よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2018年02月

よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

今日は2つのドラマを取り上げます。

「我が家の問題」第2話 仕事ができない夫に悩む妻
NHKBSプレミアム日曜夜10時
主演/水川あさみ ゲスト夫/大谷亮平


水川あさみが毎回違う家庭の違う妻を演じる、ファミリードラマ。
第2話は、仕事ができると思っていた夫が実は仕事ができない社員らしい、というドラマ。
仕事ができない夫系ドラマでは、昨年の夏ドラマ「ウチの夫は仕事ができない(日本テレビ)」があったが、こちらはかなりコメディだった。
いずれのドラマも、仕事ができないという評価の夫は「平和な人間」だ。

「我が家の問題第2話」の夫も、超平和な性質。
夫の妹情報によると、子供のころから「椅子取りゲーム」が苦手だった、と。
なるほどそれか、とよりみちねこは思った。
世間でよく言われている「パイの取り合い」ができない人。
譲る人、なんだ。
幸福はパイの取り合いではない、と言うけれど、現実社会は
いかに自分が自分のための椅子、パイを取るか、人に渡さないか、で動いている。
それに負けた人は成功しなかった人。収入の低い人。できない人。
でも、この第2話の夫は、ドラマでよく見かける夫とは違う。そんなことでくさったりうつになったりしない。
きわめてマイペース。
ただ、社内野球大会のためにバッティングは練習していた。健気。
同僚や上司もいじめたりするでもなく、平和なドラマだった。

よりみちねこは、「椅子取りゲーム」ばかりの、いかに誰かを出し抜くか的社会が変革してくれることを望んでやまない。


「隣の家族は青く見える」第5話
フジテレビ木曜夜10時
主演/深田恭子 夫/松山ケンイチ


こちらは佳境に入ってきて、一番ポジ平和な登場人物でゲイの青年・朔くん(北村匠海)に何やら不穏な過去が?を匂わせるシーンもあった。

にしても、このドラマは愛にあふれている。どうして視聴率が低いのか。

大器(松山)の妹、琴ちゃん(伊藤沙莉)が破水して、緊急帝王切開に立ち会うことになった奈々(深田)。
奈々は、ちょうど人工授精が着床せずに気落ちしているときだった。
それに気づいた義母(高畑淳子)が、もしかして奈々ちゃんは子供のことで辛い思いをしてるのか、と大器に尋ねる。
事情を知った義母は、それならそうと言ってくれたらせかしたりしなかったのに、と激しく後悔する。
良いシーンだ。義母が、自分がよかれと思ってしていたことが奈々を傷つけていたのではないか、プレッシャーになっていたのではないかと思い返す、思いやりの場面。高畑の演技も真に迫る。

このドラマによく出てくるのが
「説明すればわかる」「人は分からないから怖がったり、非難したりする」。
このシーンもその典型だ。
事情を知らないまま、知らせないまま過ごしていれば、誤解が誤解を生んで関係性が良好ではなくなってしまう、ということだってあり得るわけだ。
世の中そんなことだらけだと言っても過言ではない。
また、昔のドラマだったらその行き違いがドロドロ劇を生む、となるところだろう。
そんなのはもう見たくない。

ここのコーポラティブハウスの住人4家族も、家庭内と家庭間と、両方でそれぞれ隠し事(悩み)がある設定だ。それが徐々に明らかになっていく、その途次で、住人たちは様々思い、感じ、そしてそれぞれの環境への気づきと認識が「愛」に変わっていく、そんなドラマを展開してくれているのかな、と感じている。

人は、ときに奇異に見える言動に出会って拒否反応が起こるとき、その背景や理由を知ると「あ、そういう思いやりだったんだ」という愛の気づきをもらうことがある。
この4家族の人々も、そういった積み重ねが今起きていっているようだ。

そして、奈々のナイスなセリフ。
奈々はこう思うことにした、と言う。
「私は妊娠できないわけじゃない。まだ妊娠してないだけだ」
これは、どのような状況の人も使えるポジティブワード。
「妊娠」を自分の目標に入れ替えることができる。
「私は政治家になれないわけじゃない。まだ政治家になっていないだけだ」などなど。


