よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2016年05月

こんにちは。よりみちねこです。


「重版出来!」TBS 火曜夜10時
黒木華/オダギリジョー/坂口健太郎 

第5話。
良質のエピソードだった。

コミック誌「週間バイブス」の新人漫画編集者・黒沢(黒木華)は、
副編集長の五百旗頭(いおきべ・オダギリジョー)を尊敬しており、
その行動をストーカーのごとく観察。
誰も見ていないところでまで、いい人過ぎる五百旗頭。
道端のゴミを拾っている、募金している、困っているおばあさんを助ける・・・
そんな五百旗頭に、黒沢はついに声を掛ける。
自分は社長の真似をしているだけだ、と言う五百旗頭。
五百旗頭の机には、文芸部での初仕事だった「宮沢賢治詩集」。
ずいぶんと社長に目をかけてもらった、と。

興都館社長・久慈勝(高田純次)は貧しい炭鉱の母子家庭で育った。
父親は、肺を患って死んだ。
優秀だからと担任にすすめられていた高校進学。勝自身も進学して医者を目指したいと思っていた。
が、母親の反対で諦めた。
その母親は、卒業式の日に男とどこかへ行ってしまった。
勝は、炭鉱で働いた。そして自暴自棄になり、賭博、強盗。
貧乏人には貧乏人の生き方がある、と。
ある日、夜釣りをしている老人(火野正平)に金を出せと刃物を突き付ける。
老人は言う。
おいを殺したら、わいの運はつきるぞ。
ええこと教えちゃろ。
運ば、ためられるっぞ。
世の中はな、足して引いてゼロんなることできちょう。
生まれたときに持ってるもんに差があっても、札(ふだ)はおんなじ数だけ配られよる。
ええことしたら、運はたまる。悪いことしたらすぐに運は減りよる。
人殺しげな、いっかんの終わりたい。
運ば、味方にすりゃ、何十倍も幸せは膨れ上がりよる。
問題は、どこで勝ちたいかや。
自分がどがんなりたか、頭で考えろ。考えて、吐くほど考えて、見極めろ。運ば、使いこなせ。
おれの言うことが信じられんか?
信じられんなら、そいが、わいの運たい。

勝は東京へ。
町工場で、食べる、生きるために働いた。ただひたすら。
ある日、昼飯を食っていると、隣で本を読んでいる同僚がいた。
自分の同郷の詩人だ、と言って、勝にその本をくれた。
「宮沢賢治詩集」

雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と
味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを
自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり
そして忘れず
野原の松の林の陰の
小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば
行って看病してやり
西に疲れた母あれば
行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば
行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば
つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものに
わたしはなりたい
(原詩は、ひらがな部分カタカナ)

ただ文字が並んでいるだけなのに、どうしてそんなに泣けたのか。

興都館の本だった。

勝は、勉強した。図書館通いをし、そして、大検を取って大学へ。
興都館の編集者になった。
 
ある作家がこう言った。
キミが若い頃会ったっていうその老人、そりゃあ、きっと聖なる預言者ですよ。
運命の神は、人が間違った方向へと行かないように、人間のふりをして、辻々に立っているんです。
聞くも聞かぬも人の選択。
 
作家とはおかしなことを言うものだ、と勝は思った。
 
が、ある日、麻雀で大勝した勝。
その直後、アパートが全焼し、妻と娘は無事だったものの、家財一式を失い、ギャンブルをやめた。
運をどこで使いたいか、だ。
酒もタバコもやめた。趣味は、散歩と掃除。家は借家、車も持たない。
贅沢はせず、必要最低限の生活を。
そうして一年経つころ、
偶然買い付けた無名作家の海外ミステリーがモンスター級の大ヒット。重版につぐ、重版出来。
 
すべての運をヒットにつぎこむために、運をためつづける久慈社長。

ここで、ちょっとよりみちファンタジー反応を。
妖精は、人間を助けるのが仕事。
どういう人を助けるか?
良いことをしている人。
とくに、妖精というのは草花に宿っているもの。
彼らは、自然を大切にしてくれる人間が好き。
たとえば、道端に落ちているゴミを無視せず拾う人を、妖精は助けてくれる。
そして、
天使は、人生の道筋の角々に立っていて、進むべき方向を指し示してくれている。
それは、人の姿をしているかもしれないし、本のなかの言葉かもしれない。

