よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2016年04月

こんにちは。よりみちねこです。

最近はBSやCSでかなり古いドラマを視聴できる。
ありがたい。

「イグアナの娘」
1996年テレビ朝日 
脚本 岡田惠和
原作 萩尾望都
全11話


これはね、「人魚姫」「鶴の恩返し」「シンデレラ」「みにくいアヒルの子」を合わせたような
人生ファンタジー。
なのだなぁ、ということが最終話で分かった。

萩尾望都のコミックが原作。
岡田惠和は、マンガ原作が得意なのか?
先ごろでは「ど根性ガエル」があった。

よりみちねこは萩尾望都ファンだが、これは読んだ記憶がない。
短編だそうだ。
よりみちねこは、もっぱら、
「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」を枕元に置いて、
当時、毎晩毎晩読みながら寝たものだ。

「イグアナの娘」
自分の娘を愛せない母と、母から愛されない娘の物語だ。

青島ゆりこ(川島なお美)は、女の子を産んだ。
病院のベッドで、なんとその我が娘の顔がイグアナに見え、泣き叫ぶ。
ゆりこは娘を殺して自分も死のうと思ったができなかった。

それからずっとゆりこには、娘・リカ(菅野美穂)がイグアナにしか見えない。
妹・まみ(榎本加奈子)は、かわいい女の子。ゆりこはまみばかりを可愛がる。

母のために何をしても拒否されるリカも、小学生のとき、
入水を試みる。が、同級生の岡崎昇(岡田義徳)に助けられる。
昇はそのときから、リカの母親にいささかの違和感を覚えていた。

リカと昇はずっといっしょに高校まで進んだ。

昇に心惹かれているリカ。
成績優秀で大学進学を望んでいるリカ。
しかしゆりこから、あなたは大学にも行ってはいけないし、恋もしてはいけない、と言われる。
あなたにそんなことはできるわけがないのだ、と。
醜いあなたに、ということなんだろう。

つまりこのドラマは、醜形恐怖症の娘と毒親の物語でもある。

本当に醜かったのかどうかは分からない。
けれども、母親の思い描くかわいらしさとは違ったのだろう。
それゆえ、愛せない。ゆえに辛くあたる。
ゆりこは、今では周知の代名詞になっているいわゆる「毒親」だ。

リカも鏡や窓ガラス、水辺に映る自分の顔がイグアナに見える。
それは母親からそう言われ、刷り込まれてきたせいなのかもしれない。

それでも、リカは健気に懸命に、優しい心で生きている。

転校生・三上伸子(佐藤仁美)の明るさに助けられたリカ。 
その伸子も、辛い過去を乗り越えてきたのだった。
せっかく親友になれたのに、
伸子はリカとの待ち合わせ場所へ急ぐ途中、交通事故で死んでしまう。
リカは自分のせいだと思う。
自分は人を不幸にするんだ、と。
しかし、伸子の明るい母親・三上恵子(木内みどり)に救われるリカ。
そして娘を失った恵子もまたリカに救われたのだった。

妹・まみも、幼なじみ・昇も、母・ゆりこの異常さに気づき、 
リカに同情する。

ゆりこは、獣医の夫・青島正則(草刈正雄)が若い時に描いた絵を偶然みつける。
なんだか知ってるような気がする。ガラパゴス。
キミは知らないよ、いっしょに行ってない、と言う正則。 

そのときの日記を正則は引っ張り出し、読む。
それを机の上に置いたのは、故意だったのだろうか?
ゆりこはそれを読むと、自分がイグアナのお姫様だったことを思い出す。

正則は、岩に挟まって動けなくなっていたイグアナを助けた。
するとそのイグアナは親しみを込めた目で正則を見つめた。高貴でお姫様のようだ。 
正則は、感動する。イグアナにも分かるんだな、と。

イグアナのお姫様は、人間になることを願って許される。
ただし、自分がイグアナだと知ったとき、死ぬ、と。

なるほど、だからゆりこには、正則と結婚するまでの記憶がなかったのか。
ファンタジックに描かれているけれど、
もしかしたら現実にはこういうこともある。
つまり、ゆりこにも親から愛されなかったトラウマがあって、過去のことを心の奥に押し込めて、記憶からも消し去っているのかもしれない。
それは、思い出したとき、生きてはいられないほどの心の痛み・・・。