今週はこの2ドラマから
「椅子取りゲーム」をやめて、
「互いの事情を知る」ことをすれば、
そこには「愛」と「平和」があるのかな、
というのがまとめです。

精神レベルの高いドラマだと思う。


よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

さて、視聴率というものを見てみますと、
よりみちねこが好んで視聴し、高評価をつけているドラマが、
のきなみ低視聴率。
すでに視聴をやめてしまった作品がほぼみな10%を越えています。

質と視聴率は比例していない、と言われていますし、
よりみちねこもそう思いますが、
ことごとく惨敗となりますと、いささかへこみます。

それでも、よりみちねこと同じような好みで、
そのドラマのファンだ、興味深く観ている、という視聴者が全国にいると思います。

その皆さまへ向けまして、
2月11日(日)「日テレアップDate!」で放送した「放送番組審議会」の模様、
「合評 水曜ドラマ/anone」からお伝えします。

番組評議会委員
牧村さとる、三宅弘、増田明美、井上秀一、半田正夫、らは
ぼろくそ批評でした。
みんなただただおもしろいものをもとめているのだぁ、と分かりました。
ところが、
その場にいなかった二人の委員
高橋源一郎と岡田惠和のコメントは全く違って、賞賛でした。
高橋源一郎
3回目までを観て感じるのは、やはり坂元さんらしさですね。
どこかでみた物語、既視感のあるストーリーではなく、ちょっとみたことのない違和感さえある断片、というのが坂元さんのオリジナル脚本の特徴だとしたら、この「anone」も典型だと思います。
エンターテイメントとして観る作品というより、考えさせる作品ではないでしょうか。
このような冒険心にあふれた作品をつくろうという考え方はすばらしいと思います。

岡田惠和
脚本の坂元氏に関しては、同士だと思っておりますし、リスペクトしかありません。ファンです。
時々メールで励ましあっています。
作風も捉え方も描き方も全然違うのですが、二人に共通しているのは、いつでも書いているのが地味な人間ドラマだなということ。
今回のドラマも1話2話と観させていただきましたが、見事だなと思いました。さらに名作が生まれたんだなと思います。
ですので、何も言うことなどありません。ただただじっくりと最後まで堪能させていただきます。


番組制作サイドからは、反省の弁もありましたが、
そこまで迎合して、今後は分かりやすく云々的な申し訳は必要なのだろうか、とふと思いました。

上記、高橋と岡田のコメントは、さすがだなと拍手。
よりみちねこが上手く表現できなかった賛辞を的確に表現してくれていて、「それそれ」と思わず頷かせてくれるコメントでした。
とくに、
ちょっとみたことのない違和感さえある断片
これが言いたかったのです、よりみちねこも。
この文言が読まれたとき、それだ!と思いました。
そして、

地味な人間ドラマ
これにつきるかもしれません。
人間たちのドラマは地味な断片のつながりですよね。つながらないこともりますが。
それらが折り重なっていく。幾重にも。
アラビアンナイトの箱物語みたいに。

こういった作品を「重たい」「分かりにくい」と感じる人が大半なのだな、ということが、高橋、岡田以外の委員たちのコメントであらためてよく分かりました。

しかしはたして本当に「重たい」「分かりにくい」のだろうか。
「面倒」なのではないだろうか。何が?「考える」ことが。そして「分かりたくない」のかも。
一生懸命説明したり語ろうとする人に向かって、そんなことどうでもいいじゃん、とか言う人よくいますよね。そこまでくると、「重たい」「分かりにくい」「分かりたくない」を通り越して「理解できない」ではないか、とさえ感じます。

ドラマの内容は、そのまま世間や自分自身、人生についての思考にからんでくる。逆にそうでなければ、ドラマではないと思います。古代ギリシャの時代から。
それらを放棄してしまったとき、放棄させられてしまったとき、
人間は隷従を好んでいくのだろうと「自発的隷従論」(ボエシ著)などを読んでいると、そう感じます。



よりみちねこのドラマカデミアヘようこそ!

