よりみちねこのドラマカデミア

よりみち視点でドラマをアカデミアするよ。

2018年07月

よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

「限界団地」東海テレビ(フジテレビ)オトナの土ドラ
全8話
佐野史郎/足立梨花/山崎樹範/朝加真由美/江波京子


何気に観はじめた6月のはじめ。
最終話のこの展開は予想していなかった。

団地愛を持つ老人、寺内(佐野)が両親を亡くした孫娘とともに戻ってきて、近所付き合いが希薄になった団地というコミュニティを立て直そう、とする物語なのかと思いきや、
怪しげな老女の影がちらつき、
あれ?寺内はあぶない人なのか?と初回から物語の魔法に引き込まれていった。

佐野史郎の演技力がすごい、こういった不気味なサイコパス的役柄は特にうまい、ということもあるのかもしれないが。

サイコパス、と書いた。
そうとしか言いようがない。
寺内自身の思いにかなわない人たち、あるいは邪魔をする人たちを、次々殺してきた、そして殺していく。
自分の思いの中心は、自分自身と自分の大切な人。今の一番の宝物は孫娘。彼女を守るためなら何でもする。孫の両親、つまり自分の息子夫婦を殺したのも寺内。
寺内なりの正義があるわけだ。

寺内は、子どものころ過ごした団地に戻ってきて、そこで孫娘(6歳)の母親に適任な女性を見つける。隣りの住人、桜井江理子(足立)。息子(6歳)がひとり。
江理子の夫は寺内を嫌って恐れていた。
しかし江理子は、夫の横暴な言葉に自信をなくしている、いわゆるパワハラを受けている女性。
そのことに気づいた寺内は、江理子の夫の浮気をつきとめ、浮気相手を死亡させて、夫が事情聴取を受けるという状況をつくりだして明らかにして、江理子と夫を引き離す。

途中、江理子も寺内をさまざま疑うが、洗脳されるようにして、寺内の孫娘の母親となることを引き受ける。

とはいえ、この先どうなるんだぁ?と思いつつ見続けていると、
なんと最後は、江理子は寺内を殺人犯として警察に差し出し、
そして、これまでの寺内の役割を江理子が引き継いでいくという様子を匂わせながら、
このドラマは終わる。

でもさ、江理子さん、よかったね。
寺内さんが自費出版してくれたおかげで、絵本を出版できて、今や売れっ子作家になっている。
絵本作家になりたかったのを諦めて、そのうえ夫から何もできないやつと罵倒されてきた江理子さん。
寺内さんは、孫娘のために必要な人を助けただけかもしれないけれど、
江理子さんの夢を叶えてくれた人にもなった。

寺内は、アメリカのテレビドラマ「ブラックリスト」のレディントンに少し似てるかな。
FBI捜査官の娘を守るためなら平気で人を殺す、元海軍軍人で国際的犯罪者で免責と引き換えに捜査協力者、情報提供者となっているレディントン。

サイコパスというのは、なんともあざやかに罪を犯す。

寺内が殺したり、追放した人々の大部分が、
善と悪で言えば、悪の側の人たちだ。
ゆえに、正義の味方なのかもしれないが……。

面白いドラマだった。

最近の深夜ドラマは、けっこうどの放送局もレベルが高い。



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「義母と娘のブルース」TBS火曜夜10時
主演/綾瀬はるか


ドラマの社会的役割というものに、その影響や次世代への牽引というものがある。
その観点から、「義母と娘のブルース」第3話の亜希子(綾瀬)のセリフが良かった。

PTAに参加することになった亜希子。
言うに及ばず「意地悪」がはびこっているのは当たり前。
中心的な人に付き従って、その言うことを聞かない人は無視したりとか。
PTAとか保護者とか、地域とか、狭い世界ほどそれが痛い、という体験をしたことのない人は、おそらく日本中探しても皆無だろう。
よほどの箱入り娘・息子か、世間知らずか鈍感かサイコパス、あるいは常に意地悪サイドにしかいたことのない人ならともかくも。

亜希子はPTAを廃止に追い込むという。
現在、PTAの有り方を問題視する人も多い。その役割はもう終わったのではないか、と。
すでに廃止しているところもあるが、保護者会など別の形で存続はしている。
というのはおそらく、このドラマでもあったが、入学式から運動会、卒業式と、親の手が必要なことは多々あるので。
最近ではとくに登下校の際の子どもの安全も配慮が必要だし、通学路の安全を見回ることも、先日の地震でのブロック塀事故などを踏まえると、親の声は必要だろうと思われる。

亜希子のセリフがナイスだった。
「私のママなら私が嫌われるようなことしないでよ」と、職員室に駆け込んでくる娘。

先生、子どもがこんな発想になってよいのでしょうか。
子どもは親が嫌われるようなことをしたら自分も嫌われると思っている。
親は子どもが嫌われることを恐れて、言葉をのみこみ、陰口で憂さを晴らす。
その背中を見て育った子供は思うでしょう。
長いものには巻かれればいい。強いやつには逆らうな。本当のことは陰で言うのが正しいんだ。だって大好きなお父さんとお母さんがそうやっていたんだから。
私事で恐縮ですが、私は大事なひとり娘にそんな背中を見せたくはありません。