イグアナのお姫様は、助けてくれた正則に恋をして、お礼もしたかったのだろう。
けれども、人間になったイグアナは、どうして自分が人間になったのか、生きているのか、
その目的と意味を思い出すことができなかったのだろうな。
それは、人間がこの世に生まれ落ちるとき、過去生の記憶を全て失う、というルールと同じだ。
何をするつもりだったのか思い出せない人間は、悩み、彷徨い、苦しむ。
ゆりこの場合は、娘を愛せないという苦しみを背負う。

昇と留学先のボストンへ向かうリカ。
搭乗前に、母のことが気になり帰る。
ゆりこは死んでいた。
遺体の顔から布を取ると、そこにはイグアナの顔があった。
「リカにはイグアナに見えるの?」と正則。
「イグアナの娘」とは、
「イグアナの顔をした娘」ではなく「イグアナから産まれた娘」
ということだったんだな。

正則もようやく悟ったのか、それとも初めから知っていたのか。

ゆりこの肩にあったイグアナ模様の痣が、リカの肩の移る。
けれどもリカは、ゆりこの呪いを受け継ぐことなく、
昇と結婚し、子どもにも恵まれ、優しい母親になっていく。

萩尾望都はすごいな。
毒親と醜形恐怖症の娘の物語を、
見事にファンタジーのなかで描いてみせた。

「人魚姫」と「鶴」はゆりこ。
「シンデレラ」「アヒルの子」はリカ。

秀逸な作品だと思う。


出演者も見ごたえがある。
若かりし(おそらく19歳かそこら)菅野美穂、岡田義徳、佐藤仁美。
今となっては懐かしい榎本加奈子。
今は亡き川島なお美。
草刈正雄も若い!
貴重な映像だ。
余談だけど、
佐藤仁美の母親役の木内みどりって、今、反原発とか平和活動とかしてるよね?


機会があれば、ぜひお薦めだにゃ


ドラマを楽しもう



こんにちは。よりみちねこです。

かなり古いドラマ。

「サトラレ」
2002年テレビ朝日夜9時
脚本 尾崎将也/ 吉田玲子
原作 佐藤マコト
全10話

「サトラレ」とは、あらゆる思考が思念波となって周囲に伝播してしまう症状を示す架空の病名またはその患者をさす。正式名称は「先天性R型脳梁変成症」。サトラレは、例外なく国益に関わるほどの天才であるが、本人に告知すれば全ての思考を周囲に知られる苦痛から精神崩壊を招いてしまうため、日本ではサトラレ対策委員会なる組織が保護している、というのが物語の基本構造となっている。

つまり、「サトラレ」は、自分の心の声が周辺の人たちに全て聞こえてしまうという特異体質の持ち主。
「サトラレ」に「サトラレ」であることを気づかれてはいけない、ということは全国民に知らされている。
もちろん、「サトラレ」本人も「サトラレ」という存在がいるということは知っているが、自分が「サトラレ」だとは知らない。
「サトラレ」が「サトラレ」に会ってしまうこともご法度。
なぜなら、自分が「サトラレ」だと分かってしまうから。
「サトラレ」が「サトラレ」だと分かってしまうと、おそらく自殺してしまう。すでに一名自殺している。
ゆえに、「サトラレ対策委員会」なる組織があり、常に「サトラレ」とその周辺を監視している。
ちなみに「サトラレ」はみな天才。

「サトラレ」である里見健一(オダギリジョー)は、臨床医を目指しているが、「サトラレ」ゆえ、病院では臨床医には向いていないと外来も手術もあまり任せてもらえず、不満を抱え、さらに自信を持てずにいる。
病院では、里見の心の声が常に聞こえ、みんな迷惑している。
「サトラレ対策委員」から派遣されている二人、藤堂(杉本哲太)千春(神田うの)が常に見張っている。
藤堂は里見の母親・弘子(風吹ジュン)が営んでいる小料理屋にも頻繁に出入りして、弘子との対話を欠かさない。
病理医の星野法子(鶴田真由)が、この病院へ赴任してきた。
法子は、「サトラレ」の心の声に反応しがちで、危うい存在。
しかし、二人は次第に惹かれ合っていく。

悩んでいる声や、医師や看護師たちへの思いの様々が、正直に聞こえるのが、
悪口のようなときもあるが、賞賛や感動だったりもする。
その声の内容から、里見は極めて純真であることが分かる。
自分について悩んでいるときの声などは、「サトラレ」ゆえの悩みゆえ、なんとも同情的。