「隣の家族は青く見える」フジテレビ木曜夜10時
第4話


このドラマは、多様な人々の思いやりと愛のドラマだ。

コーポラティブハウスの4家族がそれぞれ抱えもっている特有の問題、個性は、あまたある世間で食い違いがちな出来事を象徴している。

この4家族、それぞれのカップルも、個々人は個々人の価値観だったり常識だったりを持っている。
そのなかで、誰かの一言で気づきを得て自らの気持ちを変化させたり、あるいは誰かの否定的に見えていた行動が実は愛情からだったと気づいてはっとする、そんな優しいドラマだ。

今話では、泣けた。
ゲイの青年・青木朔(北村巧海)、通称サクちゃんに。

朔は、この集合住宅の設計者で住人の広瀬渉(眞島秀和)の恋人。ここへ越してきてからいっしょに住むことになったが、住人たちには朔のことを甥っ子と紹介している(主人公・五十嵐奈々(深田恭子)とその夫・大器(松山ケンイチ)はすでに知っている)。
ところがどこから漏れたのか、ある日、ハウスの門に広瀬がゲイであることを誹謗中傷する貼り紙がたくさん貼られていた。

広瀬は自分がゲイであることを隠して静かに暮らしたいと常々思っている。
受け止めてくれなくていいから、そっとしておいてほしい、と思うタイプ。
朔は子供のころから隠し事をしないタイプ。
自分の両親のことを「ごちごちの常識と古い価値観」に縛られた人だと言う広瀬。
今話を見ていて、こっそり暮らしたい、放っておいてほしいと願う広瀬もまた同様なのではないか、と思った。つまり「ごちごちの常識と古い価値観」で自分をも縛っているからこそ逃げたいわけだ。
その点、朔は自由奔放だ。どちらが絶対に正解だというわけではないが、
その朔の自由な心の優しさがよく表れているシーンがあった。

広瀬が帰宅するとハウスの門に一枚の貼り紙があった。
心のやさしいゲイカップルの家です。
どなたでもおいでください。
おいしいつまみがございます。
ワインも冷えてございます。

と書かれていた。
広瀬はまたかと怒って丸める、
それは僕が書いた、と言う朔。

え~、広瀬は分からなかったのぉ?
よりみちねこはすぐに分かった。朔がやったんだな、と。粋なやつだな、と。涙が出た。
「泣いた赤おに」だよね、これ。
心のやさしい鬼のうちです。
どなたでもおいでください。
おいしいお菓子がございます。
お茶も沸かしてございます。
という赤おにが書いた立て看板。

もうひとつ泣けたシーン。
自分の娘の誕生日会を住民会議の場して、広瀬と朔のことをやり玉にあげる小宮山深雪(真飛聖)。子供たちに説明できない、と怒り心頭。
みんな同じ人間なのに、堂々と暮らせる人とそうでない人がいるのはおかしい、と奈々が発言したあと、奈々の夫・大器に背後から抱きつく朔。驚いてその場を離れる深雪。
やはり驚いて問いただす広瀬に朔は言う。
感動しちゃったんだよ、奈々ちゃんに。だから本当は奈々ちゃんを抱きしめたいところなんだけど、でもそんなことしたら、奈々ちゃんを大好きな大さんが発狂しちゃうでしょう。だからかわりに大さんを抱きしめたの。
朔のこの気遣い。愛だなぁ、と思った。

でもこういう誤解を生む行動、思いやり行動は巷にけっこうあると思う。
誤解を生んで、仲たがいするなんてことは頻繁なんだろう。
本当は思いやりだったのが、喧嘩や敵視の原因になってしまって、誤解の解けないまま一生が終わるなんてことは普通にある。
広瀬は説明しないと分からないことはするな、と言うが、
朔は説明すれば分かるんだからいいじゃない、と言う。

言葉ひとつとっても、人間は生きてきた環境、フィールドによって受け取る意味合いが違ってくる。
ゆえに、言葉はつくさなければいけないのだろうが、「察する」ことができることが「思いやり」につながるのだろうと思う。
そして大きくは「世界平和」に。

さて、夫が失業中で意識高い系の奥様・深雪は、このドラマの最終話までに素直さを取り戻すことができるのだろうか。
自分の価値観に合わない人を「信じられない」人呼ばわりする人間はどこにでもいる。
彼女の心を頑なにしているこの「がちがちの常識と古い価値観」はどこから来ているのか、それも描かれるのかな?

それと、広瀬への誹謗中傷は「あの人」の仕業かな?



よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!


