よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

「グッド・ドクター」フジテレビ木曜夜10時
脚本/徳永友一・大北はるか
山崎賢人/上野樹里/藤木直人/戸次重幸/中村ゆり/板尾創路/柄本明


韓国ドラマのリメイク。
2017年にはアメリカでもリメイクされたようだ。

どうかなぁ、とおそるおそる観た。
なぜなら、山崎賢人を私はあまり高く評価してこなかったので。
それでも「陸王」のあたりから、いい役者になるかも?と少し思い始めていたが、それでも、ああ、この役、山崎じゃなければなぁ、などと身勝手なドラマファン感想を抱き続けていた。
ある意味期待は裏切られている、今のところ。

山崎賢人は、自閉症(サヴァン症候群)の医師・新堂湊の役である。
なかなか上手い。
自閉症の医師、つまり他人とのコミュニケーション能力に難のある人間が医師、という設定。

自閉症の人間に医師の仕事ができるのか?というのは当たり前の疑問ではないだろうか。
医者というのは、患者との心の触れ合いが大事なのに、と思う。ドラマのなかでもそう言われていた。
皮肉なことに最近の医者は(昔からかもしれないが)、心療内科も含めて、マニュアル的で薬漬けという極めて唯物的診断と対応しかできないというのが良く聞く話だ。なぜそういう医師を批判するのかというと、病は気からというのが本当だという症例が多数あるからだ。それにはコミュニケーションが大事だ、というわけだ。

このドラマ、1話2話を視聴したが、一方で人の命を助けるということはこういうことだよね、ということも投げかけているように思った。

つまり、自閉症の新堂は、まず嘘がつけない。
たいていの医者、そして家族は、病人を思いやって嘘をつく。方便だ。
第1話ではまさにそれ。
子どもの病気が再発していることを、親はなかなか言い出せない。子どもが学校へ行くことを楽しみにしているからだ。それを医師も見守っている。
だが新堂は言ってしまう。
第2話でもそうだった。はっきりと言う。このままでは死んでしまう、と。
「助かりますか?」と尋ねられて「死にます」と直接的な表現で言う医者はまずいないだろう。
難しいとか、余命何年とか、いっしょにがんばりましょうとか……。
普通の人間には言えないことを率直に言ってくれる「スタートレック ヴォイジャー」のホログラムドクター、あるいはボーグのセブンオブナイン、「新スタートレック」のデータみたいだ。
そういう意味では、「義母と娘のブルース」の義母(綾瀬はるか)も同質なのかもしれない。

もうひとつ、同質がらみで言うと、
新堂先生は患者を助けることしか考えていない。
良い方向に解決するための方法を、頭脳、データを駆使して導き出す。
新堂先生はサヴァンなので、記憶力は抜群である。
さらに言うと、
つまりそれは「ヒーロー」の要素を多分に含んだキャタクラーだ。
このままだと死ぬけど助ける方法はある、と言う。

「人を助けたらなぜいけないのか」という素朴な疑問すら投げかけてくる新堂。
普通の人間はいわゆる「おとなの事情」で動く。それに慣れている人間どもは、新堂のそういった純朴な言葉を聞いて目覚めるという意味では、彼は「神様からの贈り物」かもしれない。

悪を犯そうとしている人も、圧倒的な善の前では怯むという(もちろん、根っからの悪魔もいるが)。例えればそんな感じかもしれない。

忖度という概念のもと、「良いことをする」「本当のことを言う」と出世コースからはじかれてしまうという公の世界の様子を私たちはここ数年見せられている。独裁的強権。
それゆえか、まっすぐな正直さは、気持ちがいい。

誰かを貶めようとか、自分の出世のためとか、そんな気持ちで動かない新堂。

あ、もちろんこのドラマ、ダークな存在もいます。その役を板尾が演じている。
板尾と山崎、これって朝ドラ「まれ」の親子役。

藤木直人演じる高山は、小児外科の優秀なドクター。新堂もそれをよく知っている。
高山は新堂に冷たいが、第2話では、新堂の診断が正しいことを認めた。
良からぬことを考えている人間ではなく、実は子どもたちを救おうという正義感に裏打ちされた人物のようだ。

新堂の指導をし、面倒をみる医師・瀬戸夏美は、上野樹里が演じる。
上野にはぴったりの役だ、と思う。

新堂の優秀さに気づいて力を貸してくれる看護師・橋口役の浜野謙太もいい味を出している。

戸次重幸が演じる間宮は、新堂に否定的でいわゆる太鼓持ちだが、コメディな役どころで愉快。ドラマ全体を和らげる。

良いドラマだ。
今シーズンドラマのベスト3に入るかもしれない。

このところ韓国ドラマのレベルが高い。
春シーズンの「シグナル」も面白かった。

日本もがんばらないと。