よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2018年10月

よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

「サイレント・ヴォイス」BSテレ東 土曜夜9時
主演/栗山千明

第3話「私は何でも知っている」

端くれですが、私も占い師ですので、興味深く視聴しました。

夫の経営する店で遊びで始めた占いが評判になり、いつしか霊能者として病気治しまでして大金を稼ぐことになった霊能占い師・手嶋奈緒美役(堀内敬子)。
信者も大勢いる反面、被害者の会もある。

被害者の会の男性が謎の転落死。手嶋のところへ乗り込んで来た男だった。そのとき「3日後に死ぬ」と手嶋に予言されていた。

行動心理捜査官・楯岡絵麻(栗山)が取り調べを行うが、犯人らしい反応が全く見られない。手嶋には犯行当時のアリバイがあり、本当に霊能なのではないかと疑いはじめる相棒の西野刑事(白洲迅)。

楯岡は、あの手この手で手嶋の霊能がいわゆる「コールドリーディング」であることを証明していく。
詐欺師の才能がある、と問い詰める。
が、何が本当で何が嘘なのかは、どうにも突き詰めようがない。
それが自称他称問わず「霊能」というものなんだ、ということがよく分かる楯岡の取り調べだった。

私はドラマの途中で思った。本人が本当だと思い込んでいればおそらく行動心理的な身体的特徴は現れないのだろう、と。そんなことを考えていたら、楯岡も同様の指摘をした。
そういえば、そういう人は「嘘発見器」にもひっかからないという事例を、海外のドキュメンタリー番組で見たことがある。

これほどの信者を集めるまでになったということは、それなりに当たったり、治癒したりという現象はあったのだろうが、カルト教祖的存在というのは、本人のみで出来上がるのではない、ということも示してくれていたように思う。
つまり、周囲の崇拝者たちの影響は大きい。彼らがまず、祭り上げる。すると本人はますます本気になる。次第に忖度も働くようになる。
ときに教祖の予言を的中させるために、「それ」を「起こす」という作業をする。これは、自称霊能者本人の命令で行っている場合もある。
テレビ番組などでは、スタッフが事前に相談者の身元を調べて、あたかも霊視しているかのごとく喋る、という演出もあると聞きます(参考文献/松尾貴史著「オカルトでっかち」他)。

手嶋に、あなたは妄想性障害だと明かす楯岡。
それはあなただけの責任ではい。
あなたと相談者たちは互いにマインドコントロールを強め合う関係だった。

この第3話では、信者がそうしたのではなかった。なかなか複雑に事が絡み合っていた。
手嶋に息子の腫瘍を治してもらっていた母親の父、が犯人だった。この人物は被害者の会のメンバーで、そんな詐欺から娘と孫を救い出したいと思っていたのだが、3日後に死ぬという予言をその場で聞いていた彼は、その予言が当たることが孫と娘のためになると判断したのだった。孫の腫瘍が小さくなったと聞いていたので、彼女の霊能力が続くことを望んだ。
う~ん、だからって……
でも、人の気持ちってそんなものだ。

信者たちは、教祖の霊能力を信じているので、殺したりしない。
楯岡の説明は論理的だ。
あなたの霊能力に懐疑的であるにもかかわらず、殺人を犯してまであなたが霊能者として存在しつづけることを願った人物。

霊能があるのかないのかと問い掛けてくる犯罪捜査ドラマで私が印象に残っているのは、「クリミナル・マインド」「dele(ディーリー)」「ガリレオ」。「クリミナル・マインド」「dele」では、最後には、やっぱりそういうのもあるのかなぁ的演出で終わり、「ガリレオ」では、全く違っていたことが証明されました。

余談ですが、
「霊能」については、その真偽は分からない。そう思っておいたほうが安全です。
なぜなら、その99%が詐欺、霊感商法の可能性が高いと言っても過言ではないからです。

本人が「見えている」と思い込んでいる限り、本人としては確かに見えているのでしょうから、それは本人にとって真実以外のなにものでもない、わけです。ですので、そういう人を何らか説得しようとしても無駄です。むしろ、詐欺師というのは対話能力が高いので、洗脳されてしまうかもしれません。「ミイラ取りがミイラになる」です。

私には人知を超えた力があり、私は選ばれた人間である、そのことの証明にほかならない
という手嶋が楯岡に行ったセリフ。これは大変に危険である、と言わざる負えません。
楯岡が取り調べのなかで比較例として出した、「ヒトラー」と「サリン事件の主犯者」も、全く同じことを思っていたと思われます。
霊能者や占い師でなくとも、ビジネスの世界にも、あらゆる職業、否、あらゆる人間のなかに、親や学校の先生にも、同様の類いはいます。
このような不遜な言動は、その人間の真価を判断するための試金石、基準とすることができます。
どんな人でもこんなことを言い出したら用心したほうがいいですよ。

本当に本当に「見えている」のであれば、むしろ「より謙虚になるべき」と私は思っています。いや、謙虚にならざるを得ないのではないでしょうか。

手嶋は、犯人ではないので釈放されて、このまま霊能者を続けていくのだろう。そして一部は離れていくだろうが、信者はそのままついていくだろうし、報道されることで新しく崇拝者となる人たちも現れるはずだ。

こういったことがあった後に、崇拝心はより強くなる、という学者の報告論文もあります(参考文献/「予言がはずれるとき」レオン・フェスティンガー)。


……にしても、楯岡は、いや栗山は、「幻解!超常ファイル」だったぁ!