「FINAL CUT(ファイナルカット)」カンテレ(フジテレビ)火曜夜9時
第5話


これはなかなかすごかった。
復讐相手のテレビ局関係者たちを、隠し撮りで追いつめてきた中村慶介(亀梨和也)は、
ついに、その報道番組の人気司会者・百瀬塁(藤木直人)にたどり着き、脅しにかかった。
「事実を報じた」という百瀬に、「報じれば事実になる」と食ってかかる慶介。
百瀬はいよいよ怯えるかと思いきや、なんと「私には秘密があります」と神妙な面持ちで慶介のつくった秘密暴露映像を自分の番組冒頭に流し、そして、「これはフェイクです」とあっさり言ってのけた。

秘密を握られて脅迫されているときには、その秘密を秘密でなくすればいいわけだが、
これはさらに上手。暴露してから「フェイク」にするやり口。

そして百瀬は、さらにこれを近頃話題になっているフェイク報道問題につなげていく。

トランプ大統領の登場で、現実の世界もフェイクばやりだが、
こうなると、なにが本当のフェイクなのか、リテラシーどころの騒ぎではなくなりそうだ。

フェイクだけではなく、印象づくりにも余念がないマスコミ。
いや、マスコミは、真実を正直に伝えてくれればいいのだが、
それもままならない世の中だ。

真実とは何だろう?

このドラマの場合は、慶介の母の冤罪というはっきりした事実があるわけだが、
犯罪者かどうかだって、本人の自白でしか分からないこともあるし、目撃者がいたとしてもグルである場合だってあるのだし、と考えていくとどこにも辿り着けなくなる。

日々の生活のなかだって、おいしくもないのにまずいと言えなかったり、行きたくないのに行くと答えたり、たいていの日本人は大丈夫じゃないのに大丈夫と言う。
そういうのはフェイクと言わずに思いやり、というのだろうが。

さて、慶介はここから先、悪とどう対決していくのだろう。
楽しみだ。


「anone」日本テレビ水曜夜10時
第5話


疑似家族の部分が描かれるのかな、と思っていたが違った。
その辺りはあさっり。

寂しい4人が集まって、普通に食事をしたり寝たり起きたり歯磨きしたり。

生きるのはむずかしい、と青羽(小林聡美)が言うと、
生きるんじゃなくて暮らせばいい、と言う亜乃音(田中裕子)。

生きることと暮らすこと、どういう意味の違いを脚本家・坂元裕二はこめたのかな?
いろいろな意味にとれるようにも思うが。
生きるは哲学的で、暮らすは生活的。

今のこの世で生活し、生きていくにはお金が必要だ。
さて来週は、偽札づくりが復活するのかしないのか、
という展開になってきた。

お金問題とは別に、
家族というのは血のつながりとは関係ないのかもしれない、
とふと思わせてくれる「お帰りなさい」だった。

青羽(小林聡美)がハリカ(広瀬すず)に言う「お帰りなさい」がいい。
「かもめ食堂」のサチエ(小林聡美)の「いらっしゃい」を思い出した。


「ファイナルカット」も「anone」も、
「フェイク(偽物)」を描いているんだな。


余談ですが、
亀梨和也と阿部サダヲがとてもよく似ている、と思う。


よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!


「我が家の問題」NHKBSプレミアム日曜夜10時
全4回
水川あさみが4家族、4人の妻を演じる。


第1回「夫とUFOに悩む妻」
大変面白かった!

ドラマ評論家の古崎康成のツィートにこうあった。
奇想天外な話の体裁だが、実際には地に足付いた身近な話でほんのり温かさが残るドラマだった。
「東芝日曜劇場」が単発枠のままであればピッタリはまりそうな作品。のんびり楽しむのに好適。
全く同感。

「東芝日曜劇場」も、最近は連続ドラマになってヒットも飛ばしているが、そうか、昔は単発枠だったのですね。「時間ですよ」など連ドラに移行するものもあったようだが。
1993年から正式に連続ドラマ枠になったようだ。
東芝も良質なドラマにお金を出してくれていたのですね。

「夫とUFOに悩む妻」
妻・高木美奈子(水川あさみ)夫・達生(小泉孝太郎)は職場結婚。
美奈子は、現在専業主婦で二人の子供を育てている。
達生は、昨年課長に昇進して多忙の日々。
ある日、達生がUFOと遭遇したと言う。毎晩、遅い帰り道に水辺の公園で会っている、と美奈子に話す。
子供たちには、ナスカの地上絵は空から見てくれる人がいるから描いた、と力説。

