続けたのか。大変だと思った、から。
つまり、ストーリーに枝葉がついて、ひとつひとつのドラマをこなしてくのは大変だと思ったと言う。生半可ではない、と。
そして、中井は出演にあたって提案をする。
「順撮りでやるべきだ」
病魔が進行した第9話を撮ってから第1話を撮るようなことになると、細かい表現のところに差異が出てしまうから。リアルに表現したい。
順撮りには撮影日数がよりかかるということで、今はしない撮影方法らしい。
さらにプロデユーサーには、「全12話の台本をもって撮影に入りたい」という思いがあったそうだ。
最後を知った上で役者さんたちには撮影に入ってほしかった。
連続ドラマの撮影ではクランクインの時点で全話仕上がっておらず、撮影に入ってから完成することも多いそうだ。
というか、次の撮影に間に合わな~いと脚本家がどたばたするシーンは、ドラマでもよく見かけるので、そちらのほうが多いのかな、と想像する。

とても丁寧に、準備にも撮影にも時間をかけてつくられたドラマだ。

中井貴一はこう語る。
「今の日本のドラマに欠けているのはこういうことだろうなと思った。
例えば病気モノなんかは日本はコンプライアンスがうるさいじゃないですか。
そういうものでみんなが気遣ってやらないみたいなことを堂々とやっていくっていう姿勢みたいなものは、今、日本に一番欠けているんじゃないかなと思ったんですよね。だからそういう意味では今こういうドラマが本当であるならば地上波でもできるべきじゃないかっていうふうには、最初本を読んで思いましたね」

確か、中井は以前にも日本のドラマについて苦言を呈していた。

仕事さえもらえればいい、仕事がなくなったら困る、という俳優やタレント、歌手も含めた芸能人が多いなか、中井は「役者」「演劇人」の本来の姿を見せてくれているように思う。

制作者サイドの発信を知るまでもなく、
手間暇をかけ、気持ちをこめてつくった作品だ、ということが本当によく伝わってくるドラマだった。

最終話はほとんどの時間が法廷シーン。
不条理に終わることはない。
謎に包まれて始まったドラマの、すべてのつじつまが合っていく様子は心地よかった。

まるっきりの余談、そして私事で大変申し訳ないが、
私の父は弁護士だった。
この法廷シーンを観て、私も父の裁判を傍聴しておけばよかった、と
後悔のような、あるいは幼き日の淡い思い出のような、
なんとも言えない感覚を味わっていた(ドラマのなかで本庄の中学生の息子が健気に傍聴して父を誇らしく思っているのです)。
弁護士ドラマはあまたあるが、このような気持ちを抱いたのは初めてだ。
年齢のせい?だけではない、このドラマの威力もあるのではないかと思ったりしている。
「記憶」を視聴して、私の「記憶」が甦った。

また機会があると思う。
ぜひじっくり観ていただきたいので、ネタバレになる内容は書かず、魅力だけお伝えする。
……お伝えできているだろうか…