よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2016年03月

こんにちは。よりみちねこです。

さて、冬シーズンのドラマが終わり、
春ドラマスタートを待つばかりとなったにゃ 
世間もいよいよ春。桜も開花した。

今期、よりみち 大賞は、
「わたしを離さないで」TBS
綾瀬はるか/三浦春馬/水川あさみ
これについては、いっぱい記事を書いてるので、
そちらで読んでね。
深い話だ。
人生、夢。感情って?人権て?命と愛が、特殊な環境設定のなかで語られる。
いやしかし、それは決して、特殊なことではない。普遍であり、未来予見。
視聴率は良くなかったようだが、俳優たちはそれに一喜一憂しないほうがいい。
ぜひ、DVDなどでの視聴をお薦めする。

他のドラマを簡単に述べておく。
「ナオミとカナコ」フジテレビ
悪くなかった。DV旦那を、親友といっしょに殺して自由を獲得するストーリー。
広末涼子内田有紀のコンビが良かった。
二人を助ける中国人役の高畑淳子の演技が力強い。
DV夫・達夫とDV夫にそっくりな中国人男性の二役を佐藤隆太
二人を追いつめる 達夫の姉に吉田羊。迫真の演技だった。
最後、小説では、ぎりぎりのところで出国できて、二人は上海へ向かう、らしいのだが、
ドラマでは、一応出国手続きは取ったけど、
達夫の姉の笑みのショットもあって、
無事逃げおおせたのかはっきりさせないまま終わる。
まあ、一年後、幸せに暮らしてます、みたいなシーンがあっても、
変、か。
殺人犯なんだものね。

「フラジャイル」フジテレビ
長瀬智也/武井咲/野村周平
人の命と医療。病理医の立場からよく描かれていたと思う。
最終話では製薬会社とのからみも鬼気迫っていた。
こちらでも記事にしているが、
第5話の死を覚悟した青年の夢の物語が素晴らしかった。
この一話だけでも、このドラマの存在意義があると言えるほど。

「とうさんと呼ばせて」フジテレビ
蓮佛美沙子/遠藤憲一
これは、どたばたホームコメディとしてちょっと期待したが、
面白くなかった。

一方
「家族ノカタチ」TBS
香取慎吾/上野樹里/西田敏行
は、良かった。面白かった。
ホームドラマの新しい形かもしれない。
全体のストーリーもよくまとまっていた、と思う。
家族の形はいろいろある。
ひとりの時間を大事にしたい主人公。
けれども、人と人のつながりの大切さも、同時に描いている。
いや、説教ではない。
最後は、ひとりの時間を大切にしつつ、家族も持ち、人々ともつながっている。
理想的な姿が描かれていた。
それぞれがそれぞれを尊重し合う、そして自分のできることをする。
気持ちのよい終わり方だった。
上野樹里が好印象。
香取慎吾もがんばっている!

「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」フジテレビ
有村架純/高良健吾
視聴率が月9最低、ということだ。
まあ、そうはいえ、最近は、ドラマを録画で観る人が多いので、
視聴率はあてにならないし、
視聴率とドラマの評価は一致しない。
よりみちねこが高評価しているドラマはいずれも視聴率が低い。
で、よりみち評として、
このドラマは、つまらなかった。なんなんだ、このドラマは。
社会派にも恋愛ドラマにもなりきれていない。
実験的だったのか?
途中で視聴中止しようかと思ったが、どう終わるのか興味があったので、観た。
仕事も、人間も、なんだか「悪」ばかりで、
震災後には、「良い人」だったはずの人まで「悪」に変わっていた。
でもって、乱暴なふるまいの人が、実は事情があって乱暴だった、みたいな、
え~、なにそれ?的な。
そんなにひどい仕事場ならやめちゃえば、と思うほど。
主人公の練(高良)と音(有村)だけは良い人、ってな設定なのかもしれない。
とくに練。
ところが、震災後、練もおかしな仕事をしていて、悪人になっていた。
音との再会で持ち直すけど・・・。
この練のやさしさ?みたいな性格が、結局はみんなを不幸にしていたような、
そんな風に見えた。
最後は、それぞれの鞘に収まるというハッピーエンドだった。
???
ドラマタイトルからすると、思い出して泣くんだから、
きっと、この二人は別れるんだろうな、と思っていたら、
なんのことはない、初回の出会いのときに戻って二人は結ばれる。
練という男の優柔不断が腹立たしいばかりのドラマだった。
それと泥沼のなかの蓮の花のようだった朝陽(西島隆弘)が、
物質的価値観に染まり切って、がっかりぽんだった。
人は変わるってことか。
いや、そうやって迷いながら生きてるってことか。
初回からそうだけど、どうも辻褄が合わない。あまりに唐突。
心的にも。
最終回のエピソードもそれほど多くの意味を持たない。
芳根京子を出すほどか?
ものすごく申し訳ないのだけれど、
俳優全員の印象が悪くなった。
いや、演技なんだけどね。
「問題のあるレストラン」(脚本・坂元裕二)は最高だったのに・・・。
出演者の皆さんが、次回作で良質の役に恵まれることを祈っています