9話では、母親・弘子の末期ガンが発覚。
弘子の希望で、健一が手術することになる。
その心の声は、病院中に聞こえ渡る。みんな感動し、応援する。
開いてみると難しい場所にもガンがあり、結局、全てを取りのぞくことはできなかった。
もちろん、手術の技術は天才的。
母には大丈夫だったよ、と言いながら、
助けられなくてごめん、という心の声が、母にも周囲にも聞こえている。

最終話では、
その純真な思いに惹かれてか、
里見に手術してもらいたいという患者が続出し、病院側も、里見に臨床医としていてもらうことを決意。
が、ある子供に「サトラレ先生」と呼びかけられ、自分が「サトラレ」であることを知ってしまう。
そして・・・。

人の心が読める、という超能力・霊能力を持つ人物の話はよくある。
これは、逆の能力だ。
自分の心を全て人に読まれてしまう。
というか、心の声が周囲に発信されてしまう。そしてそのことに本人は全く気付いていない。

周囲の人々はたまったものではない。
聞きたくなくても聞こえてくるのだから。
うるさい!

アメリカのSFテレビドラマ「スタートレック」に出てくる「ボーグ」は、集合体。
全員がつながっていて、全員が全員の思いを共有している。
それもなれればうるさくないということだが・・・。

人の心が透明になるということは、おそらく進化なんだろう。
何を考えているか全てお見通しなら、悪いことは考えない。恥ずかしいことは考えない。
考えられない?考えないようにする?

でもね、よりみちねこはこのドラマを観て思ったよ。
悩みや、文句的つぶやきも、いささかネガな感想も含めて、
それが正直に、互いに伝わるというのは、互いを知る上でとても役に立つものだ、と。

例えば、
いやなやつだと思ってたけど、頼りにされてるんだな、見直した、というつぶやき。

誰でも、誰にでも、いつもいつもポジに思ってるわけではないだろうし、
誉めてばかりでもない。尊敬してばかりでもない。
ポジもネガも含めて、 人の思いだ。
また、行動に到るまでの思いの経緯というものもある。
行動や対応だけ見れば、誤解も生じる。
その行動の背景にある思いを知れば、人はたいていは納得するのではないか。
誤解のままだと、諍いの原因になってしまうこともある。
実は何も考えてない、単純なやつ、ということもあるけどね。

けれども、おそらく、
その根底に真摯とか愛、感情、心がないとき、
人は、気づくだろう、こいつは本気で悪人だ、と。

ぐずぐずと弱虫だったけど、
里見健一は、とても純粋な心の持ち主だった。

母・弘子にも苦労は多かったが、
でも、育てやすかった、と語っている。
だって心の声が聞こえるんだもの。
何してほしいのか分かる。

なかなか興味深いヒューマンファンタジーだ

機会があれば、ぜひ。


ドラマを楽しもう



 

こんにちは。よりみちねこです。

いよいよ春期ドラマが始まったね。
まだまだ始まったばかりだけど、
最近、ドラマの記事を書いていなかったので、ちょこっとだけ書く。

昨日は、熊本で大きな地震があったので、「早子先生、結婚するって本当ですか?」
の初回放送がなくなった。まだ放送日は決まっていないようだ。
よりみちねこも、熊本にとも猫がいるので、心配してる。
みんな心身ともにお大事にしてください。

「重版出来」TBS火曜夜10時

まずは、「重版出来」これ、何て読むか知ってた?
「じゅうはんでき」ってずっと読んでたよ。
「じゅうはんしゅったい」なんだね。
作家の松井計によると、編集者の間では「でき」と言っているらしい。

日体大柔道部で金メダルを目指していた黒沢心 (黒木華)、怪我をして断念。
自分を励ましてくれた漫画の出版に携わりたいと出版社の面接を受ける。
熱い女子。筆記試験は満点だった。 
初回は、ベテラン漫画家の苦悩と弟子たち。その苦悩を解決する黒沢の活躍。
かなり面白かった!