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「僕とシッポと神楽坂」
テレビ朝日金曜夜11時15分
原作/たらさわみち
脚本/谷口純一郎  国井桂
出演/相葉雅紀 広末涼子 かとうかず子 趣里 渚 イッセー尾形 


よかったよかった。相葉雅紀が復活してくれた。
紅白の司会、「貴族探偵」と、私のなかでは相葉雅紀は死んでいました。

彼にはこういう役が合っている。
どんな役でも器用にこなせるのが役者、かもしれませんが、それでもやっぱり人間ですから誰しもそれぞれに醸し出す雰囲気というのもはあるもので、器用にこなせないからといって必ずしも役者向きではない、というわけでもないのかな、と思います。
ただし、「嵐」のメンバーたちは、どちらかというと、役者ではないのかもしれませんね、というのが今のところの私の感想です。

そんななかでも、この作品は的中ではないでしょうか。

勤めていた動物病院をやめて、実家に戻った高円寺達也(相葉)。尊敬する獣医師の小さな動物病院で働く予定だったが、その医師は姿を消しており、達也がひとりで後を継ぐことに。
小さくて、古めかしいたたずまいの「坂の上動物病院」。

動物と飼い主の気持ちに寄り添う診療をする達也。通称「コウ先生」。
ドラマタイトルにある「シッポ」。
シッポって動物のことなんだ。達也がそう呼んでいるを聞いて私はようやく気づいた。

こういったヒューマンドラマは、昔はゴールデンタイムでやっていた。
深夜ドラマが悪いわけではないが、やはりゴールデンは、いくら主演がジャニーズといえども、刺激満載のエンタメ味が要求されるのでしょうか。
同じのんびり雰囲気のドラマ「僕らは奇跡でできている」に、退屈だ的感想がありましたから、致し方ないのかもしれませんね。

とはいえ今秋は、2作品もゆったりドラマがあって、私としてはうれしいです。
テレビ朝日も、刑事ものではないドラマもつくれたのですね。

兎にも角にも、相葉雅紀をまともに見られるのでよかった。
「貴族探偵」の汚名返上(あくまでも私個人にとっては)!

動物病院と動物たちを中心に神楽坂で起こる様々なストーリー。
視聴おすすめします。
金曜日の深夜、一週間の疲れを癒してください。
そのままゆっくり眠れると思います。



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「僕らは奇跡でできている」
フジテレビ(カンテレ)火曜夜9時
脚本/橋部敦子
出演/高橋一生 榮倉奈々 要潤 児嶋一哉 戸田恵子 小林薫


都市文化大学の動物生態学研究室の講師として、恩師である生命科学部学部長・鮫島(小林)に呼ばれた相河一輝(高橋)。

そもそも学者は、変わりものの集まりだが、相河は、なかでもとびきりの変人に見える。
彼の正直すぎるところ、率直さが、ときに迷惑に見えるかもしれないが、実は人間の本質をついてくる鋭い感性だったりする。
おそらく相河は、教授になろうとかいう権威的欲望からはほど遠い人物なのだろう。研究し、探究し、疑問を追及していくことに常に集中して生きている。

彼のキャラクターも、ヒーロー的要素を持っていると言える。
具体的で物理的な問題を解決してくれるわけではないし、困っている人を助けてくれるウルトラマンでもない。が、「グッド・ドクター」「義母と娘のブルース」の主人公ヒーローキャラとの共通点は、嘘をつけないところ。
何でも正直に言えばいいというものでもないのが人生ではあるが、私たちは、どうも不正直に我慢することが美徳のように生きてきてしまったのではないか。ゆえに、このようなキャラクターが続々登場しているのかもしれない。
もうひとつの共通点は、正確な情報をくれるところ。それはときに特殊な分野かもしれない。「スタートレック」のセブン・オブ・ナインやホログラムドクター、データのように、百科事典万能さはないが、例えば相河は、第2話のフィールドワーク中に、シカの鳴き声を聞いて○○メートル先にいると、詳細な情報を学生たちに発信する。学生たちにはそれが本当かどうかは確かめようもないのではあるが。
ある意味のスーパーマンだ。

本質をついてくる人間、自分の知らないことを言ってくる人間を、人はニガテに思って遠ざけたり、酷い時には自分を守るために攻撃したりもするが、ちょっと変わった「正直善人キャラ」は、私たちに大切なことを気づかせてくれる存在だったりする。その場合、善人であることははずせないだろう。なぜなら、悪人であればその言動には悪意が伴うのであろうし、もし善なる表現をしているのなら、それは詐欺師なのではないか、と思うので。