「相棒」がつまらなくなった。
「スペシャリスト」は面白い。

他にもあるけど、今期はこれくらいで。

ドラマを楽しんでね




 

こんにちは。よりみちねこです。

日本映画専門チャンネルで、
「なぞの転校生」(NHK少年ドラマシリーズ 1975年 全9話)
を観た。

眉村卓のジュブナイルSF小説が原作。

昭和な映像。
セリフも演技もめちゃくちゃ昭和。

1998年に映画。
2014年にドラマ。
と繰り返し映像化されているようだが、そちらは見逃している。
機会があれば、観てみたい。

中学2年の岩田宏一(高野浩之)の住む団地の隣室になぞの少年が引っ越してきた。
彼は停電したエレベーターのなかで、奇妙な道具を使った。
翌日、宏一のクラスに転校生として姿を現した。山沢典夫(星野利晴)
宏一は、大いに興味関心を寄せる。
典夫は勉強もスポーツも万能。同時に転校してきた他の生徒たちもみな同様に優秀。
が、一方で繊細と恐怖を抱えている。
雨には核実験による放射能が混じっていると怯え、ジェット機の音から逃れる。
次第に東京中でおかしな人々の噂が広まり、マスコミが押しかけてくる。
宏一は、典夫たちを怪しみながらも理解しようとする。

なかなかよくできた少年ドラマ。
他の2作(ドラマ、映画)にくらべて、ほぼ原作に忠実らしい。

このドラマで訴えかけている事は、21世紀にも充分通じる。
というよりも、
当時の問題意識は無視されたまま、今に到ってしまったのだな、
ということがよく分かる。

典夫たちは別の世界、宇宙からやってきた。
次元ジプジー。
今で言うところのワンダラーだろうか。
自分たちの星が核戦争で全滅し、安住の平和な地を求めてさまよっている。
ようやく見つけた地球だったが、
この惑星もかなり汚染されていることに気づき、
また、地球人と馴染めないことも手伝って、
ドラマの最後、他惑星へと旅立っていくが、
そこでは先住民から差別(受け入れない)の攻撃を受け、
ボロボロに傷ついた典夫たちは、地球へと舞い戻ってくる。
差別問題は今も十二分にあるし、
とくに最近では難民問題もある。示唆に富む。

ジュブナイル系SFと言えば、突然やってきた異次元の恋心。
「時をかける少女」はまさにそこがテーマだった。
ヒロインが別世界(宇宙あるいは未来)から来た少年に恋をしてしまう、
というロマンも、この物語のなかで「なぞ」と同時に描かれている。
香川みどり(伊豆田依子)
宏一の幼なじみで、憧れの存在。
だが、典夫の登場で、事態は一変。
みどりはどんどん典夫に惹かれていく。
この設定からすると、
当初、典夫役が高野浩之だった、という話に頷ける。
星野利晴も端正な顔立ちだが、
ギリシャ彫刻を彷彿とさせる美少年、ということだと高野浩之のほうが合点がいく。
ゆえに、
みどりが典夫に惹かれていく過程、様子のインパクトが今ひとつのようによりみちねこには見える。
だが、星野の宇宙人役ははまっている。無表情、抑揚のないセリフ回しは、よく雰囲気を醸し出している。
けれども、ビジュアル的にやっぱり典夫は高野のほうが適役だったのではないかな、と思う。
高野でも、宇宙人役を難なくこなしただろうに。
途中、繊細に怯えたり、取り乱したりする場面、高野の演技で見てみたかった。
高野の典夫役のほうが、みどりがなぞの転校生にどんどん惹かれていく胸キュンと悲しい別れに、視聴者はより同調できたのではないか。
淡い恋心シーン的には、星野ではいささかの違和感が残る。色気的に?かな。