俳優陣も、いい役者がそろっている。
編集部には、
オダギリジョー、松重豊、安田顕、荒川良々・・・
漫画家には、
小日向文世、滝藤賢一、要潤、八丹カズオ、ムロツヨシ・・・・
書店店員に浜田マリ
などなど。

情報によると、
黒沢心役、
最初は能年玲奈へオファーがあったらしい。事務所問題でボツになり、
次は、有村架純。こちらは映画の仕事が数本入っていて断わられた、とか。
結果、黒木華で良かったと思うよ。
むしろ、上記二人でなくて良かったぁ~!とよりみちねこは激しく思った。
黒木はこれが連ドラ初主演かぁ。
なんと!
いつもしっかりと役をこなす黒木華。存在感が半端ないので、連ドラ初主演とは驚きだ。

草彅剛主演の「いいひと」を思い出した。
走って会社に駆け込むところなど、雰囲気も似ている。

癖の強い漫画家たちとの物語がこれから繰り広げられていくのだろう。
期待と注目。


「ラヴソング」フジテレビ月曜夜9時

あまり期待していなかった。
視聴もどうしようか迷っていた。
第一話くらい観るか、と録画していた。
仕事をしながらVTRを流した。
3分の1くらいまでは、やっぱりつまらなそう。消すかな。
そんな思いが心をかすめていた。
しかし、次第に視聴が進むと、いつしか仕事の手を止めて見入っていた。
不覚。
まだ第1話だから分からないが、面白そうだ。

佐野さくら(藤原さくら)には、吃音の障害があり、コミュニケーションが取りずらい。
一緒に暮らしている親友真実(夏帆)の婚約者の紹介で、車の整備工場で働いている。
その工場で週2回企業カウンセリングの仕事をしているのが神代広平(福山雅治)
広平は元プロミュージシャン。そのときのバンド仲間、宍戸夏希(水野美紀)は言語聴覚士。
広平は夏希のところへさくらを連れていく。
音楽療法というものもあると夏希。
さくらが歌い出した歌は、公平と夏希も知っている・・・・。

この歌、いい歌だな。

ヒューマンラブストーリー、ってことだから、
これからラブの部分もおおいに出てくるのだろうが・・・。
広平をめぐって、さくらをめぐって。
月9だからね。
でも、月9にしては、初回の様子が、ラブラブしていない。
いつもの月9を期待していた視聴者には、いささか物足りないストーリー展開だったかもしれないね。

出演者は、ほかに、
菅田将暉、宇崎竜童、木下ほうか、駿河太郎・・・などなど。

水野美紀がキーボードを弾くのが珍しい。
そもそもバンドのメンバーだった、ってのがちょっと違和感ある。
言語聴覚士はぴったりだ。

佐野さくらの演技がいい。
思ったことを上手く喋れないじれったさがよく伝わってくる。

夏希の結婚披露宴でのスピーチを頼まれて、
早く上手に喋れるようになりたいと思っているさくら。
広平と音楽との出会いでどう成長していくのか。

続けて観てみようという気に今はなっている。


ドラマを楽しもう


 

こんにちは。よりみちねこです。

さあ、高視聴率をキープしていた朝ドラ
「あさが来た」が4月1日に幕を閉じた。

半年間、ひたすら面白かった!

直前の「まれ」がこけたので、
余計に。

「あさが来た」は様々なことを伝えていた。

まず、白岡あさという人の存在。
実際には、広岡浅子という、現・大同生命を創りあげた人物。
日本女子大学の設立に尽力をつくした人。
こんな女性がいたことを初めて知った、という人は意外と多いのでは?
あまり記録も残されていないらしいので。
江戸時代に生まれて、維新を経験し、明治、大正と怒涛の時を生き抜いたひとりの女性。
女性の地位向上につながる活躍をした偉人、といったところだろう。
が、細かいことを言えば、裕福な家に生まれ育ち、嫁ぎ先も豪商というのは、庶民感覚からすれば実はこの物語はあまり参考にならないのかもしれない。
とはいえ、ひとつのサクセスストーリーではある。
時代を先取りする痛快、豪快、奔放な女性の。