バイブスコミックス、売れ残りの廃棄処分の日。
黒沢は社長とともに、その現場へ。
生きていくのに、本は必ずしも必要じゃないかもしれない。
読まなくとも生きていけるかもしれない。
だが、たった一冊の本が、人生を動かすこともある。誰かに救いをもたらすこともある。
だから私は、一冊でも多くの本を読者に届けたい。
それが、本への恩返しなんです。
本が・・・、本が私を人間にしてくれた。
これからも私は本を売ります。だから、ここへ来るんです。この痛みを忘れないために。
 
忘れません、この光景、けっして。と、つぶやく黒沢。

よりみちねこも、本に救われた。
いや、救われ続けているにゃ 

高田純次が、こんなに真面目な役、というところも見どころ。

最後の宝くじのシーンは、オチ、かな?

ぜひ、観てほしにゃ。
観る価値あり。

「重版出来!」は、
各エピソードのなかに、出版社、業界の背景が上手く盛り込まれていて、
教養ドラマの一面もある。
編集者と漫画家のヒューマンな部分もコメディーとシリアスが混じって秀逸だ。
今はやりの強烈な対立とか、いじめとかがなく、健全。
キャラの個性もしっかり描かれている。
純粋傑作だ 。


ドラマを楽しもう

こんにちは。よりみちねこです。

今日はよりみち映画評。
昨夜テレビで観た。
(これから観る人で、不思議を楽しみたい人は読まないでね)

「陽だまりの彼女」
2013年 日本
松本潤/上野樹里


「イグアナの娘」だぁ、と思った。
つまり、
「人魚姫」+「鶴の恩返し」ファンタジー。
この映画は、そこにさらに、
「時をかける少女」の要素が入っている。

ファンタジーの古典がベースになっている。

真緒(上野樹里)は猫。
助けてもらった浩介(松本潤)に恋をして、人間にしてもらう。
広告会社に就職して2年の浩介。中学時代の同級生・真緒と再会して恋に落ち、
真緒の両親の反対を押し切って結婚する。
真緒は13歳までの記憶がない全生活史健忘という病気だという。両親はそのことを心配している。
人間になる前までの記憶がないのは、
「イグアナの娘」の娘(菅野美穂)の母(川島なお美)と同じだ。
彼女も、ガラパゴスで助けてくれた夫に恋をして人間にしてもらう。
真緒は、人間でいる年数に制限あるようだ。12年だからもう限界だ、と。
「イグアナの娘」では、自分の正体に気づいたときが死、だった。

新婚生活を送る二人。
真緒は本当に幸せそう。
上野樹里が猫に見えるのは、
猫人間の演技を巧みにしているからなのか、そもそもそう見えるのか、
なんだか不思議な感覚の漂う映像。
やはり上野樹里は天才女優なのか?

マンションから落下する少年を猫の身のこなしで助けたことが、
浩介の前から姿を消すきっかけ、決断となる。

真緒がいなくなると、
真緒の記憶は周囲の全ての人たちから消えてしまう。
両親も、うちには娘も息子もいない、と。浩介のことも記憶にない。
浩介も次第に忘れていく。
この記憶消失の設定は、「時をかける少女」だにゃ。
未来から来た青年が戻っていくとき、周囲の人々の思い出のなかから彼はいなくなる。

なので、ファンタジーとしては、よりみちねこ的には新鮮な驚きはなかった。
あ、あれか、と。
が、それなりに楽しめた。
ストーリーや恋愛ドラマよりも、
このファンタジーをこの映画ではどう描いてくれるのかな、
のほうに注目しての鑑賞だった。
難を言えば、これには「原作」があるわけだが、
映画のタイトルによりみち的不満が残る。
結局は松本潤ファンを狙ったアイドル映画か?という印象がぬぐえない。


「人魚姫」「鶴の恩返し」「時をかける少女」ファンタジーは、
偉大なる古典なのだな、ということがここへきて分かった。

そして、繰り返し表現されるということは、
現実世界でも、実際に起こっているファンタジーなのかもしれないにゃ
と思わないでもない。

ドラマを楽しもう


 

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