余談だが、
高野は子役時代「ウルトラセブン」に出演している。「円盤が来た」。
社会に馴染めないで天体望遠鏡ばかり毎晩覗いて現実逃避している青年に、他の星へ連れて行ってあげると誘いかけてくる異星人(地球人の子供の姿に偽装)。
これだけ美形なのに、トレンディー俳優にはならなかったんだなぁ。

奇しくも、現代の人類への警告にもなっているセリフをあげておく。

第3話で典夫は言う。
きみたちはバカだ。大バカだ。
この世界で一番恐ろしいのは何だい。
それは科学の行き過ぎによる人類の破滅じゃないか。
きみたちは、雨のなかの放射能がどんなに恐ろしいものか、考えたことがないのか。
排気ガスがいやなら、車をやめればいい。
放射能で大気が汚染されるなら、核実験をやめたらいいんだ。
でも、科学はそうやって進歩してきた、少しはがまんしないと、と言う宏一たち。
文明世界より原始世界のほうがましだ、と主張する典夫。
当時は、雨に注意しろ、と実際よく言われていた。

第6話 典夫が教室で。
本当の恐ろしさを知らないのはきみたちのほうだ。
原子爆弾だよ。水爆。ニュートロン爆弾。ミサイル。
そいつらがいつ爆発するか分からないこの地球に住んでいて、きみたちはよく平気でいられるものだよ。
このD15世界じゃ科学は確かに少し遅れている。
でも30年前に広島と長崎できみたちはあの恐ろしい放射能を浴びたはずじゃないか。
今この世界には、あのときの何百倍、何千倍の核爆弾があるんだ。
だったら核戦争が起きるのは、いずれ時間の問題なんだ。
僕たちも、この世界なら核戦争は起きないだろうと思っていたけど。
誰か核戦争の恐ろしさを知ってるか?知らないだろう、きみたちは。
ひらめく閃光。倒れる何百万の人々。苦しみながらコンベアの上を流れていく男女。刻一刻と迫ってくる死の灰。
血だ、焼けただれた裸だ。あの空に突っ立っているのは、桃色に光るきのこ雲だ。
助けてくれ、助けてくれ。逃げて、逃げて。

このセリフ、今なら原子力発電所も含まれるな。
確かに、よく平気でいられるよね。
そんなにひどいことは起きない、と誰もが思っている(いた)んだろう。

最終回。典夫の父親のセリフ。再び地球に戻ってきて。
今振り返ってみると、私たちはたくさんの世界を見てきました。
この宇宙の広がりのなかには様々な世界があります。
しかし私たちは、もはや科学のない時代には住めません。
なぜなら、科学の成果による文明というものを知り、その便利さに慣れてしまっているからです。
たとえそれがエデンの園のような楽園でも、私たちは再びあの原始時代へ戻ることができるでしょうか。
しかし、私たちがここで考えなければならないのは、
行き過ぎた科学というものをもう一度自分自身の手に取り戻すことなんです。
核戦争という、最も愚劣で最も恐ろしいものをさけるためにも、
私たちは、あらゆる勇気と努力を、おしんではならないと思うんです。
公害や汚染、食料問題のことを考えると、この世界の未来もまっくらに見えるかもしれません。
でも、岩田君や香川さんたちがいるかぎり、この世界の未来は信じてもいいでしょう。
私たちジプシーも放浪の旅をやめて、この世界に永住する決心をしたんです。
私たちも皆さまのお世話になるいじょう、なんとかこの世界を住みよいものにしたい。

う~ん、ワンダラーたちは、こうやって地球に住み着いて、
なんとか平和な世界にしようと努力してくれているのかもしれないね。
この物語のなかの「なぞの人々」は、世界にちらばったようだ。
キミと隣にもいるかもしれない。
「宇宙人の魂を持つ人々」(徳間書店)によると、
次元ジプシー(ワンダラー)たちは、社会に馴染めないようだ。
そういう人、いない?

