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「グッド・ドクター」フジテレビ

医療もの、感動もの、いろいろ言われてはいたが、
私は、とても楽しみに視聴することができた。

主役は新堂湊(みなと)。自閉症、サヴァン症候群の医師。
彼を演じる山崎賢人は役に恵まれたと思う。
役に恵まれる俳優はあまたいるだろう。その役をどう演じ切るか、ということが、役者にとってもドラマにとっても要となる。
役者は、それをきっかけに飛躍することができるし、ドラマは良質のドラマとして視聴者の記憶に残る。
山崎は巧みに演じ切ったと、私は思います。

新聞のインタビュー記事(2018年8月1日毎日新聞夕刊)で山崎は、
撮影に入る前に、世界各国で翻訳されベストセラーになった「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」(東田直樹著、角川文庫)を読んだ。心の中ではたくさんのことを感じ考えているのに、表に出して伝えることが難しい特質があると知った。
あえて目の力を抜いて演じるようにした。
と語っている。
さらに、こう言う。
「大切なことは真っすぐな心」だと、ピュアな湊という存在を通して視聴者に感じてほしい。ドラマが日本の医療の現状を変えるきかっけにもなれば、うれしい。

「日本の医療の現状を変えるきっかけ」とまで考えていたのですね。

私たちは、ときに、いや常に、湊のような存在を求めているのではないか、と私はドラマを観ながら思った。
それは「真っすぐな心」。

湊は、極めて正直だ。それはいわゆる障害を持っているがゆえなのだ。
正直すぎることはともすると、配慮がないとか、空気を読まない、ということになる。それゆえ、大人の態度とは本当のことを言わないこと、になってしまう。ということはつまり、世間の人たちは嘘つきばかり?と言うと言い過ぎかもしれないが。
これは言わないでおこうと胸に秘めてしまうことや、ときに、誰かや自分を守るために嘘をつくことが私たちにはある。例えば、大丈夫じゃないのに、大丈夫だと言ってみたり。
湊は違う。そのままだと死ぬ、と言う。どうして医者なのに助けないのか僕には分からない、と言う。本当のことを言う。
はじめのうちは、人々の感情の動きが分からないこともあったが、それも次第に学んでいき、その上で彼の取る素直な行動が、患者や家族の心を支えていく。
また、同僚の医師たちも湊の言葉に救われていく。例えば、湊の記憶力や特殊な才能に嫉妬していた医師も、湊から自分の才能や良いところを指摘されて驚き、心は癒されていく。
はっとした気づきを得る瞬間だ。自己発見と湊という人間の洞察力のすごさ、2つの衝撃が合わさる。湊は、出会った人々にそうしたアハ体験を与えてくれる存在でもある。

湊は、決して誰のことも悪く思わない。子どものころから傷つくことはたくさんあった。悪い人間たちにもたくさんあってきた。それでも、障害のおかげなのか、と言っては語弊があるかもしれませんが、それこそ、山崎が言うように徹底して「ピュアな」性質は、人を疑わない。

善なる心は必ず通じる。
湊自身はそんなことを思って行動しているわけではなく、そのように行動することが湊にとってごく自然なことであるだけなのだが、視聴者にはそんなピュアな精神を思い出させてくれる。そして、そういった状態がいかに心地の良いものであるのか、を知らせてくれる。
これは、不信渦巻く昨今の社会のなかで、私たちが必要としている要素なのではないでしょうか。
私たちはなぜか、ポジティブなことも言わない傾向がある。上記の同僚医師の例にあるように、嫉妬していた相手からもらう承認の言葉。今度は、自分が誰かを承認していくことになるだろう。
認めてもらった人は、別の誰かを認めていく。ペイフォワードだ。

涙の感動につなげるシナリオがみえみえで、それでも泣いちゃうけど云々、というネガティブな意見もあるが、湊のまっとうなピュアさに焦点を当てて視聴すると、いわゆる医療ものか、とがっかりしないと思う。

上野樹里、藤木直人ら、共演者も粒ぞろいで良かった。


韓国ドラマの実力は高い。