美奈子は達生の様子をこっそり窺うようになる。
ある日、郵便物を発見。「全国UFO研究会」。こっそり開けてみると「関東地区セミナー・UFO研究報告会」のご案内だった。こっそり美奈子ももぐりこむ。
これはカルト教団だ。雰囲気がよく演出されている。よくある、こういう所。
達生は、その教祖的女性に質問する。そしてこう言う。
「彼らは現在の地球らしさを失わずに、宇宙の仲間入りを果たす方法をさがしてくれているんです。地球の進むべき道を示してくれる存在なんです」
が、その質問を受けて
「興味深いご意見ですが、どうやら来る場所をお間違えのようですね」と教祖。
信者たちも教祖に無礼だ、帰れ、と責め立てる。
このシーンは良かった。カルトに引きこまれないで、自分自身を持っている達生の様子がしっかり描かれていたと思う。
けれども、ここまで自律できているということは、達生は自分の体験に確実性があるということか?
その様子を見ていた美奈子は達生の「共感しあえる理解者がいない孤独」を感じ取って心を痛める。

針小棒大に考える自分の欠点を娘に指摘された美奈子。
「フリーズしたときは電源を落として再起動するの。最初に戻ってやり直し」という娘のアドバイス。
達生がはじめてUFOと遭遇したという日は、ほとんど眠らずに会社に行った日だった。
美奈子は事情を知るため、社員時代の同僚ちあき(田畑智子)に話を聞くことに。創業者のひ孫で能なしの役立たずで自慢話ばかりの部長(当時)が、他の部署の左遷先から戻ってきて担当役員になった。異例の人事異動。他の部署が反発する仕事を、文句を言わない達生に押し付けている。現在の部長は過労で入院中。
美奈子はショックを受ける。

夜、美奈子は宇宙人のコスチュームで、夫のいる公園へ。
美奈子宇宙人は叫ぶ。
「キミに重要なお告げがある。キミは今すぐ会社をやめなさい、やめてしばらく家でゆっくりやすみなさい」
「生活はどうする」
「なんとでもなります」

美奈子は夫が大事だから会社をやめて、と言う。
逃げるは恥だが役に立つ、だ。
イジメもそうだ。自殺するくらいなら学校に行かなくていい。
最近はこちらの方向で考える人が増えてきた。
達生は、UFOとの交信以外はいたって普通だが、逆に重症なのかもしれない。

無能で無謀な要求をして社員を困らせている上司という存在は、実はあちこちにいる。
昭和には今より多かったが、それをこういったひ孫が受けついでいれば、平成も同じだ。
平成も終わるが、そんな悪は次の世には引き継がれないでほしいものだ。
あ、そういうことか。
達生が何度か言っていた
「フォースの暗黒面を乗り越える」
って、どういうことか意味不明だったのだが、このことだったのか……な?

UFO、宇宙人と遭遇したと、自分を励ますために嘘をついていたとして、嘘でも言い続けているとそれを本当だと思い込んでしまうことが心の病かもしれない。

ドラマの最後、
月を横切るUFOを美奈子も見て、自分も疲れているのかな、とつぶやく。

達生は会社をやめたのだろうか?その後のことは描かれていない。

フリーズしたら再起動。
やめてゆっくり休む。
これは今の日本の社会に必要だ。
次第に広まるだろう。

「ねばならないことなどひとつもない」のだから、と
私が出会った宇宙人が言ってました…………



よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

前記事のつづきです。

「anone」
脚本は坂元裕二。
何を言わんとしているのかまったくわからない、というのが評論家たちの見解。
そうなんだぁ。
よりみちねこは、分からなくもない。
全体としてのテーマが見えてこない部分は確かにあるが、「カルテット」もそうだった。
その独特の世界のなかで、現実問題、社会問題を訴えかける。
坂元裕二作品には、よりみちねこも好きなものもあれば、あまり好きでなく評価できないものもある。
最後をどう描くかでよりみち評価も変わってしまうかもしれないが、「anone」は、好きなほうだ。
ひとつひとつのエピソードをひとつひとつ取り上げるように描かれていると感じている。
その様子を、他の人たちの人生を、過酷な状況で育ったネットカフェ住人のハリカ(広瀬すず)が見知っていくことで、おそらく心を成長させているのではないか、と。
でも、その時々の彼女の反応を見ていると、この子は元来優しいハートを持っているのだな、ということは分かる。それでもトラウマはあるだろうから。
ファンタジーすぎるという意見もあるが、
そもそもドラマはファンタジーだ。
ファンタジーが世界をつくる、と「ネバーエンディングストーリー」でエンデも語りかけていた。


