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「崖っぷちホテル」日本テレビ
主演/戸田恵梨香 岩田剛典


こんなドラマよく見続けられるね、と人から言われながら、
ついに最終話まで見届けた。

初回を観たときは、なんだこれ?と思った。
第2話を我慢して観た。
そして第3話まで観ると慣れてきて、いや、それでも、なんかこう良質のドラマとは言い難い何かがあるんだよなぁ、エンターテインメントとしてもがちゃがちゃしてるというか、軽薄すぎるというか……

とはいえ、前にも書いたが、この手のドラマは好みのジャンル。
ということもあって見続けることができた。

すごく面白いドラマではないのだが、ナイスなセリフが散見されるのは注目だった。
それはスーパーポジティブ。

そして、最終話で確信した。
やはり、この、副支配人を買ってでた宇海(岩田)は、タロットカードの0番「愚者」だった。
これも前の記事で書いた。
タロットカードの「愚者」を見てください。
楽しそうに前へ進もうとしている。そこは「崖っぷち」。

ワクワクして、あらゆる出来事をポジティブに捉えながら、ホテル・グランデ・インブルサの崖っぷちを逆転させることに成功した宇海。

そして、夢を実現すると、次のワクワクへと身を翻して行ってしまう。
自由と言えば聞こえはいいが、気まぐれ、わがまま。

宇海は、桜井に言う。
「最高の場所で最高の人と夢が叶ったときに、これから私はどんなことにわくわくしていけばいいか、分からなくなってしまったんです。
夢が現実になってしまった怖さ。それを感じてしまったんです」
この場所を夢のままにしておくために、自分は外へ出て、夢のまま見続けたいと言う宇海。
「私はまた別の場所で新しい夢を見ないといけないと思ったんです。それは私自身のために。
私が出ていくことを許してください」

このセリフは、「愚者」の本領を巧みに見せてもらったように感じた。

「愚者」の魂は、夢を見続けないと死んでしまうのだろう。
ゆえに、場所を見つけて移っていく。
ポジティブに「渡り歩く」という身のこなしを、最高度に発展した「愚者」はできるのであろう。
中途半端に「愚者」を演じると、それこそ崖から転落してしまったり、同じ「渡り歩く」でも、成長し、成果を残すのではなく、「これもちがう、あれもちがう」と自己満足を求めることに汲々としてさ迷い歩く本気の「愚か者」になってしまう。

桜井総支配人(戸田)の次のセリフからもそれがよく分かる。
「宇海さんは、とてもわがままな方だと思います。あの人はずっとワクワクしていなければ生きていられない人です。それが生きがいであり、生きる理由でさえある人だと思います。
そんなわがままや要望に私たちはずっと振り回されてきました。
でも私は、そんな宇海さんがとっても好きです。あの人はいっつも私たちのことを考えて、私たちとお客様のために、わがままを言い続けてくださいました。その宇海さんが、はじめて自分のためのだけのわがままを言ったんです。自分自身が新しい夢を見なくてはいけない、と。私はその思いを尊重したいと思いました」

なんと桜井は、「愚者」宇海のよき理解者であることか。

「どうして私がわくわくした仕事ができないと思ったか。
私はホテルマンです。お客さまが第一です。なのに私、みなさんのことがお客さまより大好きになっちゃったんです。それは私にとって、最高にいやがらせです」

この、宇海の最後のセリフ。なかなか味わい深い。
仕事にせよ、仲間にせよ、好きになりすぎるとできなくなる、とはよく聞く。
宇海の場合は、仕事上の心持ちのルールとして、好きの比重の不具合ということなのだろう。いや、もしかしたら「ホテル・グランデ・インヴルサ」を去るための言い訳、だったのかもしれない。

ずっとワクワクしていなければ生きていられない人、
ときに周囲を振り回す人、
自由奔放でつかみどころのない人、
そんな人、みなさんの周辺にもいませんか?
もしかしたら、一発逆転ホームランを打ってくれる、打たせてくれるジョーカー「愚者」かもしれませよ。

私にとってもこのドラマは、占い師視点での評価逆転、となりました。