よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2016年12月

こんにちは。よりみちねこです。


「三ツ星シェフ」も「家政夫のミタゾノ」も面白かったけど、

やっぱり今期は
「逃げるは恥だが役に立つ」
通称「逃げ恥」
新垣結衣/星野源


見始めたときはまだ視聴率が10%くらいで、
よりみちねこが気に入るドラマはたいてい視聴率が低いので、
これもかぁ~、
と思っていたが、
なんと最終話は20%越え。

エンディングのダンスがずいぶんと評判になって、
続々と動画アップの人々。
ケネディー駐日大使まで。

さて、このドラマは、
「恋愛ドラマ」 「社会派ドラマ」の枠を超えている。
エンディングテーマ曲「恋」(星野源)の歌詞にもこうある。
夫婦を超えてゆけ
二人を超えてゆけ
一人を超えてゆけ

ごく普通に語るとコメディタッチの
「恋愛ドラマ」と思いきや「社会派ドラマ」だ、
そんな感じ。

そもそもが、
自称プロの独身男と
創造性豊かなところが小賢しく思われて仕事に上手く順応できない女
の出会いからはじまる。
二人の立場がすでに社会の昨今を反映している。

夫婦の形
子育て
離婚
女性と仕事
リストラ
若さと老い
多種多様な恋愛カップルの形(同性・年齢差)

雇用関係
最低賃金
仕事の意味
仕事をどう感じるか
仕事の対価は正当か
搾取されていないか
搾取していないか
主婦(家事)の給料
家事分担

夫婦も仕事も、好きならいいだろう、
だけでは成り立たない、
というのは大きい意味合いを持つ。

だからと言って、人生も仕事も
対価さえ十分ならOKかと言えば、
そうでもないだろう。
気持ちが伴わない事は、続かない。
精神衛生上よくないことはすでに心理学的にもつまり科学的にも証明されている。

だからと言って、現況では、理想を叶えるのにはまだ社会も人間も充分に成熟していない。
暗中模索中。
ゆえに、労働対価が十分なら、気持ちは超えることができるだろう。不十分よりは。

よりみちねこも、大昔、
ある仕事をするとき、
ボラティアと給与とどちらにしますか?
と尋ねられて、
給与を選んだことがありました。
その理由は、満員電車での通勤の疲労感が大きいだろうなと想像し、
こんなに大変なのに無給かぁ~、と思ってしまうのがイヤなので、
給与をいただくほうを選びました。
余談です。

働き方改革や家族のあり方を憲法で決めようとしている今まさに、
このドラマは問題提起をしてくれているようだ。

コメディ、笑い、の素晴らしさもあらためて教えてくれている。

全11話、各エピソードにそれぞれ視聴者の感じ入るところがあると思う。

よりみちねこがなかでも共感を覚えたのは、
第5話。
平匡(ひらまさ・星野)の親子関係。
何かあるのかなと思わせる伏線があったが、
子供のころの平匡の記憶違いと判明。
母親が父親との関係にがまんしているのでは、と
ずっと思っていたが、そうではなく、母も幸せだったのだな、
と気づく。
「僕にとっては最悪な思い出ですが、母にとっては生涯でいちばんおいしいお蕎麦だったそうです。
僕の知らない物語が他にもあるのかもしれない」

平匡の「地獄のピクニック」の思い出が変化した瞬間だった。
とはいえ、子供の彼にとっては、かなりきつい出来事だ。
そう思うと、様々な背景があるにせよ、
子供の心にトラウマをつくらないように大人は心掛けたいものだ、
と思いつつ、
なかなかそれも難しいものなのだな、と思う。
コメディのなかで描かれているゆえに、
柔らかいと同時によけいに物悲しい。
だって長い年月、彼の心のそれは地獄だったわけだから。

僕の知らない物語が他にもあるのかもしれない
このセリフは秀逸だ。
成長、拡大、尊重、理解のために必要な感覚であり問い掛けではないか、と思う。


みくり(新垣)もよかったけど、
ゆりちゃん(石田ゆり子)もよかった。
みくりのおばでキャリアウーマン。みくりを大変かわいがっている。
最終話では部長に昇進。
女性としての生き方、
「呪い」を超えてほしいと若い女性に話した内容も素晴らしい。


多様なテレビ番組のパロディーが入り込んで、
それも愉快で楽しい。
脚本と演出がvery goodだ、というのもあるようだ。

脚本家・野木亜希子は、新垣結衣の使い方がうまい。
「空飛ぶ広報室」「掟上今日子の備忘録」も新垣結衣主演。
主演は違うが今期春ドラマ「重版出来(主演・黒木華)」もよくできたドラマだった。
原作ものを上手に料理できる脚本家、とも言われているらしい。

星野源もはまり役をもらったのではないか、と思う。
代表作のひとつになるかも。
この役、原作マンガファンから高橋一生という要望もあったようだが、
むしろ星野源でよかったかもしれない。

不思議なことに、良質のドラマというのは、
各々の配役が俳優たちにぴたりとはまっていることが多い。


生きていくのはめんどうだ。
だからこそ心の満足は大切なのかもしれない。


キミが一番心に響いたエピソード、セリフは?