「ファイナルカット」
復讐がしょぼすぎる、と評論家たちは口を揃えて言う。
むしろ同じカンテレのちょうど一年前に放送した「嘘の戦争」のほうが断然スケールが大きい、と。
確かに、テレビ局、しかもいち報道番組のなかだけに復讐対象が限られているが、「嘘の戦争」だって、一企業、一家族への復讐だったような。
よりみちねこは、報道という、身内話に切り込んでいるところも高く評価できるように感じるのだが。
報道を問うたドラマでよりみちねこが印象に残っているのは「美女か野獣か(松嶋菜々子・福山雅治/2003年フジテレビ)がある。こちらは復讐ものではないが、報道の正否を描いていくドラマだった。そこからすると、いささか陳腐?かもしれないが、このドラマはこれでいいような気がする。
一話一話関係者を追いつめるが罰して征伐するところまでしない、というところも視聴者の溜飲を下げない、ということだが、これは、弱みを握って手下として働かせようとしているからでは?
暴き方が「盗撮」に頼っているところがしょぼい原因でもあるということだが、確かにね、そこに隠しカメラがあるということをすでに悪事を暴かれた人たちは知っていてそのままにしてるわけだから、ちょっと解せない感じもするが、大物を釣り上げて真犯人を炙り出すのは、報道人としても見てみたいというところもあるのかもしれない。
その復讐をしているのが警察官だというところもおかしいというが、「アリスの棘」だって医者による病院内での復讐だったし、「魔王」は弁護士だった。しかも両者とも、復讐するために選んだ職業だ。

一度嫌悪してしまうと、あらゆる場面、状況、設定が悪く見えてしてしまうのかもしれない。
よりみちねこもそうだ。気を付けよう。
それでも、好き嫌いはあるので致し方ない。

ということで、視聴率も高くなく、たったひとつの番組内ではあるが、ドラマ評論家たちの批判にさらされている「海月姫」「隣の家族は青く見える」「anone」「ファイナルカット」は、よりみちねこは面白く視聴している。

どれも配役が良いと思う。
特に「海月姫」の瀬戸康史は、これまでの演じた役のなかで一番いいのではないか、と思うほど。
芳根京子も朝ドラのあと「小さな巨人」もあったが、「海月姫」で良い役をもらったのではないかと思う。コミカルな役を上手に演じている。

それから、よりみちねこは、ドラマを、役名とその人格で観るようにしている。
たとえば、倉下月海(芳根京子)といった具合。
さらに、物語を読み、そして考えるようにしている。
ドラマはファンタジー。




よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!


ドラマファンのドラマの楽しみ方は多種多少で、様々な視聴方法がある。
合わせる焦点によって、そのドラマが面白くなったりつまらなくなったりする。
単なる好き嫌いもある。
それらの間口が広いと視聴率は高くなるのかもしれないが、
視聴率の高さとドラマの質の高さは必ずしも一致しない。

ドラマの見方としては、
出演者、脚本家、原作、種類(恋愛・サスペンス……)、ドラマ(予告も含む)をまず観て面白かったら見る、視聴率が高いから見る、視聴率が低いから見ない、などなど。
もしかしたら内容を深く読み取るという見方をしている人は少ないのかもしれない。
よりみちねこは、その少数派なのかもしれないと、ようやく気付いた。

毎シーズン新ドラマが始まった時点で、ドラマについて放談する番組があるのだが、毎回楽しみに観ている。
けっこう鋭い指摘も多く、勉強になる。
当たり前だが、彼らの評価と一致するところと一致しないところが毎回ある。ところが今冬はことごとく一致しておらず、いささかショックを感じた。
よりみちねこが視聴をやめた「もみ消して冬」「きみが心に棲みついた」を高く評価している。
「きみが心に棲みついた」については、ひとりは高評価、もうひとりは今季ワーストとは言っていたが。「もみ消して冬」については、さらにもうひとりがそのドラマのつくり方についての評価をしながらも、自分はあまり好きではない、と言っていたが。