この物語には、ちょとした胸キュン恋話もところどころに用意されていた。
あさ(波瑠)と姉・はつ(宮崎あおい)とその許嫁・新次郎(玉木宏)惣兵衛(柄本佑)。
そもそもは、あさ→惣兵衛、はつ→新次郎、だったが、
惣兵衛の家、山王寺屋が、おてんばなあさを嫌がって、はつを嫁にすることにした。
このことをのちに知ったはつは、少なからず思いを馳せる。
新次郎と結婚していたらどんな人生だったのだろうか、と。
なにしろ、惣兵衛は母親に支配されたいささか偏屈な男だったから。
はつが新次郎に、どうしてあさを選んだのか?と尋ねるエピソードもあった。
破たんした山王寺屋は、あさとはつの実家今井家から譲り受けた和歌山の土地でみかん農家を営むことになるが、のちに惣兵衛の父母も、商才のあるあさが嫁いで来てくれていたら山王寺屋はつぶれなかったのだろうか、と夫婦の会話シーンもある。いいや、うちにははつしかいない、と夫婦二人、今の幸福を味わうほのぼの場面。

あさのお付き・うめ(友近)と加野屋の大番頭だった雁助(山内圭哉)の恋は、気持ちをおさえた結ばれない大人の恋。
秘めてるけど、み~んなにはバレている。そして結ばれないことを気遣ってくれている。
最終週では、雁助の女房も亡くなり、手紙のやりとりをする約束をする頭髪の白くなった二人。
うめの人生はあさとともにあったんだよにゃ~。

視聴者たちが一丸となって応援していた、加野屋の亀助(きすけ・三宅弘城)とはつのお付きで途中から加野屋に来るふゆ(清原果那)の恋。
ふゆは、実は新次郎に片思いだった。
それをそっと見守っていた亀助だったが、ふゆの実家からの縁談話を機に騒動が起き、プロポーズすることに。
亀助役の三宅弘城のもとには、この放送があった日、大勢の人たちから「おめでとう」メッセージが届いたらしい。

ふゆと言えば、
新次郎とあさの間に子供ができないことを気にかけた母・よの(風吹ジュン)が、妾を探すエピソードもあった。
新次郎のお妾さん第一候補は、新次郎の三味線のお師匠さんだったが、ふゆもそのひとりだったとあとから聞いたふゆは、お妾さんでもいい、と思ったこともあった。
妾については、あさも一時そうしてほしいと決心したが、やっぱり嫌だと悩むシーンはいじらしい。
もちろん、新次郎は妾のことなど思いもしていない。

なんといっても世間の女性たちがキュンキュンしたのは、五代さまだろうか?
五代友厚(ティーン・フジオカ)の心にはいつもあさがいた。だからこそ、応援した。
商売、大阪、社会、日本の発展のための提案、活動、そして期待に応えてくれる女性、それがあさだったのだろう。
大久保利通が暗殺されたときには、悲しみのあまり自暴自棄になり、ついにあさに慰めてほしいと迫る。
あさは五代を見守る。
あさは、珍しいくらい品行方正な女性だ。心すらなびかない。そんな表現だったように思う。
あさ役の波瑠は、この場面をどう演じていいか悩んだ、とは本人談話。突き返すのも変だし、受け入れるのもどうなんだろう・・・。
このあとのシーンにあさの心を入れてほしいと頼んだということだ。
実際、東京のガス灯の綺麗な灯りの風景を千代にも見せたかった、と土産話をするシーンで、心はいつも家族にあることが表現された。
五代友厚役のディーン・フジオカも、五代さまとともに人気急上昇。

最後に恋を叶えたのは、あさの娘・千代(小芝風花)
あさが入院中に病院で出会った帝大生・啓介(工藤阿須賀)
一度は別れるが、祖母・よのの人生最後の大仕事により、二人は結ばれる。

夫婦の形も色々だった。
あさの両親、新次郎の両親、はつの嫁ぎ先の両親・・・・、
そしてもちろん、あさと新次郎。
あさと新次郎は、才能ある女性からすればなんと理想的な夫婦像だろう。
女房をささえる夫。
平成の世にだってまだまだ(?)珍しい夫婦の形ではないか?
そういう意味でも、現代へのメッセージだ。
いろんな形があっていい。

今の世へのメッセージはまだある。
実は、よりみちねこは、後半途中から、な~んだ、結局商売で成功したお嬢様の話かぁ、
とちょこっとだけ冷めた目を持った。
だが、最終週。次のようなセリフがあった。
新次郎の命がもういくばくもないと分かって、どんな薬をつかってもいいから助けてほしいとすがるあさに向かって医者が言う。
なんぼ力をつくしても、お金があっても、どうにもできないもんがあります。
それは、決められた命、寿命です。 


