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「半分、青い。」
主演/永野芽郁


第70話~自覚するとき
デビューして3年の月日が流れた。
スズメ(永野)ユーコ(清野菜名)も、そしてボクテ(志尊淳)も、連載を持っている。
ボクテは超有名人に。

が、ユーコは連載打ち切りに。
スズメ、ボクテ、そして秋風先生(豊川悦司)も、ユーコを別の雑誌で引き受けてもらおうと画策するが……。
ユーコは結婚することを決断する。
結婚相手はお金持ち。海外から家具を輸入している。青山に高級マンション。
自分もインテリアコーディネーターの学校に通わせてもらう、と言うユーコ。

スズメ
「結婚、するの?漫画は?どうするの?」
ユーコ
「もう、私、疲れちゃった。漫画ってさ、ゼロからつくるじゃない、お話。
何を輸入するか決める方が、もう出来上がってるものから選ぶほうが、楽なんだ。ゼロから何かをつくるより。ずっと楽だと思う」

こんな仕事はもうやってられない。買った服着ないままに季節が変わる。
自分たちは架空のラブストーリーをつくるためにいくつの自分の恋を犠牲にしたんだ。
結局原稿に追われてばっかり。スケジュール帳は真っ白。
泣き叫ぶユーコ。
スズメ
「私は、真っ白な日が好きだ。白い日が嬉しい。何にもない日、ただ描けばいい。描ける」
ユーコ
「スズメ、それはオタクといっしょだ。引きこもりだ。結婚もできないし、子供も産めない。想像の世界の人になってしまう。漫画を描く機械だ。(略)」
スズメ
「ユーコ、機械じゃない。機械はみんな同じもんしかできん。漫画はその人それぞれ違う。
私はおしゃれをしなくてもいい。流行りの場所を知らなくてもいい。
だって、だってさ、漫画を描くって、物語をつくるって、人を感動させるって、人生を越えてる。世界は私のものだってきっと思える。私たちが、秋風先生のような漫画を描いた日にはきっとそう思える。ユーコ、がんばろう」

ユーコ
「今、逆にはっきり分かった気がした。私は、私のいるところはここじゃない。私はここにはいてはいけない」

だろうなぁ。これ、ユーコが、自分とスズメとの違いを明らかに自覚した瞬間だ。
とても象徴的なシーンとなった。
ゼロから何かを生み出すという苦しみ。
そして、描くこと以外に何もしなくてもいいという真っ白な日があることの喜び。
どちらも創作者なら誰もが抱いたことのある2種類の感覚ではないか。
ユーコの立場で物語に入っていると、自分を励ましてくれているであろうスズメのセリフが、
タロットカードの「塔」のごとく、大きな稲妻で脳天に落ちてくる。
いや、うすうす分かっていたことなのだろう。
例えば、クラスメートといっしょに走っている持久走。自分は一生懸命走っているつもりでもクラスメートがどんどん先へ行く感覚。何かが違う。
ユーコは、漫画家をやめる決意のために、あれこれ理由をつけていたが、それは表層的な言い訳にすぎない。本心は「ここは自分の居るべきところではない」。

そして、結婚してやめていくユーコに、秋風は言う。
家にもどらないのなら、ここから送らせてほしい、お嫁に行けばいい、と。
秋風羽織はいったい何者なんだ!

第71話~自分の居場所
結婚式当日。先生はもっとユーコを引きとめると思っていた、と言うスズメに秋風は語る。
「彼女が求めているのは、居場所、だと思ったんだ。家に居場所がなかった。そしてここにやってきた。漫画ももちろん描けたが、そうでなくても良かったんだ。
私は娘を送り出すような気分だ。彼女が幸せになってくれたらそれでいい」


う~ん、なんとも唸ってしまうセリフだ。
秋風先生は心理カウンセラーか心療内科医か?
親との関係が良くなく、いや、悪く、家に居場所のない人は意外と多い。

私事の余談になるが、
私の占いの相談者さんにもユーコのような人はけっこういる。
お金に余裕があれば家を出るのが一番いい。
しかし、生活費の負担は大変だ。そんなときはなんとか乗り切る心構えをお伝えする。
女性の場合、折り合いの悪い家族と離れる一番いい方法は結婚。
自分の家族をつくることだ。イコール、そこが自分の「居場所」になる。
ユーコの気持ちはよく分かる。

ユーコの仕事場。そこを使いたいと言っている漫画家がいる。
秋風
「いや、あそこはあのままにしておこう、せめてしばらくは」
弟子の漫画家
「いつユーコさんが帰って来てもいいように、ですよね」
秋風
「いや、まあ、そんなことはあってはいけないし、ないんだろうが。
帰る場所があれば、小宮も出て行きやすい」


ユーコさん、よかったね。ご両親ではなくても、
こうして、あなたのことを愛情深く思いやってくれる人がいてくれて。
秋風先生はユーコのよき理解者だったんだ。
どういう経緯で、ユーコは秋風の元へ来ることになったのかな?

「帰る場所」という意味では、スズメには実家がある。

「居場所」と「帰る場所」。
これは、人にとって、大人になってからも、必要な「安心感」なのかもしれない。
タロットカードで言うと「ワンド4」
これがあることで、人は大きく羽ばたける。

このあとシナリオは、スズメの実家の話に移り、スズメが帰郷する。
スズメの「帰る場所」「帰れる場所」だ。

ちょっと心配なのは、「居場所」を求めているユーコ。
秋風先生が言うように、漫画でなくてもよかったんだとしたら、
結婚先でも、あれ?ここも違う、と思ったりしないか。
それとも、上記の秋風のセリフは、彼女の居場所は漫画でなくてもよかったんだから、結婚という居場所を見つけて選択した彼女を祝福してあげよう、なのか。
さらに、
もしかしたら、ユーコは産みの苦しみから逃げているだけなのだったとしたら、結婚先でも何かの拍子に辛くなって、ここに居るべきじゃないとまた逃げてしまう可能性が大きいかも、と推測してしまう。

ユーコの場合、合理的な性質みたいなので、ひとつふたつ別世界の経験を積み重ねてから、舞い戻ってきてもいいような気もするが。
そもそも才能あるのだし。
スズメと律の恋の行方より、そっちのほうが気になったりしている。

最後に、
スズメへ向けてのこのユーコのセリフもナイスだった。
「きみ、がんばれよ。漫画。私の分までとは言わない。私の人生は私のもの。スズメの人生はスズメのもの。みんな自分の分しかがんばれない。
でも、スズメは私と熱量が違う。私はスズメになれなかった。
ずっと思ってた。スズメはきっと成功する。みんなの憧れるものをきっとつくる。
バイバイ、スズメ」

「私の分までがんばって」とか「あなたの分までがんばるね」とは、
さまざまな場面で聞く。
確かに、みんな自分の分しかがんばれない。
「私の分まで」「あなたの分まで」は、いささか重たい意志表明かもしれない。
自分を鼓舞するだったり、応援だったり、励みにもなるかもしれないが、
一方で負け惜しみだったりするかもしれない。
あるいは謙虚さの表れかもしれない。

「熱量が違う」という発見は「才能」云々以上にこたえる。
そういう意味でも、ユーコにとって自分の「居場所」であればよかったのであり、「居場所」よりも先に「漫画」があったのではなかったのだろう、と想像できる。