あけましておめでとうございます。
よりみちねこです。

今年もよろしくお願いいたします。

新年、いかがお過ごしですか?
「相棒」スペシャルなど楽しまれたでしょうか?

2017年最初のよりみちドラマ評を書かせていただきました。


「富士ファミリー」
NHK
薬師丸ひろ子/片桐はいり/小泉今日子
脚本/木皿泉


昨年に引き続き、NHK新春ドラマスペシャル。

 出演者は、
「すいか」「Q10」(日本テレビ)「昨夜のカレー、明日のパン」(NHK)
の面々。
富士ファミリーならぬ木皿ファミリーとも言えようか。

芥川賞作家の羽田圭介がドラマデビューという異色配役。
羽田ファンである木皿サイドからのオファーらしい。
最近死んだ幽霊役。先輩幽霊のナスミ(小泉)とのやりとりが興味深い。

やっぱりいいなぁ、木皿ワールド。
昨年の「逃げるは恥だが役に立つ」「校閲ガール」ほどの刺激はないが、
88分のなかに、ぎゅっと物語と名言がつまっている。

今回の予言は、
鷹子(薬師丸)の昔の友人、キティ・トーヤマこと遠山霧子(YOU)という予言者の予言。
彼女が世界を変える100人に選ばれたという雑誌を目にし、昔の日記を取り出す鷹子。
「2016年12月31日、小国鷹子は人生を終える」と言われたと書いてあった。
百発百中の予言者。

ドラマを流れるキーワードは「ともだち」「信じる」「生まれ変わり」。

ばあちゃん(片桐)の前にナスミが現れそろそろ生まれ変わろうかなと言う。
じゃあ、会った時分かるようにと合言葉を決める、それが「おはぎちょうだい」

住み込みのアルバイトぷりお(東出昌大)も訳あり。
研究者だったが、教授の論文データ改ざんで、研究室は解体。

信じるってどういうことか?
何をどう信じるのか。

占い師の言葉を信じ切るのか?
百発百中なんてこの世にあるのか?
地べたにいる鷹子より飛行機に乗って出張にいく自分のほうが死ぬリスクは高い、と言う鷹子の夫(高橋克実)
世界の100人なんて、顔も見たことないヤツが決めたんだろう、と。

みんながそうしてる、みんながそう言ってる、みんなが決めた・・・、
どこのみんな、だろう。
幼稚園、学校、会社、世間・・・。
そんな疑問を投げかけてくる物語前半。

そんなもの信じる必要はない。
ちゃんとしたデータはあるのか?
何百年も信じられてきたことが新しい発見でひっくりかえることがある。
そもそも正しいとは何か?
と力説するぷりお。
しかし、そう言いながら、自分は教授を信じ続けたいんだ、と気づく。

新米幽霊(羽田)は大荷物を抱えて歩いている。
死んじゃうとたいていのものはいらなくなる、というナスミ。
全部捨てないと生まれ変われない。
自分で捨てるって苦しいよね。
一番苦しいのは・・・。

おまえなんか死んでしまえ、ならぬ
おまえなんかはやく生まれてしまえ~。
ナスミが新米幽霊に叫ぶ。


ナスミの遺影の前にいる孫。
人は何回もやり直せるんだよ
とばあちゃん。
新品の人間になれる魔法の言葉「おはぎちょうだい」
を孫に教えるばあちゃん。
どうせ私の言うことなんか信じないだろうと言うばあちゃんに、
「信じるよ」という孫。
これはばあちゃんにとっての魔法の言葉だった。


生まれて初めって買ったカメラを捨てられない新米幽霊。
「写真家だったんです。
なんにも成し遂げずに中途半端なまま死んでしまって、
ほんとにいいのかな、と」
「べつにいいんじゃない。
どこで死んだって、きっとその人にとっては中途半端なのよ。
だからどんな人生も全て正解よ」

とナスミに言われ、カメラを捨てて生まれ変わる新米幽霊。

ナスミが捨てられないものは「名札」。
これがすごい。
「すいかぐみ おぐになすみ」と書いてある。
「すいか」だって。
やりすぎ?
余談だけど、「すいか」は本当に名作ドラマだった。
小泉今日子は3億円を横領して逃げている信用金庫の行員役。
主演は小林聡美。片桐はいりは刑事。


最後、鷹子は世界的予言者遠山と再会。
34年前のあの予言はうそだった、と告白される。
いじわるだけで言ってしまった。呪いをかけてしまった、と。
遠山霧子と遊んじゃいけないと鷹子は母から言われていた、それを妹がうっかり言ってしまって・・・。
明るい顔だったけど、傷付いていたんだ。


必要だと思ってくれる人ができるとどんな呪いも解ける。
と確認し合う二人。


「呪い」。
「信じる」ことは「呪い」にもつながる。
それは、人から押し付けられた価値観かもしれないし、
「みんなが言ってる」「みんながやってる」かもしれない。
「有名な人が言ってるから」は疑わなかったりする。
自分で勝手に呪いをかけていることもある。
「何を信じるか」が、大事だ。
おなじかけるなら、
「呪い」ではなく「幸せの魔法」
にしたいものだ。

2016年冬期のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のなかでも
「呪い」は語られていた。
性別、年齢、仕事、生活などなどに対する
「思い込み」や「つくられた価値観」。

呪いを解いて生まれ変わろう。
それはほんのちょっとした出来事に気づくことだ。


「おはぎちょうだい」って言う人は、
みんな生まれ変わった人なんだよ。



ナスミはまだこちらにそのまま居残るようだ。



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