歯科医師・水本育実(榮倉)との関係とやりとりが「古い」という評価もあるようだが、男女の不思議な出会いとしてはドラマ上よくあるパターンだし、だからといってとくに古くさいとも思わない。むしろ、二人の感覚が新しいようにすら感じる、平成最後の秋に。
もしかしたら最近の傾向かもしれないが、自分の心を見つめる傾向がある。
水本と相河は、互いにニガテ意識を抱いているが、水本は相河の言動に何かを気づきはじめている。
互いに何か学びを得ていくことになるのか……

第1話の「うさぎとかめ」の解釈も哲学的でよかった。
なぜかめは、寝ているうさぎに声をかけなかったのか問題。

授業中、退屈そうにしている学生たち。
第2話ではフィールドワークの授業もあったが、学生たちの思いがどう変化していくのか、ということろも興味深い。

劇伴と作品のまったりとした雰囲気から、このドラマにも「かもめ食堂」「めがね」「すいか」といった一連の小林聡美主演の映画とドラマが思い浮かんでくる。それは、いつかどこかで観たという批評ではなく、刺激的展開や大声、受け狙いの決り文句のみで迫ってくるドラマが多い昨今、静かな空気のなかで進んでいきながら、それぞれの心にそれぞれ何かを伝えてくれる物語、という意味です。

毎日新聞2018年10月21日「10月新ドラマ 担当記者座談会(上)」での評価は、良いと良くないに別れている。まあまあという回答が一人いるので、良いがちょっと優勢、かな。

良いという評価のSさん
うまく社会になじめない大学講師が高橋にぴったり。
特に何も起こらない日常の物語だが、橋部敦子の脚本がよく、その世界に引きつけられた。

良くないというIさん
私には、この平凡な日常もストーリーがちょっとまだるっこしくて退屈。
でも、せかせかと生きる私たち現代人には、不思議な感覚になれるね。

そういうことなのですね。こういったドラマを評価しない人たちは
「何も起こらない日常の平凡な物語が退屈」なのですね。
私は、非常に面白いです。
中だるみしないことを期待します。

追伸
同じ研究室の樫野木准教授役の要潤。最近、こういう役が多いように思う。つまり、現実的で保身的で、主人公を敵視しているかと思いきや、実は助けている存在。いいポジションにはまったかもしれない。現在朝ドラ「まんぷく」にも出演中。こちらも良さげな役です。金銭欲のない画家。
講師の沼袋(児嶋)は、研究室でアリばかり見ているが、実は研究室の人間関係を鋭く観察している?



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「コールドケース2」
WOWOW土曜夜10時
原作/アメリカ CBS ワーナーブラザーズ
脚本/大勢いるのでサイトで確認してください
出演/吉田羊 永山絢 滝藤賢一 光石研 三浦友和

アメリカで2003年~2010年シーズン7まで放送された。

これは、面白い。よくできた刑事ドラマだ。
過去の未解決事件を取り扱う刑事ドラマは近頃多い。そのなかでも断トツ1位、というのが私の個人的感想。

アメリカ版をほとんどそのまま倣っている。
エピソードは厳選しているのだろう。日本には馴染まない内容もある。例えば人種問題が絡んでいるものとか、退役軍人、帰還兵もの。「クリミナル・マインド」もそうだが、アメリカでは、ベトナム戦争を経験した捜査官もまだいるし、湾岸戦争の帰還兵もあちらこちらにいて、犯罪に絡んでくる。

カメラワークとか、エピソードの始まりから事件発生、解決への流れはアメリカ版も日本版もほぼ同じ。アメリカ版と日本版を交互に観ていると、錯覚を起こすほど。

気になる点がひとつあるとすれば、過去と現在の人物が入れ替わる映像だろうか。つまり、事件関係者たちの若い頃と現在。私も初めて観たときは、え?と思ったがすぐに慣れたし、それがこのドラマの真骨頂でもあるので、これが「ダメ」という人には魅力のないドラマとなってしまうかもしれない。

私としては、アメリカ版よりも日本版のほうが落ちついてよくできていると感じている。もちろん、アメリカ版も好きです。
このような静かに淡々と進む刑事ドラマは、地上波民放ではまずないだろう。

それと、カメラワークというのか演出というか、人物の周りをぐるぐる回る映像があるのだが、これは、アメリカ版では目が回りそうになることがあるほど過剰なときがあるので、そういう意味からも日本版のほうが見やすいかもしれません。

なにしろ、吉田羊がいい。 永山絢斗もとてもいい。

「コールドケース」や「クリミナル・マインド」は、事件の解決をみたときに、ぞっとする内容以外にも、複雑な人間模様や、人生の背景などで、ひどい殺人事件ながら涙が出てしまうエピソードがあるところが、名作たるゆえんなのではないか、と独善的に思っている。
日本版もそれを踏襲している。

ちなみに、「コールドケース」を観るためにWOWOWに加入してしまいました。
それほど、私ははまってしまっています。
「クリミナル・マインド」にはまって以来のアメリカ発ドラマ。



