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「未解決の女」テレビ朝日木曜夜9時
波瑠/鈴木京香


第2話

それにしても、巷間の評価とよりみちねこである私のドラマ評価は、毎シーズン、ことごとく違っていることに、いささかへこむ。
そういえば、私は子どものころ、作文などを書くと「変わっている」と言われていた。
が、けっこうよい評価を受けることも多かった。個性、と自負している、と自分を鼓舞する。

世間的に、矢代を演じる波瑠の評価が低いらしい。
無鉄砲で能天気な熱血刑事の役どころだと思うが、
「あさが来た」もそうだったが、波瑠は、こういう役もうまく演じることができる。
このドラマでもさらに演技に磨きがかかっているように、私には見えるし、高く評価する。
能天気な雰囲気がシーンの随所に表れていて、感心する。
原作では、この役は男性らしいのだが、鳴海をしっかりサポートするタイプなのかな?
私がすこしひっかかるとすれば、原作からすると主人公は鳴海の方だと思うのだが、いささか矢代のほうにスポットライトが当たってしまっている様子なのが否めないところだろうか。
脚本は大森美香。「あさが来た」の脚本家だ。
波瑠の使い方がうまい、と思う。

第1話では、捜査中、取り調べ中に、犯人を追いつめる矢代(波瑠)鳴海(鈴木)の「コナンくんスタイル」が愉快だったが、今話ではそれはなかった。このスタイルが定番になるのかと思いきや、そうではなかった。
今話では、外での捜査を嫌って地下に籠っていた鳴海を矢代が表へ連れ出す。

大手IT企業の社長・幸田(戸次重幸)の娘が誘拐され、1億円の身代金要求があった。
入院中の母親を見舞う途中で誘拐された娘・遥花は15歳。犯人からの電話口で遥花は「かもめ」と謎のメッセージを残した。
鳴海がかかわった12年前の未解決幼女誘拐事件でも、幼女が「かもめ」という言葉を残していた。
ショッピングモールで母親・坂下菜々美(高岡早紀)がほんの一瞬目を離したすきに娘・芽以の姿が消えた。犯人からの電話は一度きり。それ以降何の手がかりもなく未解決のまま。菜々美は娘を探し続け、離婚。
鳴海は事件を解決できなったことを悔やんでいる。

「正義のセ」第2話。「シグナル」第1・2話。「未解決の女」第1話そして今話。
母の我が子を思う気持ちがそれぞれに興味深く取り上げられている。

いなくなった我が子、殺された(死んでしまった)我が子、手放した我が子に対する母親の行動から伝わってくるのは、一貫して「愛護」。
以前こちらで、親の気持ちを描いた作品として「相棒」「クリミナル・マインド」の象徴的なエピソードを紹介し、比較して論考した。
これからもこのテーマは、注目する価値がありそうだ。

「未解決の女 第2話」では、両家族が、犯人であり被害者だ。
子どもが無邪気に育ての親を親と思ってしまうのは角田光代の小説「八日目の蝉」と同じだ。
親子の愛に血のつながりは関係ない、という無情な事実も突きつけられる。

私も前半で事件のカラクリは見通せたので、ネタバレをしてしまうが、
遥花は芽以である。
ショッピングモールで芽以を誘拐したのは、当時子供を失って意気消沈していた幸田の妻だった。
そのまま二人で芽以を遥花として溺愛し、育てていたのだった。

清掃作業員と働いている菜々美が、学校でみかけた腕にハート型の痣のある遥花。自分の娘だと疑い、確信し、そして誘拐した。
しかし、娘はもう自分の娘ではない、別人になっていると感じた遥花はひどく絶望した。

事件は解決したが、この後両方の親、そして娘は、どうなるんだろう、と単純に思わざるを得ない。
犯罪捜査ドラマなので、そこまで思いを致すこともないだろうが。
「八日目の蝉」では、元の親に返されたが、返されたあと娘は悩みのなかで成長していく。自分の本当の親を親と思えない。
「未解決の女」では被害者であった親まで罪を犯した。
いや、果たしてそれを罪と言うのかどうか。
犯人へは復讐だろうが、娘については奪還だ。
「相棒」の「聖戦」では、被害者の息子は亡くなっており子どもを取り返す行為はなく、単なる復讐だけだった。そこに命をかけることが生きがいになっている悲しい母親の姿が激しく描かれていた。


次回も楽しみだ。