この「地球に馴染めない魂」という観点も、
今となっては、SFやスピリチュアルの世界ではよく示されている。

テーマ音楽にもなっている曲。
これは典夫たちの星の音楽だそうだが、
妙~な波動が漂う。
怖れと宇宙、のような。耳慣れるとクセになる。


このドラマから40年を経て、
科学は信じられないほど発達し、人間の感覚も変化している。
が、根本的問題は全く解決しておらず、
むしろ深くなり、そしてより表面化している。
さらに20年30年後、このドラマをどういう感性で観ることになるだろうか。

核戦争は体験したものにしか分からないからといって、
わざわざ体験しなくてもよいと思うけど、
みんなはどう?
いや、窮地に陥らないと分からない、ということか?


物わかりの良い、絵に描いたような両親と担任の先生。
ああ、昔のドラマって、こんな感じだったよな~。

担任教師役の岡田可愛。
演技うまかったんだにゃ


ドラマを楽しもう



 

こんにちは。よりみちねこです。

「僕の妻と結婚してください」NHKプレミアムドラマ
2月から3月にかけて再放送していた。

こんな面白いドラマがあったことに気づけてよかった。

余命半年と告げられた三村修治(内村光良)が、
自分が死んだあとの家族のことを考えて、
妻・彩子(木村多江)の再婚を思い立ち、婚活を始める。 

お笑いが大好きな修治はテレビ局でバラエティー番組をつくっていたが、
営業に回されていた。
 
とにかく人生には「笑い」が大事というのが修治のモットー。

脚本は、岡田恵和
舞台のような演出があるのも一興。
家のダイニングキッチン+リビング。出演者が入ってくると拍手が起こる。
(最初、何の音かな?と思ったが、すぐ理解できた)
ジオラマのような街の映像も趣深い。

死は怖い。
しかし、彩子を悲しませてはいけないと、修治は話さない。
医者から、ご家族に説明をしたいと言われても。
まずはやるべきことがある。

1人目の再婚相手の候補は彩子の中学時代の同級生で初恋の相手・沖(吉田栄作)
無理やり頼むとOKしてくれたが、
彩子に怪しまれて失敗。

2人目は、テレビ局のディレクター・立木(筧利夫)
修治といっしょにお笑い番組をつくってきた仲間。
こんな近くにいたんだ・・・。

すったもんだあった末に、
彩子は立木との再婚を受け入れる。

自分の死よりも、
後に残される家族の心配をする、
それをユーモアたっぷりに描いている、
すばらしい作品だ。

ほんとは悲しい。
本人も家族も友人も。

しかし、受けとめなければならない。
修治には、受けとめさせるだけの「真剣」がある。
愛する妻の婚活など、冗談ではできない。
愛するからこそのこの奇妙な行動なわけだ。


深刻なテーマを「笑い」で描く手法は、
「ライフ・イズ・ビューティフル」もそうだったけれど、
天才だ。
よりみちねこはそう思う。

昨日書いた「わたしを離さないで」も「死」と向き合うドラマでもあった。
特殊な環境という設定ではあったが。

よりみちねこは、もうすぐ死ぬとしたらいったい何をするかな?
と、この二つのドラマを堪能しながら、思考を巡らせていた。

誰かに会う?
行きたかったところに行く?
やりたかったことをやる?
夢を叶える?
おいしいものを食べる?
やけになる?

何もできない?

ただ卑屈になる?