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「SUITSスーツ」
フジテレビ月曜夜9時
原作/USAネットワーク
脚本/池上純哉
出演/織田裕二 中島裕翔 鈴木保奈美 他


本家本元のアメリカでは現在シーズン8が放送中。
シーズン7を観た限りでは、正直面白くない。
シーズン1を観たことがないので、その作りが、日本版とどの程度近いのかを較べることができないが、ネットから得た情報によると、設定と物語の始まりはほぼほぼそのまま引き継いでいるようだ。

私の家族の感想では、アメリカ版がものすごく面白いので、日本版に期待が持てない、ということだったが、私は純粋に日本版から入っているからなのか、1話2話を観た感想は日本版のほうが「面白い」。アメリカ版のシーズン1を観たら感想は変わるかもしれない、ということは付け加えておく。
とはいえ、面白いドラマは、どこから観ても面白いものだが。

都会のビルを映し出す映像演出は、アメリカ版を倣っているのだろうと思うと同時に、アメリカン、否、ニューヨークな雰囲気を醸している。

しかし、そもそも、経歴詐称、身分詐称は、はっきり言って詐欺、犯罪だ。そんなこといいんだ、と現実世界に生きている人間としては極めて真面目に思ってしまう。だって、これがばれたら、敏腕弁護士甲斐正午(織田)だって、弁護士資格をはく奪されるよね、と。

その甲斐が認めて、自分のアソシエイトにした男が、鈴木大輔(中島)。本当の名前は鈴木大貴。天才で高校2年生のときに司法予備試験に合格したが、センター試験の替え玉受験を請け負ったことがばれて、司法試験受験資格を失ってしまった。それからフリーター。

これも、言ってみれば、天才ヒーロー的存在なんだろうと思った。つまり、大輔は、本は一度読めば覚えてしまう頭脳の持ち主。今年の夏ドラマと比較すると、「グッド・ドクター(フジテレビ)」の医師・新堂湊(山崎賢人)はサヴァンで、やはり特別な記憶力を持っている。「義母と娘のブルース(TBS)」の義母・亜希子(綾瀬はるか)も、とびきりビジネスの能力の高いキャリア・ウーマンで、難局を解決してくれる存在。
私たちは、こうしたウルトラマン的存在をどこかで求めているのだろう、と思う。

アメリカ版では法廷でのやり取りも見ごたえあるようだが、日本版でもこれから登場してくるのだろうか。

中島裕翔は、どちらかというと役に恵まれる方ではないか。役者本人の能力が呼び寄せるのかもしれないが。
フジテレビで言えば、「デート~恋とはどんなものかしら~」も良かったが、「HOPE~期待ゼロの新入社員~」は非常に良かった。
ジャニーズでなくとも十分にやっていけると思う。



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「結婚相手は抽選で」
フジテレビ(東海テレビ)土曜夜11時40分
原作/垣田美雨
脚本/関えり香 川嶋澄乃
出演/野村周平 高梨臨 大谷亮平 佐津川愛美 大西礼芳 平山祐介 若村麻由美


「結婚」。タイムリーなテーマなのかもしれない。

内閣府特命担当大臣に任命された、オリンピックメダリスト小野寺友紀子衆議院議員(若村)。少子化対策として「抽選見合い結婚法」を可決させることを託される。
総理大臣の収賄への注目をそらすための奇策でもあった。

アニメオタクで潔癖症の宮坂龍彦(野村)は、女性とつきあったことがない。なので、むしろこの強制的な法をどちらかと言えば歓迎していた。

法律の内容には、
25歳~39歳の独身男女
相手が気に入らない場合は2回まで断ることができる
3回断ると、「テロ対策活動後方支援隊」に2年間従事
などがある。

様々な男女の、様々な思いが、この法律の施行によって浮き出てくる。
本当に結婚したい男から振られてしまった女。
結婚したくない人もいれば、結婚はしたいけど複雑な理由で避けている人もいる。

ひとつだけ相手の希望条件を書くことができ、それにそぐわない場合は破談とできる。
希望条件は、具体的である必要がある。街頭インタビューでは年収一千万以上!と軽いノリの女性もいれば、親の介護をしてくれる人じゃないとだめだという男性も。
結婚したくなければ、希望条件にほとんどありえない希望を書けばいいように思う。が、父親の飲酒DVに悩まされた女性は、飲酒をしない人、と書くなど、切実だが表面にはでにくい本質についても考えさせられるシーンもある。

第2話では、龍彦の2回目の見合い相手で5歳年上の有名企業主任の女性、不動怜子(富山えり子)の言動が興味深い。
怜子は龍彦に言う。
「無作為抽選で、どうしてオレがこんなデブでブスな31のおばさんと見合いさせられるんだ、理不尽だよ、なんて思ってるわよね」と。
見合いのあと、龍彦のほうから断ろうとすると、事務局から電話があり怜子のほうから断られる。どうして断られたかの原因を知りたくて、再会し、尋ねることにした龍彦。
「どうしてこんなデブでブスな31のおばさんにオレが断わられなきゃいけないんだ、納得いかねぇし、なんて思ったんですよね」
あなたは結婚したいのかしたくないのかと尋ねられて、曖昧にしか答えられない龍彦。
そして怜子の事情を知る。デブスだと子どものころから男子にからかわれ続けてきた。回りの女子たちがお嫁さんになりたいとキラキラしているのを見て、そんな普通の女の子の夢は自分には無理だと悟った。小学校3年生のときに一生結婚しないと誓った。それからは遊ぶのも我慢して毎日必死に勉強した。国立のいい大学に入って、人のうらやむ企業に就職し、今の地位を勝ち取った。最年少で主任。