あさは、それはそれは苦労して、維新も乗り越え、不況も乗り越えてきた。
誰にでもできることではない。
それでも、家柄や実家からの援助ということは、それなりあった。
女子大学校の土地も、今井家から目白の土地を譲られている。
そんな奇跡はめったにあることではない。
ある意味、お金があれば何でもできる、はその通りだ。
いや、逆に言えば、お金がないとできないことはたくさんある。
しかし、いくらお金があってもできないことがある。
人を死なせないこと。

この物語には、死の場面がふんだんにていねいに出てくる。
あさ自身も、道端で刺され、死の淵を彷徨う。
よりみちねこがかなり感動したのは、惣兵衛の死だ。
あれだけ悩みの深かった惣兵衛。いっときは家を出てばくちに明け暮れ、
母親を刺そうとまでした惣兵衛。
その惣兵衛が
「ええ人生やった」
と死の床で家族たちに心のそこからふりしぼってつぶやく。
柄本佑の染み入る演技が泣かせる。
自分の人生をぜ~んぶ背負って死んで行く。幸せに変えて。
すばらしいシーンだった。

人は「生きて死ぬ」そのことをじっくりと描いてくれたドラマだった。

どう生きるのか、それが大事だ、と教えてくれている。
まさに主題歌「365日の紙飛行機」だ。
その距離を競うより 
どう飛んだか 
どこを飛んだのか 
それが一番大切なんだ

さて、最終話。びっくりぽんな演出があるということで楽しみにしていた。
よりみち的には実は、な~んだ、だった。
もしかしたら、村岡花子が出てくるのかな、なんて思った。
山梨の別荘で夏に開いていた広岡浅子のサロンに、 村岡花子も参加していたそうなので。
写真が残っている。
「花子とアン」のはな、吉高由里子でも出て来てサロンに参加していたらびっくりぽんだと思っていたが、
・・・やっぱりそんなことはなかった。
あたりまえやがな。

いえいえ、
すばらしいラストシーンだったよ。
新次郎亡き後。
若き日の新次郎とあさが、太陽と風のなかで、笑顔いっぱいにいだき合う。


ところで、ヒロイン役の波瑠。
これが4度目の朝ドラオーディションだったそうだ。
「てっぱん」「あまちゃん」「純と愛」「あさが来た」
「純と愛」でもよかったのにな、とちょっと思ったよりみちねこだけど、
今となっては、白岡あさがはまり役だったにゃ

人はなるべき通りになっていくんやな。

良質のドラマだった。
出演者もみな、好演していた。
うまい役者揃い。
イメージアップにもなってるにゃ。

最終話からあさのセリフ。
山梨のサロンで若い女性たちに向けて。
これは、ちょうど今の日本に、世界に向けてのメッセージとなっている。
脚本家・大森美香の今後のドラマに期待。
劇伴の作曲をした林ゆうきにも拍手。

みなさん、知っての通り、うちは江戸の世の嘉永生まれのおばあちゃんだす。
うちらの若いころはなぁ、電話はもちろん郵便もあらしまへん。馬車や汽車かてあらしまへん。 
誰かになんか伝えたい思うても、脚絆はいて、ひたすらいくつも山こえるしかあらへんかったりしたもんだす。
それがほんま便利になって。
うちは昔のほうが良かったやなんて、ちょっとも思うてしまへんのやで。
そやけどなぁ、なんでだす?
国が育ったら、もっともっとみんな幸せになれる思うてたのに、
こな生きずらい世の中になってしもうたんは、 なんでなんだすやろな?
戦争は、銃や大砲で人傷つけて、
新聞や世論は人を悪う言うたり、勝手な批評して、人の心傷つけるばかり。
みんなが幸せになるための武器は、銃でも、大砲でも、悪口でもあらしまへん。
ここ(頭を指差す)、と、ここ(胸に手を当てる)だす。 
人の気持ち慮ることのできる優秀な頭脳と、やらかい心。それさえあったら、それで充分なんだす。
その分野でいうたら、おなごはんは決しておとこはんにひけとらしまへん。
いや、おとこはん以上にその力、大いに使うことがでけます。
まあ、うちの旦那はんは、うちよりやらかいお人だしたけどな。
若いみなさんは、これからどないな職業についても、家庭にはいっても、
その二つがあったら、大いに人の役に立つことがでけます。
日本どころか、世界の役に立てることが、この先ぎょうさんありますのや。
どうか、どうか、しょげてなんかいてんと、
よう学んでがんばっとくなはれな。



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