それでも、一日一日を大切にするしかないのかもしれない。

それより、死ぬときが分かっていたほうが、そこまでの過ごし方を考えられていいかもしれない。
身辺整理もできるし。
捨てておきたいものを捨てなきゃね。

せめて穏やかな心持ちで死んでいきたい。

よく芸能人が亡くなって、友人たちが、
悔しい思いをしていると思う、なんて言ってるけど、
悔しい思いをしながら死にたくないよね。
というか、そんな思いを持ちながら死んでもらっても困る。
いや、もちろん、
思い半ばで亡くなった友人を悼む思いやり深い言葉だということは分かっている。

穏やかな心で逝きたい。

修治は、立木が持ってきた次に放送されるお笑い番組の映像、を見ながら亡くなった。
笑顔で。

よりみちねこも、それがいい。
好きなドラマとか映画とかを見ながら、穏やかに、天国な気持ちで、
あちらの世界へ旅立ちたい。
ので、すでに家族にもそのように伝えてある。
そう考えると、自宅で死にたいね。
今はたいていほとんどの人が病院で死ぬけど。
好きなものに囲まれて逝くのは、贅沢なのかもしれない。



うっちゃんの演技がいいにゃ
木村多江も好演。
息子・陽一郎役の伊澤柾樹も、父親を失う悲しみを押し殺した演技が泣けた。


ドラマを心に



 

こんにちは。よりみちねこです。

いよいよ最終話を迎えた。
「わたしを離さないで」TBS金曜ドラマ

重いドラマだった。
視聴率もよくなかったようだ。
けれども、よりみちねこのドラマ評を訪れてくれた人はけっこういた。
深く考えている人たちも多いのだにゃ、と思ってる。 

生まれてきてよかった。
そう思えることが何かあるのか?私たちに。

恭子(綾瀬はるか)友(とも・三浦春馬)

3度目の提供で、提供者の人生はたいてい終わる。

恭子と暮らし始めた友だったが、介護人をやめてほしいと頼む。
3度目で終わらないとき、動けない身体で次の提供まで生きながらえて、世話を掛けるのがイヤだという友。

ある夜、恭子は、陽光学苑で夢や希望を教えてくれた龍子先生(伊藤歩)と偶然出会う。
龍子は二人をサッカーの試合に誘う。

そこでサッカーをする子供に、「ひろき!」と応援する父親。
幼いとき、陽光から抜け出したあの「ひろき」から心臓の提供を受けた。
龍子は、提供者たちの権利を獲得するための運動をしていた。
そのなかで提供を受けた人たちへのインタビューを試みていた。
提供者を辿って、名前を伝えた。その名前を自分の子供につけたことを知って、
龍子は救われた、と言う。そこに感謝があることに。

そう思うしかないよね。
でも、何でも感謝があればいい、許されるってわけでもない、
そんなことをよりみちねこは感じてしまった。
恭子も友も、そんな感動話では救われないだろう、実際のところ。
どうしようもない、ことってもある。

生まれて来てくれてありがとう、と頭を下げる龍子。
「世界は僕たちが思ってるよりずっとずっと広い、って本当だったんですね、先生」
と明るく笑う友。
友はやっぱり優しい。先生を慰めている。

クローンによる提供で長すぎる人生を拒否する人も出て来ている、
と、美術教師だった山崎(甲本雅裕)に語る陽光の校長だった恵美子(麻生祐未)

医療技術が発達して、死ぬに死ねない人もいる昨今。
選択しろと言われても、迷うよね。
選択肢がなければ諦めもつく。

友は再び恭子を受け入れる。
隣に恭子がいてくれればいい、それで充分幸せだ。

ひとつだけ夢がかなっていた、と話す友。
おれ、ずっと恭子にもう一回会いたいなと思ってたんだよ。
それが、会うどころか、一緒に住んだりもできて。
夢はもうとっくに、叶えすぎるくらい叶えてたんだ。
恭子、おれ、生まれて来てよかったよ。
この部屋に恭子がいてよかったよ。
会えてよかった。
こんな終わり方ができてよかったよ。