結婚の夢を捨てたかわりに今の私があるの。
なのに、抽選相手と見合いしろ?適齢期の男女は結婚しろ、なんて法律があっという間にできた。どうかしてるわ。結婚が人間の義務だなんて。笑っちゃう。結婚しなくちゃ、国からは人として認められないってこと?私がどんな気持ちで普通の女の子の夢、封印したと思ってるのよ。
これが、あなたを断った理由。私は、結婚なんかしない。
涙ながらに語る怜子。ハンカチを差し出す龍彦。
帰り道、龍彦が尋ねる。
あの、もしお見合い3回断ったら、
厳しいテロ対策活動後方支援隊に2年間強制従事、ですよね。
除隊後の職場復帰は政府により保障されている、っていうルールよね。だから上司に確認してみたの。そしたら、今のポジションを保障するから心配しないように、って。だから私は、とっとと3回断って、テロ対策でも何でも行ってやるわ。
辛いことには昔からなれっこ。たった2年で結婚なんて制度から解放されるなら、なんてことないわ。
マイストロー、もしかして潔癖?いろいろあるんだね、あなたにも。
お互いがんばろう。
ルール違反なのに会ってくれた怜子。良い人なんだな。

世間が押し付けてくる一定の価値観に加えて、今度は政府から押し付けられる理不尽な義務。いつの間にか決められた法律に国民はみな従わなければならない。
ある日突然、自身が覚悟を決めて選択してきた道を変更するように強制される。
そして龍彦が聞いた、怜子のここまでの歩みと人生観。

その夜、龍彦はブログをアップする。
抽選見合い結婚法について思うこと

結婚が人間の義務だなんて笑っちゃう。
そう言ったその人の目からは、悔し涙がこぼれていました。
そのとき、僕はふと思ったんです。
人を傷つける法律なんて、本当にあっていいのだろうか……

この法律への懐疑的な発信を続けているジャーナリストのひかり(大西)が、龍彦のブログにコメントを残す。
人を傷つける法律なんて、あっていいわけないよね

ただの結婚をめぐるドタバタ系ドラマとか、いわゆる結婚できない男系のコメディなのかな、とあまり期待もせず観たが、案外シリアスで面白いので、続けて視聴してみようと思う。社会派の要素も十分にあり、現政権のパロディ風でもある。 

怜子さん、2年間の「テロ対策活動後方支援隊強制従事」のあと、本当に元の仕事、ポジションに戻れるといいけれど。今の日本社会を考えると、大丈夫かなと心配になる。

さて、途中でこけないように、良質のドラマとして最終話を迎えることを期待します。

 

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「サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官 楯岡絵麻」
BSテレ東 土曜夜9時
原作/佐藤青南
脚本/ブラジリィー・アン・山田 大浦光太 本田隆朗
出演/栗山千明 白洲迅 宇梶剛士 野村修一 椎名香奈江

 
BSテレ東って何?今秋ドラマから「あれ?」と思ったのは私だけではないと思います。
まさに、この10月から「BSジャパン」が「BSテレ東」に社名変更したそうです。
いっとき絶好調っぽかった日本テレビのドラマが劣化しているなか、テレビ東京のドラマがこのところがんばっているように思っていましたが、BSテレ東も面白いドラマをこれから提供してくれそうだ、と思わせてくれる土曜夜9時です。

主演の栗山千明は、NHKの「幻解!超常ファイル」のナビゲーターとして、私には馴染の存在だ。ミステリアスな役からシリアス、コメディと幅広い役をこなす若手ベテラン俳優、と言ってもいいくらいのキャリアではないだろうか。なかでも刑事役は多い。

このドラマでは「行動心理捜査官」。ただの刑事ではない。取調室で、メンタリストDaiGoがテレビ番組内でよくやっている相手が選んだものを当たるゲームのようなことをする、と言えば分かりやすいのではないか。

「行動心理捜査」といえば、FBIのBAU「行動分析課」を思い出す。アメリカドラマ「クリミナル・マインド」で日本にも広く知られた存在だ。いわゆるプロファイラー。これまでにも刑事ドラマのなかで、FBIで行動分析を学んで帰ってきた云々というセリフはときどき耳にしていたが、その能力が的確に毎週使われる刑事ドラマは日本ではまだ見当たらなかったように思う。

原作は読んだことがない。が、1話2話を観る限り、面白い。
栗山演じる楯岡刑事は、おっさん刑事の思い込みな取り調べを引き継いで颯爽と取調室にやってくる。
普段の生活が婚活三昧なのが事実なのかどうなのかは別として、1話2話では、男性容疑者相手に親しげに接近する対話を繰り広げる。

それを横で見聞きしている西野刑事(白洲)の独白つっこみが愉快。西野刑事は事件の概要を視聴者に説明する役どころでもある。白洲迅は、このところ「正義のセ」「刑事7人」と、役に恵まれてきたように私は感じている。応援したくなってきた。「正義のセ」はゲストだったが、なかなか演じ甲斐のある良い役だったのでは?

