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「この世界の片隅に」TBS日曜夜9時
原作/こうの史代
脚本/岡田惠和
音楽/久石 譲
松本穂香/松坂桃李/村上虹郎/伊藤沙莉/尾野真千子/伊藤蘭/二階堂ふみ/宮本信子/
古館佑太郎/榮倉奈々

2011年には日本テレビでドラマ化、2016年にはアニメ映画化された漫画原作。
アニメ映画は、のんがすず役ということもあってか、広報の面でいささか難があったようだが、じわじわと映画の良さが広まって、大ヒットとなった。世界各国でも上映されている。

アニメ映画も日本テレビのドラマも観た。
日本テレビでのスペシャルドラマでは、北川景子と小出恵介がすずと周作の夫婦役。小出はその後の不祥事で残念なのと、北川景子が、ぼ~っとしたすず役というのはちょっとミスキャストっぽくはある。
アニメ映画では、のんのずすが大変良かった。ぼ~っとした雰囲気が、もともとの“のん”の性質とも相俟ってすごく良かったと思う。

2018年TBSの夏ドラマでは、連続ドラマなので、スペシャルドラマや映画よりもより丁寧に多くを語ってくれるのだろうと思う。
「日曜劇場」は、最近刑事ものや医療もの、池井戸潤原作などが定番化しているが、今夏のヒューマン系ドラマは、これこそ「日曜劇場」の真骨頂と思わせる。

脚本が岡田惠和。劇伴が久石譲。
すでに、第2話から泣かせてくれます。

岡田ファミリーと言っていいのか分からないが、
松本穂香、伊藤沙莉、宮本信子、古館佑太郎は、朝ドラ「ひよっこ」の出演者。
それぞれ重要な役どころだった。

すずさん(松本)は、絵が上手でよく絵を描いているシーンが出てくるのだが、なぜか現代で言うところの「原爆ドーム」がとても印象的に出てくる。ここには岡田の強い思惑があるのだろうか。アニメでは「原爆ドーム」よりも「呉の軍港」のほうにより視線がいっていたように記憶している。

この物語は、戦争のさなかでの、普通の暮らしと幸福を淡々と描く、というか、そのように生きているすずさんの姿を描くことで人の生活と幸せを観る者に伝えて来る、という静かな迫力がある、と映画を観たときに感じた。
これを反戦映画と捉えるな、という感想を持つ人たちもいた。
確かに、おそらく、どの国にも、あれほど激しい戦争の最中にも、ごく普通に暮らしている人たちはいたのだろう。あるいは、それでも普通に暮らせるんだよ、という意見を持つ人もいるかもしれない。
が、配給や統率は、はやりどう良く見ても「幸福な人間の生活」とは思えない。
戦争が始まったらもう誰も逆らえない。
それゆえの平静を保ちながらの生活なのだと思う。そのように暮らすしかない。
もうひとつは、どんな状況のもとでも、人は喜怒哀楽を心に持っており、表すものだ、ということだ。ナチスのユダヤ人強制収容所をイタリアのコメディアンがユーモアを盛り込んで描いた映画「ライフ・イズ・ビューティフル」もそうだった。
ゆえに余計に、観る者の心に戦争の酷さと悲しさが募るのではあるが。

「静かに暮らすしかない」と「それでも幸せに暮らせるんだ」という複雑に入り組んだ「人間」ということを、私は「この世界の片隅に」に感じている。
ゆえに、あからさまないわゆる反戦物語とは思わないが、これを読み、観たあとに、だったら戦争なんてへっちゃらだ、とは思えない。
むしろ私は、逆に恐怖の深淵すら感じてしまう。

岡田らしい描き方も見どころかもしれないと期待している。
「泣くな、はらちゃん」でも「ひよっこ」でも、戦争や社会について何がしかのメッセージをぶっこんできた。

さらにこれは、すずさんと周作(松坂)の結婚してからの恋愛物語でもある。
そしてすずさんは、ぼ~っとしているかもしれないが、実はものすごく心が繊細でいろいろなことを考えている人。ネガをポジに変えることができるという不思議な能力を持っている人だ。と私は感じています。
おそらくそこが、そういうすずさんが、周作には必要な人だと感じさせてくれたのだろう。


現代の人間が二人出てくる。
この二人の立ち位置がまだ謎だ。