こんにちは。
よりみちねこです。

「アルジャーノンに花束を」TBSテレビドラマ。
2015年4月10に始まり、6月12日に最終話を迎えました。

ダニエル・キイスの小説が原作。
アメリカ、カナダなどで映画化され、
日本でも、ユースケ・サンタマリア主演で2002年に一度ドラマ化されているね。

今シーズンの主演は、山下智久。

よりみちねこは、正直、彼が好きではない。ごめんね。

そのうえ、この小説、15年ほど前だったか、
友人から借りて読んだが、いや、読もうとしたが、
途中で、気持ちが悪くなって読めなかった。

という理由から、このドラマを観ようかどうしようか、ちょっと迷った。
が、観た。毎週録画して。
なぜ?
今シーズンのドラマがあまりぱっとしないものが多く、
そのなかでは、まま、良い方かな、って感じだったから。

知的障害のある青年、白鳥咲人(しらとりさくと・山下智久)。
知能を飛躍的に向上させる薬を開発した研究所から、被験者に選ばれた。
アルジャーノンという名のネズミに投与し、その効果に自信を持っている研究者たち。

咲人は、天才となる。
しかし咲人は、その頭脳明晰さゆえに、これまでの自分自身と周囲の人間との関係を知り、自分はバカにされていたのだと、と考えてしまう。
と同時に、逆に、天才となった自分は、かつての友人知人たちを見下すようになる。

増上慢になることで不具合が起き、人間にとって本当に大切なものは何かを悟る、
という物語は世にたくさんある。
いや、それこそが実は、物語の存在理由かもしれない。
というか、人生というのは、そういうもの。成功者の伝記でもよく語られている。

「愛」が大きなテーマだったんだね、このドラマは。
最終話ではっきりと主人公の口から語られたのが良かった。

薬の副作用で、咲人は元の知能に戻ってしまう。そのときを目前にして、咲人は知る。
人々の愛がいかに大切なものであるか、を。

ドラマでは、おそらく原作ほど、咲人をいじめる様子は描かれていないのかな。
そのあたりの苦悩は、これでもかというほどには、よりみちねこは感じなかった。
ただ、「対等」という感覚を気にしている咲人が、頭が良くなれば、友人とも対等になれるし、
自分を捨てた母親も喜んでくれるのではないか、と咲人なりに思っている点が、なにげに苦悩であり、最大の望みだったのだろう。
だから「おりこう」になりたかった。

副作用の症状が現れたときに見える幻影。それは死んだ父親。
咲人の父親は、人のために生きた人。
それが咲人の母には苦痛だった。
母親はそれを自分勝手、と言う。家族のことよりも他人を優先するなんて。

余談だけど、よりみちねこの父親もそうだったから、よく分かる。
職業柄、しかたないけどね。
今は、立派な父だったと誇りに思ってるよ。
多くの人に感謝されていたのを知ることができたから。

咲人は、人の心の動きを読み取れるようになる。極めて論理的、客観的に。
しかし次第に、知能ばかり高くなって、心が育っていない自分の状態に気づく。
「心」「愛」の象徴、咲人のなかの「それ」が、父親の幻影なのだろう。

進むべきか、留まるべきか、
人は何度もその選択に悩まされる。
どちらを選択しても、後悔するような気がして。
逃げ出したくなるときもあるだろう。
けれど、そこにこそ、生きる意味が隠されている。


そして、ある女性を救う道を咲人は選ぶ。彼の父親と同じ道。

知能が低い人間が野蛮なわけではなく、
知能が高い人間が理性的なわけでもなく、
愛が・・・
愛に満たされた人は、人を傷つけない。
心ない人に時折りみせられる悪意には戸惑うこともある。
けれども、知能や知識ではなく、
本当に愛し愛された記憶のある人は・・・。
もしかしたら世界は、そんな単純なことで、
穏やかになるのかもしれません。
(誰もが)愛に包まれた世界なら。


素晴らしいセリフだね。脚本家に拍手。
そんな単純なことで世の中はきっと平和になる。
単純なことなのに・・・、みんなできずに彷徨ってる。
傷つけあってる。

マイケル・ジャクソンが亡くなったとき、
どこぞの霊能者類いの人が、
彼は愛を学ぶために生まれてきた、と発信してたけど、
彼だけじゃない、
人間はみんな、愛を学んでいる。
この地球という不自由な世界で、重たい肉体を引きずり、心にエゴを抱えながら。
そう、よりみちねこは思う。


主題歌「ローズ」(ベッド・ミドラー)は、どうでもいい。
よりみちねこは、BGMで流れるバッハが、やっぱりいい、と思う。
バッハは素晴らしいね。心に響く。格調高くなる。
・・・と思ったら、なんと、オリジナルバッハは「ゴルトベルク」だけで、
効果的に出てくるバロック/バッハ調の曲は、
千住明さんのオリジナルみたい。
「AGLフーガ」。
うまい、まるでバッハ。
思わずどの曲か、バッハのCDを探してしまった。でも、みつからない。
で、調べたら、番組オリジナル。
ピアノヴァージョンとオーケストラヴァージョンがある。
すっごくいい。短い曲だけど。
リピートしてずっと聴いていられそう。


アルジャーノンは死んで、
咲人は、元の咲人に戻る。優しい、人を和ませる力を持った青年に。
だた、そこにいるだけでいい。

アルジャーノンのお墓のある森は、
まるでおとぎ話の世界、景色。
咲人は、おとぎの国からやってきた天使なんだね。そして、
関わったすべての人たちに愛を残して、おとぎの国に帰っていったんだね。

そしてまた、戻ってきてくれた。

花屋をやめて、
「対等の友だち」と3人でハンバーガー屋さんを開店。
めでたし、めでたし。