ドラマのほとんどは、取調室シーン。
楯岡刑事が、犯人の反応を引き出すべく様々な質問や問い掛け、お喋り、挑発を繰り広げる。
人は嘘をつくと大脳辺縁系が反射し、ほんの一瞬肉体が反応する。そこを見るための楯岡刑事の奇抜な対応。
こいつが犯人だと確信すると、地図や資料を使って証拠や現場、人物を絞り込んで特定していく。
この絞り込み作業は、「クリミナル・マインド」の元天才ハッカー、ペネロープ・ガルシア捜査官がコンピューターを使って引き当てていく作業をアナログでやっている!と思わず興奮したほど、鮮やかだった。

ドラマ後半に入る前に、古畑任三郎のごとく、楯岡刑事が視聴者に向かって問い掛けるのも良い演出だ。

楯岡刑事の取り調べ方法が大げさに見えなくもない。気になる視聴者もいるかもしれない。「クリミナル・マインド」でも、容疑者らに真実を語らせるために、あの手この手を使う取り調べをするので問題ないと思うが、男性犯人相手に毎回婚活手法だと飽きてくるかもしれない。まさかそんなことはないと思うが。

1話2話は、男性相手に女性特有の色気も使えたが、3話の相手は女性、しかも霊能者らしい。
どんな取り調べになるのか、楽しみだ。



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「ダイアリー」NHKBSプレミアムドラマ全4回
【作】嶋田うれ葉
【音楽】瀬川英史
【出演】蓮佛美沙子 菊池桃子 中村蒼 大塚寧々 濱田マリ 西田尚美 山本陽子 緒形直人 ほか


春海(菊池)はシングルマザー。高校3先生のとき妊娠して家を出た。娘の彩加(蓮佛)を苦労して育ててきた。
彩加は、春海が父親のことを話してくれないことなどから、母にも自分にも不信感を抱いてぎくしゃくしていた。
彩加の結婚相手・悠一(中村)を気に入った春海だったが、ウェデイングドレスの試着の日に、脳出血で倒れ、植物状態になる。
春海が「リビングウィル」(尊厳死宣言)カードを持っていることを告げられる彩加。自分ともう一人誰かに通知が出されているはずだ、と。
そんなとき、春海が高校生のときから友人4人でつけている「交換日記」を発見する。母の尊厳死を認めるかどうか迷っている彩加。もうひとりの受け取り手に尋ねてみたらどうかという医師のアドバイスもあって、母のことを知ろうと、故郷金沢へ向かう。

意外と、と言っては失礼かもしれないが、引きこまれていくドラマだった。
春海の「リビングウィル」を持っているのは誰なのか?彩加の父親は誰なのか?どうしてたったひとりで彩加を産んだのか。
全4回の短い連続ドラマだったが、次週を楽しみに待てるタイプの久々のドラマだった。
民放だともっとドラマチックに描かないとスポンサーがつかないのかもしれないが、この静々と順当に展開していく雰囲気が良かった。

日記に書いてあることと違う母の友人たち3人の生活を垣間見ることになる彩加。
人はどうして、嘘をつくのだろう、繕うのだろう。
いや、素直になれていないだけなのだ。

彩加という刺激が飛び込んできたことで、3人の生活も変化していく。
何より、自分の気持ちに正直になっていく人々。
彩加の父親である、彼女たちの同級性(3人のうちのひとりの夫となっている)も含めて。

自分に引き取らせてくれと言う祖母(晴海の母)。家を追い出してしまった罪滅ぼしだ、と。
しかし、彩加は母の意志を尊重することに、祖母の同意を求める。

「尊厳死」、私も考えています。
リビングウィルは「尊厳死協会」というところで手続きしてくれるようだ。
私はすでに家族たちにその意志は伝えてあるが、文書で残しておいたほうがいいのかな。
そのときになったら家族としては迷うかもしれないし。
とはいえ、お金がなければ生命維持は必然的に困難になるわけですが。
諦めさせられるよりも、「WILL」意志を持って選択するほうが前向きだと、私は考えています。

良質のドラマでした。



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「半分、青い。」NHK朝の連続テレビ小説

よりみち的に受けとめたこのドラマのテーマは「諦めない」。
最後の秋風羽織先生(豊川悦司)の手紙にも象徴されていると思う。
いや、ドラマの週タイトルが「○○たい」なので、
「夢を持ちたい」かな。
いや、裕子(清野菜名)にあやかって「夢を持て」「希望を持って生きろ」。

