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「透明なゆりかご」NHK

主人公・青田アオイを清原果耶が好演した。
朝ドラ「あさが来た」の奉公人ふゆ役のときから私は注目していたので、よい役をもらってよかったね、しかも主演で、と思う。
朝ドラ当時はまだ14歳だった。といっても、まだ16歳か。ますます将来が楽しみな女優さんだ。

とても丁寧に静かに描かれたある産婦人科医院の物語。
妊娠出産にまつわるあれこれを、じっくりと訴えかけてくる。こうした描き方はNHKならではだと思う。同系テーマの民放ドラマでは「コウノドリ」があったが、もっともっとドラマチックだ。

こちらは、ドラマチックではない、民放のような派手は演出はないが、もしかしたら本当の意味でドラマチックなのかもしれない。

出産に迷ったり、母体が助からなかったり、毎日のようにある堕胎だったりが、高校の准看護科に通っているアルバイト見習い看護師のアオイの目を通して、切実に映し出されていく。

各回、それぞれが深く、印象的なエピソードばかり。

第9話の「透明な子」は、母親の再婚相手の男、つまり新しい父親から日常的に性暴力を受けていた小学生の少女・亜美ちゃんの話。アオイと亜美ちゃんは図書館友だちだった。
気づいてあげられなかったことを悔やむアオイ。デリケートな問題なので、まだ見習いの身のアオイは接触することを禁止される。が、アオイの率直な対応が、亜美ちゃんの心を開く。

最終話「7日間の命」では、心臓などに重い病のあることが妊娠20週で判明した夫婦が、悩んだ末に出産を決意する話。さらに悩んだ結果、出産後の積極的治療を受けないことを決める。短い命を大切に大切にして病室で過ごす親子3人。

重いテーマと誠実に向き合って、誠実に描き出してくれたドラマだった。
好奇な視線で描いたドラマは、好奇な視聴の目に晒される。
誠実な目線は、誠実に事実や状況、問題をもあぶり出し、感じたり考えたりする機会を投げかけてくる。それは、まさにアオイの目と心そのもの。
アオイの誠実な姿が、好奇や批判の思いを視聴者が持つことを許さない。

ただ、こういった妊娠出産にまつわる出来事を知るとき、私がいつも思うことがある。
それは、ドラマだけではなく、実際の事件、ニュースでも。
妊娠したとき、どうして女性ばかりが苦しむことになるのか。父親はどこへ行ったのか。
男尊女卑とかいって男性は威張っているが、卑怯ではないか、と。

一人で生んで一人で育てて、そして育てきれずに殺してしまうという事件だってめずらしくない。
なぜ、女性、母親だけが殺人犯になってしまうのか。
理不尽だと思わざるを得ない。

このドラマのエピソードにもいくつかあった。
産婦人科の医師は、性暴力も含めて日々そのような女性性の辛い側面と向き合っている。

出産は、素晴らしい、喜ばしい、寿ぐことだ。産婦人科の育児室にいる赤ちゃんたちを見て、頬が緩まない人はいないだろう。
その一方で、苦しい思いをしている女性たちも大勢いる。
産院というところは、なんとも言えない明と暗、光と闇の同居する場所でもある。

様々な問い掛けのある良質のドラマでした。
再放送の際には、ぜひご視聴をおすすめします。