ドラマを楽しもう




 

こんにちは。よりみちねこです。

昨夜「逃げ恥」も終わったけど、まだ観てないので、
来週書きます。


「砂の塔~知りすぎた隣人~」
菅野美穂/松嶋菜々子


とりあえず、最後まで観た。
サスペンスなので、観ることができた、とも言える。
犯人だれ?と。

そして、犯人があまりに意外な人だった、
という意味でどんでん返しは成功している。

最終回でいっきにそこへなだれ込んだ。

一貫して流れるテーマは、親と子。
身勝手な親。
そして親の子への愛。
そして最後、子の親への愛。
どんなに乱暴に扱われても、子供は親を慕うもの。
だからこそ・・・。

砂の塔(超高層マンション)の住人たちのプライドと、
二人の女性(菅野・松島)と犯人である男性の三者三様の愛の形を通して、
ある意味壮絶な親子のドラマだった。

そこに高層マンション住人たちのおきまりの極度ないじめもからんでいた。
が、これって、ここまで必要だったのかな、と思わないでもない。
このラストだと、「砂の塔」はあまり関係ないような印象もある。
「知りすぎた隣人」の「隣人」は、その通りなのだろうが(ご覧ください)。

ドラマのなかで学者のつくった心を病んだ人を癒すための曲、
というのがある。
それが劇伴として要所要所で流れる。
犯人逮捕の手がかりにもなるのだが、
確かにその曲、ちょっと特別な波動を持っている。

昔NHKで放送していた「なぞの転校生」。
そのオープニングテーマ曲。
ドラマなかで異星人が口笛で吹いたり、ピアノで弾いたりする。
そのメロディーとちょっと似ているな、と感じた。
曲調も波動も。 
このことを書きたいためにこのドラマ評を書きました、
と言っても過言ではない。


ドラマを楽しもう



こんにちは。よりみちねこです。

今週来週中に、今期冬ドラマも全て最終話を迎える。
一足先に、

 「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」
日本テレビ
石原さとみ/菅田将暉

が終了した。

ひと言!
面白かった。
原作マンガは読んだことはない。
が、充分楽しめたし、
おそらく脚本・演出とも、上出来、ではないか?

同じくマンガ原作で今期春ドラマ「重版出来」(TBS 主演・黒木華)
良かったが、
こちらもまたちがった雰囲気で盛り上がっている。
主演も、どちらもそれぞれに適役だったのではないか?
素晴らしく役を演じてくれるお二人の女優なので、
入れかわってもきっとナイスな主人公になるだろうが。

河野悦子は、本当はファッション誌の編集者を希望していたのだが、
校閲部に配属される。
不満足ながらも、持ち前の正義感と情熱で、すくすくと才能を発揮していく。

河野悦子は、一瞬、いやな女だ。
自己中心的で、言いたい放題、やりたい放題。そして騒がしい。
けれども彼女の意志は、誠実で公正の方向へと収まっていく。
よく見ると、「いいひと」なんだな。

自分のワクワクに従うことが、自ずと人のためにもなっている、
というのは、まったくもって理想的な姿だ。

健気に一生懸命な人、
そんな人は現実の世界では、言ってしまえば皆無だろう。
一生懸命になればなれるほど、視野は狭くなる。
けれども、限りなく近づくことはできるのかも、
と思わせてくれる河野悦子だ。
こんな風に成人した人間が育った環境はどんな環境だったのか、
家族や学校の先生、友人たちはどんな人たちだったのか、
そんなことを知りたくなった。

校閲という仕事は、そもそも誰か(主に著者)のためにする仕事だ。
しかも「地味」な裏方。好きでないとできない、感じもする。
そう考えると、ごく自然に利自即利他を体現できる、のかもしれない。

一話一話に、関わる本・作家との興味深いエピソードがあり、
さらに悦子と折原幸人(是永是之・作家でモデル)との恋の行方があり、
悦子の成長を通して校閲という仕事の細部も教えてくれるドラマ。

最終話、仕事と恋、悦子はどんな道を選ぶのか。
DVDなどでご覧ください。

いままで観てきた石原さとみの役柄で、
よりみちねこは、河野悦子が一番のはまり役では?とすら思ってしまう。
石原の魅力が素直に伝わってくる。


ドラマを楽しもう

 

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