律役の佐藤健が、納得の終わり方になっているとは思う、というようなことを「あさイチ」で言っていたが、その通りになったと言っていいのだろう。
ずっとヤキモキしていた鈴愛(永野芽郁)と律が、やっと40歳となって結ばれることになった。
この二人は幼馴染ゆえずっとつながってはいたわけで、ずっと親友という位置づけだってよかったわけだけれど、それでも人生というのはいつ何が起こるか分からないもの。
40歳を過ぎる頃から結婚を諦めてしまう人も多いが、私はいつも思う、運命の人に出会うのは50歳かもしれないし、60歳かもしれない、と。

鈴愛の人生は、これだけいろいろなことが起こると波瀾万丈な人生と言えるだろう。しかし、その都度「スタート」を切る。そう、「終わったときは次の始まり」なのだ。諦めたらそこで終わるが、鈴愛の人生に終わりはない、って感じ。

このドラマのセリフはいつもポジティブから入る。
裕子の死を知らせるボクテ(志尊淳)の電話の声さえ。
ユーコちゃんみつかったって。だめだった。

鈴愛の娘かんちゃんが助けてもらった友人あかりちゃんに、高価なブローチ(鈴愛の祖母から母、そして鈴愛へと受け継いだもの)をあげよう思っていたとき、父親である涼ちゃん(間宮祥太朗)が言う。
かんちゃん、こんな高いものは、あかりちゃんももらえないと思うよ。
本物の宝石だ。車が買えるくらいだ。
「だめだよこんなものあげちゃ」ではなく、相手の気持ちの戸惑いを伝えてから、ブローチの価値を伝えた涼ちゃん。このセリフはvery good。かんちゃんの思いも大事に受けとめてあげている。ただ否定されれば、子どもの心は委縮していくだけだ。委縮した心は創造性を失っていく。こういった対応が子どもの創造性を開放し、思いやりや他を尊重できる心につながる想像力を育てるのだろう。そして自分を卑下することもない。ナイスフォローだと思う。
余談になるが、このところ短絡的反応の人が多いのは、想像力の欠如が大きな理由だろうと想像できるので、親から子へ伝える「心」というのは大事だ。
鈴愛に別れてくれと言ったとき、こいつはいいかげんなだけではなくサイコパス男だったのか、と怒りの感想をもらした私だが、このセリフはよかった。きっと良い映画をつくっていくだろうな、と思う。

ものすごくミーハー的に感想を述べると、
な~んだ、このドラマ結局、鈴愛をめぐる男たちの物語か、である。
鈴愛は振られてばかりだと自分で言うけれど、涼ちゃんからも、正人(中村倫也)くんからも、「やりなおさないか」のラブコールを受ける。もちろん、最後は律からの。
昔の民放トレンディドラマだったら、そういうことでは?律をめぐっての女同士の戦いもあったことだし。

純文学的に読むと、裕子の存在が際立つ。
実はユーコは、初登場のときから「死」へ向かってひた歩いていた、と私は感じている。
お金持ちのお嬢さまなのだが母親と折り合いが悪く、家を飛び出している。そう、裕子には、裕子自身として生きることができる「居場所」がなかった。裕子は常に自分の居るべきところ、居ることのできるところを探していた。それはすなわち、「自己存在の確認」であり、「生きがい」でもあるのだろう。
それが秋風塾、漫画家だったのだが、スズメ同様、才能の壁にぶち当たる。そのときのユーコの行動は極めて退廃的だ。いわゆる男漁りまでして、生気も失われている。だからなのか、スズメのエネルギーの強さに圧倒されつつも、それを認め、憧れ、応援する。自分にはないものを鈴愛に見い出した。鈴愛が特別な何か、突拍子もないことを成し遂げてくれることに自分の夢も生きる意欲も託した。
金持ちの実業家と結婚して何不自由のない生活だったと思うが、おそらくそこはかとない浮遊感をいつも抱いていたのではないか。
それは、いくつかのシーンから推測できる。
看護師としての悩みを鈴愛に打ち明けたあと、鈴愛は何かをやり遂げる人間だと言って応援する。
鈴愛が焼香に訪れた際に裕子の夫が語った思い出話。
裕子はね、鈴愛さんの話、よくしてました。何かっていうと、鈴愛はね鈴愛はね、って。そのときの裕子のうれしそうな顔ったら、なくって、こっちがヤキモチ焼いてしまうくらいでした。

ゆえに(ゆえにという接続詞が相応しい分からないが)、ユーコは最後、仙台の病院で身動きが取れずに逃げることのできない患者さんと運命をともにし、津波に身をゆだねる。そこが彼女の「居場所」だったのだ。
裕子にとって「特別な存在」の鈴愛。鈴愛はきっと何か特別なことを成し遂げてくれると裕子は信じているし、託している。そして、語弊はあるかもしれないが、この死に方、人生の選択が、裕子には「特別な事」だった。
裕子の観点からの小説があったとして、それが高校の教科書に載っていたら、きっとクラスであれこれ意見が飛び交うことだろう。しかも女子高で。