離さないで。
わたしを離さないでよ。

泣きながら言う恭子。

そして提供の日。
今日、もし、3度目で友が終わらなかったら、私、終わりにしてあげてもいいよ。
友がそっちのほうがいいんだったら。
じゃあ、できるだけ終わりにするよ。そんなことしたくないでしょ。
平気よ、慣れてるから。


どっちだったんだろう。
もう友はいない。

恭子にはいつまでたっても提供通知が来ない。
友人たちもみんないなくなった。
ひとりになってしまった恭子。
バスケットにつめた思い出だけがいっぱいになる。

みんなを見送ってひとりになることほど寂しいことはないよね。
だったら、先に逝ったほうがいい。

のぞみが崎に行く恭子。
海岸に車椅子の恵美子がいた。
誰にも奪えないものを持っていてほしかったからバスケットを配った、と恵美子。
大事にしてくれていて嬉しい。
みんなの忘れ物を預かっているみたい、
と恭子。
これからうちに来ませんか?恵美子は恭子を誘う。

恭子は、今、恵美子にとっての光になったのかもしれない。

命は必ず終わる。
恭子は友の元へ行こうと入水しようとする。
が、川に捨てた友のサッカーボールが足元に。

こんなことってあるんだ。
こんなうそみたいなこと。


そうだ。
人生には、うそみたいなことがある。
それはときに試練かもしれない。
そして、ときにそれは奇跡。
人生は、「青い鳥」なのかな、と思う。
友が言っていた。
「夢はもうとっくに、叶えすぎるくらい叶えてたんだ」

恭子は、歩き始めた。
恵美子のところへ行ったのだろうか。
恭子は、恵美子の「青い鳥」になったのかな。


死と向き合うドラマは、
「僕の妻と結婚してください」(今期再放送)
とも重なるにゃ


ドラマを楽しもう

 

こんにちは。よりみちねこです。

冬期ドラマ、各局最終回を迎えつつあるにゃ

「わたしを離さないで」
TBS金曜夜10時)も、9話目。

そうだったのかぁ。
恵美子先生(麻生祐未)も、クローンだったとは。
父親が科学者で、ヨーロッパでクローン技術の開発に携わっていた。
そして、提供者を作ることに成功。
恵美子先生は母親のクローン。
悩んでいきついたのが教育。
父の遺産を使って、陽光学園を設立。
恵美子先生は、 クローンに教育を与え、優秀なクローンは介護者になり、さらに生き延びることができる、
そういう状況を夢みた。

1話2話で、絵を描かせるシーン 。
カルト教団の洗脳のように映っていたけど、
あれも、
あなたたちは天使で、尊いことをする尊い存在なんだ、
困っている人に、未来や希望、新しい人生を与える存在、天使なのです、
と教え込むことと同様、
切迫した環境のなかでの、せいいっぱいの愛情だったのだな。 

恭子(綾瀬はるか)友(とも・三浦春馬)が、
猶予を申し出るためにようやく見つけた恵美子先生の家で知ることになったのは、
上記の正体だった。
そして、猶予などというものはない、
というのが、二人につきつけられた答えだった。

もうどうにもできない。
人は一度手に入れたものを手放さない、手放すはずがない、
と恵美子先生。
つまり、提供者がいることで病魔の怖れを回避できる人間たち。
シビアな言葉だ。
これはなにも必ずいつでも手に入る臓器のことばかりではない。
いわゆる既得権益ってやつがそうだ。
政治家の椅子もそう。
手放さない。一度手に入れたものは。
そのためなら主義主張を翻すことだって厭わない。
そんな人間たちで、社会は成り立っているのか。
誰かを犠牲にしながら。
おかしいじゃないか、と声をあげる人たちは、欲望を手玉に取られて飼い慣らされ、
ときに脅されて抹殺されていく。

さて、よりみちねこが第9話で受け取ったメッセージは、
友のセリフ。二人の猶予は
だから、かなわなくってもしかたなくって、でも、追いかけるなら楽しもうっていうかさ。
夢って叶わなくてもいいんじゃないかな、って思うんだよ。