よりみちねこが高く評価している「海月姫」
これについては、ベテラン評論家が一押しドラマにあげていたが、目の付け所が違っていた。
あ、このドラマってそこを見るの?確かにフジテレビの月9だし?
つまり、「ドタバタはしているが、恋愛の構図がしっかり描かれているシンデレラストーリーだ」と。
そうか、それか、とちょっとがっかりしてしまった。いや、他人の意見に左右されるわけではないのだが。
たしかに、オタクでおしゃれもせず自己評価の低い女性が、男性のパワーできれいになっていく、しかもそこに三角関係が……という胸キュン物語なのかもしれない。原作もそうなのかもしれない。
が、そこに視点が合っていたら、よりみちねこはたぶん視聴をやめている。なぜならその手の単純な恋愛ドラマが全く好きではないからだ。
よりみち視点は、「男子禁制アパート天水館に暮らす5人のオタク乙女(尼~ず)たちの個性のすばらしさ」に、初回放送で合ってしまった。
ある評論家は、今これをやる意味が全く分からない、と言って、局側の背景を匂わせる発言までし、そしてさらに、今この時代にオタク女子の生態をコケにするっていうのが本当に受け入れられるのか、尼~ずのみなさんが同じように見える、などと評していた。
よりみち視点は違う。オタク女子の生態をコケにしているどころか、彼女たちの個性とその個別の能力の高さに目を見張る。いわゆる世にオタクとかニートとか言われて(コケにされて?)いる人たちも、実は繊細なだけで、つまりこの世的に打たれ弱かったり、ずうずうしくなかったりするだけで、能力、才能を適材適所で使えていないだけ、ということも多いのだろうと思う。映画「新・ゴジラ」でも、御用学者よりもオタクの人たちの方が能力が高く、危機を救ったのではなかったか?
なので、コケ扱いもされていないし、みんな同じにも見えないのです、よりみちねこには。
悪役がコミカルに描かれているのもいいし、良くない思いを抱いてしまったときに反省するところ(修が月海のことを勘違いし、気色悪いなどと思ってしまったこと)もいい。

よりみち高評価の「隣の家族は青く見える」
これも、妊活の焦点がぼやけてしまってもったいない、「コウノドリ」のようにもっと深掘りできたのに、深掘りできるテーマだ、という意見で一致していたが、そこなんだ、本当は?
よりみちねこは、十分に妊活の現状とか方法とかが分かって、へぇ~という発見も多い。そして、評論家たちが言っている、他の家族の問題も描くことで焦点がぼやける云々は、逆に良いと感じている。だからこそ良いと感じている。
同じ住宅に暮らす4家族がそれぞれに抱えている問題、生き方が主役の妊活夫婦とともに描かれているからこそ、見ごたえがある。
ある評論家によると、ネットのガールズチャンネルでトピックとしてあがってくるものばかりをぎゅっと詰め込みました、にすぎないそうだが、そうだったとしても、現実に多い出来事なのだと思うので低評価の要因になり得るのか。もうそういうテーマは飽きたよ、ということなのかな。
妊活のテーマは、ドラマでそこだけあまり深掘りされたことがないかもしれないから、その他のテーマは手垢がついている、ということなのだろうか。
不妊に悩む主人公・奈々が、義理の妹の妊娠を心から喜べなかったと正直に夫に語るところなど、今までにない心の吐露だと思う。これまでだと、そこで心を病んでドロドロにみたいなパターンが多く、それを面白がる視聴者、そして視聴率が上がる。

よりみちねこは、現実世界はいささかきな臭く、歪み、嘘がまかり通っているが、ドラマの世界は洗練されていって、ポジティブになって、次第に仮面がはがれていっているような気がしている。
ドラマというのは、世相を描くのみならず、世相を引っ張っていく役目もあるのではないか、と思う。