余談になるが、
「やすらぎの郷」(2017年テレビ朝日)では、裕子役の清野菜名は、「手を離したのは私」という脚本を書いて(実際に書いたのは恋人なのだが)老脚本家・菊村(石坂浩二)を訪ねるアザミを演じている。
これは、震災の津波にのまれながら、祖母の手を握っていた少女(アザミ)が、耐えきれずに自分が祖母の手を離してしまったのだ、と後悔して告白するという脚本。
こういったシンクロニシティというは、ドラマの役に意外と多い。
来年から再スタートするテレビ朝日の昼帯ドラマは「やすらぎの刻(とき) 道」だそうだ。「やすらぎの郷」でもう脚本は書かないと宣言していた菊村が手掛ける脚本、という設定。1年間続く長いドラマになるようだ。
その前半の主演が清野菜名。
昭和初期からはじまり、戦中、戦後、平成を描くこの作品の前半の主演は、清野菜名。戦後の高度成長期を経て現代にいたるまでの後半、いわば主人公の晩年を八千草薫が演じます。
(テレビ朝日サイトより)
2019年4月からの放送が楽しみだ。

感想はつきないが、
何と言ってもやはり、私にとっての最強のキャラクターは秋風羽織先生だ。
登場人物のなかで一番の偏屈者にみえるが、その実、一番のヒューマニストだ。
さらに、夢をつむぐ言葉、勇気を与える言葉、をたくさん知っている人。

もしかすると、秋風塾を描いた数週がこのドラマのピークであり、最大の感動であり、名場面の連続だったのかもしれない、と私はふと、しかし確信をもって思い返す。
夢と挫折と嫉妬。そこから誕生した愛。

ユーコも、秋風がまるごと受けとめてくれて、救われたと思う。苦しかったろうけど。
ユーコの部屋はまだ残っているのだろうか、いつでも帰って来られるようにとそのままにしてくれていた秋風先生。
そう考えると、まことに独善的な感想で申し訳ないが(いや、そもそも感想というのは独善的である)、もうひとりの主人公は浅葱裕子(あさぎゆうこ)だったのかもしれない。
「浅葱」とは
わずかに緑色を帯びた薄い青。また、青みをおびた薄い緑色。みずいろ、うすあお。
(「コトバンク」「広辞苑」より)
だそうだ。
「裕」には「ゆとり」「豊かで満ち足りている」「心がひろい」などの意味がある。
鈴愛が言っていた。
裕子の名前だれがつけたんかな、やっぱりおかあさんかな。
裕子が母親との仲を本当の意味で取り戻したのかどうかは分からない(仲直りしたようなシーンはあった)。
実家との仲が悪い女性は、結婚してくつった家庭が安堵の家、居場所となる。
後で紹介するが、スマホに録音されていたメッセージ。それは、息子と夫、そしてボクテと鈴愛へ宛てられていた。

鈴愛は裕子ちゃんにとってただの親友じゃない。特別な存在だったんだと思うんだ。
と律も言っていた。
そのあと、律が、自分は鈴愛を守るためにここにいる、と言ったとき、私はふとこう思った。
鈴愛のそばには、家族や律をはじめ友人たちがいて、幼い頃からずっと守ってくれている存在があった。40歳になった今でも、である。裕子が死んで立ち直れないほど落ち込んでいる鈴愛を、この人たちは心配し、見守っている。
裕子はどうだろう。見たところ夫も誠実そうな人できっと幸せな家庭なのだが、生育環境での一抹の寂しさが漂っている。
有形の幸福と無形の幸福、その半分半分を、裕子と鈴愛はわけあっていた、とも言えるのではないか。この二人は対照的でもあるのだ。
分身、とまでは言わないが、互いが持って生まれたものが全く違うという意味での合一、のような。
鈴愛と母親は仲良しで、裕子と母親は仲が悪い、という現象は一番象徴的かもしれない。

さて、このセリフを書きとめておかずして、「半分、青い。」を私のなかで終えることはできない。

秋風先生からの手紙。速達。
スズメ、律くん、元気だろうか?
短い手紙を書きます。
人生は希望と絶望の繰り返しです。
私なんか、そんなひどい人生でも、大した人生でもないのに、そう思います。
でも、人には、想像力があります。
夢見る力があります。
生きる力があります。
明日を、これからを、どんなにひどい今日からだって、夢見ることはできます。
希望を持つのは、その人の自由です。
もうダメだと思うか、
いや、行ける、先はきっと明るい
と、思うかは、
その人次第です。
律くんとスズメには、その強さがあると信じています。
秋風羽織

裕子の録音の声。遺言。
スズメ、スズメ生きろ!
最後に暑苦しいこと言って申し訳ないが、
私の分まで生きてくれ。
そして、何かを成し遂げてくれ。
それが、私の夢だ。
生きろ!スズメ……
あ、呼ばれてる。じゃあね。

鈴愛は裕子にとっての癒しであり、裕子は鈴愛にとっての応援団(ひとりだから者かな?)だった、のかもしれない。

鈴愛ちゃん、裕子ちゃん、バイバイ!



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