夢を楽しみながら絵がうまくなった友、
いちばんおどおどしていた友が、
実は、いちばんひょうひょうとしていたのかも。
夢(サッカー選手)を叶えたい思いは一番強かったかもしれないのに。

恭子は、図書室のある本の表紙に自分が子供のときに描いた絵が使われているの発見して、
その絵を持ち込んだ人と連絡を取りたいと出版社を訪れる。
本当に見つかるかどうか分からないと悩む恭子。
傍らで突然、恭子の顔がおもしろいとデッサンしだす友。
今やることかな?と恭子。
でも今できること、これしかないじゃない。
恭子はやることやって。オレのできることはこれしかないんだし。

友の返答は、シンプル。
今自分にできることをやるしかない!

猶予なんてない。
じゃあ、なんで絵には魂が宿るなんて教えたのか。
二人の素朴な疑問だ。

クローンも、普通に教育を与えれば普通に育つ、
魂はある、
と世間に知らせるつもりだった、
政治家や財界人に絵を寄贈したりして。

恵美子先生は語った。
絵は魂があることの証明だった、
けれど、深く分け入るためではない、

とも。

外の人たちは、提供者のことを魂がないと理解しているんだ、
と、恭子は気づく。
だからこそ平気で提供を受けることができるんだろうな。
逆に言えば、そう思い込むしかない。
でなければ、さすがに、健康な人間からの臓器提供を受けるわけにはいかない。
そこまで心が落ちぶれたら、地球は終わるよね。

自分が感じてきたのは魂というものではなかったのか、
恵美子先生に食い下がる恭子。
少しずつ変えようと思っていた恵美子先生。
そうか、陽光はつぶされたのか。

じゃあ、帰りますか。
猶予もないのに、いたってしかたないじゃない。

友はいさぎいい。
でも帰宅途中、激しく取り乱す。
当たり前だよね。
人間だも。

夢は持ってることに意味がある。
友が言った言葉を、恭子はかみしめる。
恵美子先生を探すのは楽しかった、と。
うまくいかなくて落ち込んだりもしたけど。

友の激しい怒りが、悲しい。
ガードレールを殴りつけて血を流す友に、
サッカーできなくなっちゃうよ、と恭子。
この恭子のセリフもまた、悲しい。

どうか誰か、もうこれ以上友を傷つけないでください。
希望を持ちつづけようとした友は、
誰よりもたくさん傷ついてきたんだから、
無理に無理を重ねて笑ってきたんだから。
どうか、誰か、光を。


絵を描くのがニガテで子どものころは逃げ回っていた友。
猶予のために、ずっとずっと描き続けて、ものすごく上手になった友。
夢を抱きながら描く絵、その最中はおそらく、
至福のときだったに違いない。

友は視聴者に教えてくれた、と思う。
クローンとかどうとかではなく、
希望、夢を抱いてそこへ向けて思いっきり突っ走るとき、
人は上達するんだ、ということを。

そしていよいよ友に3回目の提供要請が・・・。
来週、最終話。

三浦春馬の演技が秀逸だ。

余談だけど、綾瀬はるかと麻生祐未、
「仁」の咲さんと母上にゃ


ドラマを楽しもう

 

こんにちは。
よりみちねこです。

久しぶりのよりみちドラマ感想評


「わたしを 離さないで」(TBS金曜夜10時)もいよいよ佳境。
第8話。

人は、どんな理不尽な状況でも、運命を受け入れることができる?
いや、受け入れるしかない、のだろう。
クローンであり、洗脳教育を受けているとはいえ、
大人になった彼らは、完ぺきに閉鎖された世界にいるわけではない。
覚悟、というのは、いかなる時にも持つことができるようだ。
そこまで厳しい状況に追い込まれたことのないよりみちねこは、
いや、それでも、都度都度それなりにはあったが、
命をかけるほどのことは経験していない身としては、想像するばかりだ。
戦時中というのは、まさに覚悟の日々だったのだろうな。

美和が3つの臓器を同時提供することになる。
それは、死を意味する。
美和(水川あさみ)に振り回されて離れ離れになっていた友(とも・三浦春馬)恭子(綾瀬はるか)
美和の最後の悔悟によって、友と恭子は結ばれる。