「海月姫」と「隣の家族は青く見える」の共通点は、
「多様性と尊重」の世界観を提示してくれているところだ。
あくまでも、よりみち視線だが。

つづく


よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

「anone」日本テレビ水曜夜10時
主演/広瀬すず

第4話

どうなるんだろう。
そう思いながら物語を追った。

視聴者として心をちょっとほっとさせたいと思いつつ、
きっと裏切られるにきまっている、
そんな心持ちで。

今話のスポットライトは青羽るい子(小林聡美)。
死に場所を探しているとき持本舵(阿部サダヲ)と出会ったるい子。
1000万円を亜乃音(田中裕子)から盗んで逃げたるい子。
謎の女性だったが、その謎が解ける。

るい子にだけ見えるアオバ(蒔田彩珠)は高校生。るい子の高校時代の制服を着ている。
アオバが視聴者に向けて、るい子の不満足人生を語ってくれた。
青羽るい子のアオバは、このアオバだったのだ。
野球をやりたくて中学で野球部に入部届を出すが、先生に言われる。マネージャーになりなさい、がんばればいつか野球選手と結婚できるよ、と。
「このころからすでに母の願いはたいてい叶わなかった」
高校2年のときバンドを組んだ。バンドマンの恋人をつくりたかったわけではなく、バンドマンになりたかったので。ところがある日メンバーの一人に押し倒された。そのとき妊娠した子がアオバ。るい子の身体が弱く、生まれる前にあの世に旅立った。
看護婦さんが生まれてくるはずだった子は女の子だったのよと教えてくれて、それからるい子のなかでアオバが実体化。アオバと名付けた。
社会人になり夢と希望に満ちあふれて誰よりも懸命に働いたが、出世していくのは男ばかり。ついに会社をやめて結婚する。
男の子が生まれた。が、幸福な家庭ではなかった。
「母の願いはいつもたいてい叶わない」

るい子の息子。どう育てばこんなサイコパスになるのか。
ストーリー展開から見えるのは、義理の母と夫の育て方。それともDNAなのか。
そんな息子でも、るい子には息子。
るい子の息子への愛が痛い。

るい子は50歳設定。
るい子の若い時代は、今よりもずっと男尊女卑の時代だ。
おそらくどの会社も、女性社員の給料は男性社員よりも低かった。
しかも給料があがらない。ボーナスも少ない。
ひどい時代だな。
今は、女性野球選手もいるし、女性の課長も部長もいる。
男女差別だけではなく、まだまださまざまな差別は克服できていないように思うが、それでも、平成の世は随分と変わった。

るい子が結婚した先の家では、誰かと話をするい子をおかしいと言っていた。
が、どちらがおかしいのか?とふと思う。
この家の様子はおかしい。息子(孫)のやりたいほうだいを助長する環境。
愛のかけらも見えない。
かなりのお金持ちのようだから、おそらく見栄だけで生きているのだろうと推測できる。
何がおかしくて、何がおかしくないのか、何が通常で何が異常なのか、
その基準はいったい誰が決めているのか。
るい子と結婚先の家庭のシーンを見て、ふとそんな思いが心をよぎった。

アオバは幽霊ではなく、るい子の心のなかの現象だったようだ。
るい子はアオバという存在なしには生きてこられなかったのかもしれない。
願いがいつもたいてい叶わないるい子。
昔からよく「日記に語りかける」と言うが、それと状況は似ているのかもしれない。
話は飛躍するが、それが今はブログになり、ツィッターになり、
人目につかないはずの心の声が、人目につくようになった。
いや、あえて人目につかせている。
良し悪しはあるが。

るい子は、アオバのいるところへ行くのか?
いや、もうちょっと生きてみることにした。
持本舵が生きてほしいと頼んだから?

るい子は正式に離婚し、持本とハリカ(広瀬すず)とともに、亜乃音のもとへいく。
盗んだ1000万円が盗まれてしまって返せないことを伝えに。
ちなみに、なぜるい子が1000万円を盗んだか、1000万円が必要だったかというと、離婚してどうやって生きていくのかと息子に冷たくあしらわれたから。息子を引き取っていっしょに暮らすにはお金が必要だ。お金さえあれば、息子が自分と行動をともにしてくれると思ったのだろう。
視聴者から見れば、こんなろくでもない息子なのに。
まあ、息子は合理的といえば合理的。だが、自分の息子にここまで言われては悲しすぎる。

さて、その1000万円はどこへいったのか?
そして、ハリカと亜乃音、るい子、持本はどんな関係を築いていくのか。
次週が楽しみだ。


このページのトップヘ