こんにちは。よりみちねこです。

「ひよっこ」
2017年4~9月NHK連続テレビ小説
有村架純/沢村一樹/木村佳乃/宮本信子/佐々木蔵之介/峯田和伸


色々言われている。
いい人しか出てこない。
主人公は何も考えていない。

朝ドラは、何か目標を持った女性が苦難困難を乗り越えて成功する、
というのが定番なのかもしれない。

苦難はある。
主人公・みね子(有村架純)の父・実(沢村一樹)がある日突然消息を絶つ。
茨城の田舎から東京へ出稼ぎに出ていた。
そこでみね子は、東京で就職することに決めた。
東京にいれば父を探す機会も増えるだろう、と。

ドラマ後半は、東京編。
すでに上京当時の工場はつぶれた、現在みね子は「すずふり亭」で働いている。
「すずふり亭」は、みね子の父・実が失踪前最後に立ち寄った赤坂の洋食屋。

第14週は、泣けた。
そしてロックだった!
今のところ、「ひよっこ」最高のエピソードだとよりみち的には思う。
なにしろ、大したメリハリもなく流れていくドラマ(?)だったので。

第14週エピソードの主役はみね子の叔父で父・実の弟、宗男(峯田和伸)

宗男は、ビートルズの大ファン。みね子が茨城にいるときから、ビートルズの話はしていた。
第13週「ビートルがやって来る」からこのエピソードは始まる。
みね子の元に電報が届く「ビートルズ ガ ヤッテクル」。

宗男が東京へ来た。
みね子も宗男のために抽選に応募したりがんばったが、武道館のチケットは手に入らなかった。
公演には行けなくても、とにかくビートルズの近くいられること、それが当時のファンには大切なことだったようだ。

宗男は、ちょっと変わった人物。いつも笑っている。
マッシュルームカットで、バイクの後ろにイギリスの国旗を掲げている。
こういう人がひとりいてくれると周囲は明るくなる、そんな親類のおじさん、だ。

背中に戦争の時に負った傷跡がある。
「いつも笑っていることにした」その理由は、みね子がもう少し大人になったら教えてあげると言っていた。
それがはからずも、今エピソードで明かされる。
なんとも壮絶で感慨深い。

ビートルズ公演の警備の人たちに配る弁当の注文を受けた「和菓子屋」の店主から手伝いを頼まれた「すずふり亭」「中華料理店」「あかね壮」の人々。
総出で赤飯べんとうを作る。
「すずふり亭」の息子で料理長の省吾(佐々木蔵之介)が宗男の様子を訝り、休憩中に尋ねる。
「宗男、おまえ戦争中どこにいた?」
(省吾さんは、重たい話をしっかりする人。前にも、自分がホテルで修行していたときのパワハラの連鎖について語った)
思いを決して答える宗男。
「陸軍で、ビルマにいました」
「ビルマってまさか、インパール作戦ってことか?」
「はい。生き残りです。仲間はほとんどみんな戦死しました」
「だったらおまえ・・・、ひどい戦いをした相手だよ、イギリスは」

ここでインパール作戦の説明ナレーション。
そして語られた宗男の戦争体験は壮絶なものだった。

「おれは、死ぬんだなぁ、と毎日思ってた。毎日、仲間が死んでいくからね。死ぬまで生きてんだなぁって、おれは思ってた」
話したくなかったらいいよ、と言う省吾に大丈夫ですと続ける宗男。
「ありがとうございます。悲しい話で終わんねぇからよ。心配すんな」
ある晩、偵察に出ていた宗男は、森の暗闇のなかでばったりとイギリス兵と出くわす。
「気が付いたらすぐ目の前に。おれも驚いたけど、向うも驚いた顔してた。お互い銃を構えてさ、動けなくて。おれも怖くてふるえてたけど。向うも同じだったんだろう。だんだん暗闇に慣れてきて、相手の顔が見えた」
靴墨で黒く塗っていたが、宗男と同じ年くらいの男だった。今のみね子くらいかな、と言ってみね子を見る。
「遠くから声が聞こえたんだ。向うの仲間だ。目の前のやつが仲間に何か言ったんだ。なんつったのかわかんねぇ。なんつったのかわかんねぇからよけい怖くってよ。
そしたら、そしたらな、そいつ、おれ見て、にっこり笑ったんだよ。笑ったの。そのまま仲間のいるとこさ走ってった。おれはそのままぼうっとしてて。いつまでもぼうっとしててよ。なぁんで笑ったんだろうってわかんなくってよ。わかんなくってさぁ。
でも、おれはあいつのおかげで死なずにすんだ。
おれな、悔しかったんだよ。おれは笑うことできなかったからなぁ。
だからよ、なんかあっても、拾った命だから、笑って生きようと決めたんだ。悔しかったからねぇ。
で、ビートルズだよ。ちきしょう。またイギリスかよって思ったけど。なんかおれは嬉しかったんだぁ」

あいつとビートルズは関係ないけど、おれはあいつのおかけで生きているけど、あいつもおれのおかげで生きてるって考え方もあるっぺ、と言う宗男。そして最後にこういう。
「だから、おれんなかで、ビートルズとあいつがごっちゃになって。だからなんか言いてんだ、ビートルズによ、おれは生きてっとう、てな。おれは笑って生きてっとう、おめぇも生きてっかぁ、笑ってっかぁ、てな、言いてんだ、叫びてんだ」

涙なしでは聞けない宗男の戦争体験。
ぜひ観てほしい。
よりみち空想だけど、
その若いイギリス兵
「どうした?なんかあったか?」とか仲間に聞かれて、
「いや、何もない」とかなんとか答えたのかな。
で、笑って立ち去った。

宗男を演じる峯田和伸がいい。
彼にしか演じられないと思えるほど。
彼の口から上記壮絶戦争体験を聞いてほしい。
機会があったら観てください。名シーン。

峯田は実際にロックバンドの人。
同じ岡田惠和脚本の「奇跡の人(NHK)」でも主演だった峯田。
この役も良かった。やっぱりロックの人、ロックの精神で奇跡を起こす。
岡田の要望で決まったらしい。

ビートルズと戦争をからめてくるとは、岡田脚本らしい。

よりみちねこも、あらためて知った。
そうだ。イギリスとも戦っていた日本。
このあたりを詳しく学ぶ機会はあまりない。
そもそも日本の戦争の真実は、隠されていることが多い。

「ひよっこ」のなかでも、
みね子をはじめとする若者たちは、すでに「戦争を知らない子供たち」。
驚愕と涙で宗男の話を聞く。
そういう意味でも「ひよっこ」なのか?

そうそう、ビートルズの来日、台風の影響で飛行機が10時間遅れての到着だったんだね。
はっぴを来て颯爽と降りてくる4人。
けっこう疲れていただろうに、
夜中の3時が、まるで8時かそこらのゴールデンタイムのように見える。

ビートルズも3日間の公演を終え、次の公演地フィリピンへと向かう。
そして、宗男も茨城へと帰っていった。

なんだか、寂しいね。
怒涛の如く過ぎ去った2週間だった。
楽しく愉快な、突飛だけど希望に満ちていた。


ドラマを楽しもう


追伸
このシーンの数年後、ジョン・レノンに共鳴するんだろうな、宗男さん。
で、ジョンが殺されたときはひどく悲しむんだろうな。
そこまで見たい。宗男さんが何て言ってくれるか。