美和は、とてもイヤな女だ。
陽光学園にいるときから、恭子の全てを奪いながら、恭子を縛り付けてきた。
しかし全ての嫌がらせは、恭子への嫉妬と憧れの感情からだった。友を奪ったのも。
恭子のようになりたかったけれど、どうしてもなれない。だったら恭子を自分のものにしよう。
そう決意して生きて来た美和。
それが生き甲斐になっていたのだろう。

最後の介護人に恭子を選び、友と恭子を会わせる。
二人で「猶予」を得てほしい、と。

良かった。
最後の最後に、美和が素直な気持ちになれて、
と思うよりみちねこだ。
美和の心の闇は、独占欲と孤独感、だったのだ。

手術室へ運ばれるストレッチャーの上で、恭子を求める美和。
「私を離さないで!」と。

恭子は思う。
あれは本当だった、と。
つまり、陽光で洗脳された「あなたがたは天使なのです」
恭子も美和に向かって言う。
天使なんだよ、誰かの役に立つんだよ、と。

ドラマを眺めている第三者たちは、
この事態が極めて異常であることを知っている。
社会問題だ。
いや、そういう社会、惑星もどこかにあるかもしれないし、
地球だって、そうなる日が来るかもしれない。
それを科学の進歩と呼ぶのか、はたまた魂の劣化と言うのかは別にしても。

でも、分かる。
この状況では「天使なのだ」と思うしかない。
登場人物と視聴者の間で共通した感情は、これだ。
最後の最後、切迫したなかで掛ける言葉は、
これしかないだろう。天使なんだ、と。
恵美子先生(麻生祐未)は、知っていたのだろう、生徒たちの断末魔の恐怖を。
自責の念から、だから「天使」と教えたのか。
ふとそう思った。
それとも、悪魔の偽善的慰めか?

でも、本気で命を差し出せる人はどれだけいるのか、
この無理やりつくられた「天使」という枠のなかで。
「聖人」の行為は尊い。
が、人間の感情は、複雑だ。
不条理と聖心。その間で揺れ動くことはないか?

それでも今の地球で一番尊い行いは「犠牲」なのか?

諦め?
あなたしかいない、と言われれば、それはヒーローなのか?

なんだか悲しくなってくる。

異常事態は、70年前にもあった。
NOと言えない状況。従うしかない。お国の為に命を差し出す。

「銀河鉄道の夜」でも、
友だちや他人を助けて死んでしまったカンパネッラや学校の先生たちは、
一番高い天界まで運ばれた。
それとこのTVドラマの状況は較べられはしないが。
少なくともカンパネッラには、バカなことをしたな、とは言わないだろう。

このドラマの登場人物たちは、自由と幸福、クローンや臓器提供について問い掛けてくる。
さらに、知っている人たちと知らない人たちの対照。

例えば、こんなことにも思いを致した。
今日本では、放射能のなかで仕事をしている人たちがいる。
危険なゴミもたくさんある。
「スタートレック・ヴォイジャー」には、病で死んでいくのを覚悟で汚染ゴミを処理する仕事をしている人たちがいる惑星が出てくる。給料はいい。そして、自分たちの仕事が、自分たちの星を美しく保つことに貢献している、と思っている。
しかし、その汚染ゴミは、宇宙を汚している。自分の星だけ綺麗ならそれでいいのか?これはまた別の視点になるので別の機会に。

つまり人の世では、どこかで誰かが犠牲になって、その上に豊かで幸福な生活を満喫している、という構図もあるのかもしれない。我々の気づかないどこかで。
さらに、気づかないどこかで、その犠牲のおかげで大儲けしている人たちもいるのだろう。
まだまだ野蛮な星なんだ。

今話、ぞっとしたのは、
恭子の子供時代そっくりの少女を、訪れた母校(陽光は廃校になりHOMEになっている)で見かける。やっぱりクローンなんだな。そして、無表情で覇気のない子どもたち。

さてさて、
ようやく結ばれた二人、友と恭子の行く末、
どうなるのかな。


ドラマを楽しもう








 

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