このドラマへの私の評価は低いと、先日書いた。
第2話は途中で気が散ってしまったが、今話は面白かった。

とはいえ、やはり設定、慣れてはきたが…。
毎日新聞7月21日土曜日夕刊での
「7月の新ドラマ担当記者座談会(上)」で
「綾瀬の“腹芸”は、毎回でてくるならはやるかも」という発言の記者がいたが、
私は、これが一番いただけなかった。
これで子どもを楽しませようとする意味も分からないし、
そもそも、会社での付き合いでこんなことをしていたのか?部長が?
いや、もしかして部長になる前?
だとしたら、自発的セクハラではないか?
最近は、飲み会の席での無理やりの出し物さえ、強要、パワハラと言われるのに。
私には時代に逆行している絵面に見え、全く笑えなかった。
こんなことを強要される女子社員がいたら、と思うと……。
(ごめんなさい。ちゃんと見てなくて、その理由が正確に分かっていないかもしれません)
こういうのって「綾瀬はるかが云々!」となるので、視聴率には反映するのかもしれない。
でも、そこなのかな、と首を傾げる。このドラマ、シットコムじゃないですよね。

あと、何が違和感あるといって、
私は、竹野内豊がどうしてもニガテである。
まったく個人的な感想です。




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「健康で文化的な最低限度の生活」カンテレ(フジテレビ)火曜夜9時
脚本/矢島弘一 岸本鮎佳
吉岡里帆/井浦新/川栄李奈/山田裕貴/水上京香/内場勝則/徳永えり/田中圭/遠藤憲一


現実社会のなかで、生活保護が様々取り上げられている昨今。
利用させてもらえずに死んでいった人がいる反面、不正受給もある。
その不正受給をなくすためなのか、自分たちを鼓舞しようとしてか、おかしなグッズをつくったりして活動をする役所の人間たちもいるとニュースを賑わせていた。
私などは、不正を見抜けないケースワーカーのほうに問題あり、と思うのだが。
プロなのだから、寄り添うべきは寄り添い、取り締まるべきは取り締まる、という目を養ってほしいところだ、と思っている。

漫画原作。
よくできたドラマだと思う。
奇をてらっていない。つまり視聴率を取るための過剰な演出とか展開が、ない。今のところ。
かなり誠実な物語作りになっているように思う。
内容的に、奇をてらうようなものではないが。

東京都東区役所に就職した義経えみる(吉岡)。
配属先は生活課。新人ケースワーカーとしての仕事が始まる。
先輩ケースワーカー石橋(内場)の担当を引き継ぐことになったが、そのなかに、何かというと「死ぬ」アピールをしてくる利用者がいた。親類もあきれている。
第1話では、その利用者が実際に自死してしまう、というショッキングな経験を洗礼として受けることになった義経えみる。
同時に、阿久沢(遠藤)を、借金返済の過払いから救うことで生活保護から脱出させるという嬉しい仕事もできた。
第2話では、生活保護家庭での不正受給。高校生の息子がアルバイトをしていたが、それを申告していなかったがゆえに、えみるは、その分の返還請求をしなければならなくなる。
貧乏人は夢も持っちゃいけないのか、と卑屈になっている息子。
次週へ物語は持ち越されたが、どう解決していくのか。えみるの腕の見せ所だな。
正直なところ私は、はっきり言えないえみるも、ふてくさる息子も、なんとなく腹立たしかった。

えみるの気持ちがなんとなく分かる。
私も仕事柄、上手に助けてあげることができるときと、そうでないときがある。
そうでないと感じるときは、やはり心が痛むが、けれどもえみるといっしょで、明るい元気な顔を見せてくれる相談者さんに救われる。

他人の人生と関わる仕事だけに、どうしても情がからんでしまう。サイコパスでもないかぎり、完ぺきに割り切るのは難しい。
一方で、やはり「情」の部分がなければ、その仕事はAIにしてもらえばいいわけだ。基本的には、市民に寄り添わなければいけない仕事なのだろう、と思う。
未来には、国が、全ての国民の生活、収入を把握して、AIが困っている人を特定して適切な生活保護費を支給する、というような時代がくるのかもしれないが。そのほうが、合理的といえば合理的だ。

折しも、NHK「100分de名著」で「河合隼雄スペシャル」を放送していた。
河合もまた、クライアントと向き合ったあとにふらふらになっている自分がいたそうだ。個人的なレベルでその人をなんとかしようとしていたからだ、と気づき、仏教的精神から「非個人的関係」という関係性を見出すと、とても楽になった、ということだ。

河合の言うところの「非個人的関係」の本意は詳しく知り得ていないが、
人間的情とAIの中間、というように私は捉えさせてもらった。

私の知り合いにも、相談者さんのなかにも、生活保護を利用している人はいる。
その数は、実は想像をはるかに越えている、と言っても過言ではない。

生活保護の基準は厳しく、なかなか申請が通らないという話はよく聞くが、それでも条件さえかなっていれば意外とすんなり通るようだ。
なかには、どんな仕事でもしろとか、女性には身体を売れとか言う役所の人間もいるようだが(是枝監督がテレビの仕事をしていたときのドキュメンタリーが壮絶だった)、そういう人非人な公務員に会わない限り、適切な対応はしてくれそうだ、ということも、周囲の話からうかがえる。
しかし、役所の公務員のなかに、一定の割合で「奇妙な性質」の人間がいることも確かなので、助けを求めるときには、そういう手合いに出会わないことを祈るしかなさそうだ、ということも一方で思っている。


生活保護よりも、私はまず、
「ベーシックインカム」がこれからの格差社会の理想だと思っているひとりです。


出演者も精鋭ぞろい、と言っていいと思う。
井浦新は「アンナチュラル」よりぜんぜん良い。
ただ、こちらのドラマも朝ドラ頼りの観は否めない。
吉岡里帆「あさが来た」
川栄李奈「とと姉ちゃん」
内場勝則/徳永えり/水上京香/遠藤憲一「わろてんか」

今夏シーズンでは、この「朝ドラ」とのつながりをあちこちで書いているので、だんだん訳が分からなくなってきた、というのが本音。
いつもこんなだったかな?
今年の夏の暑さへの感想と似てきた。
まあ、それだけいい役者が「朝ドラ」で育っている、ということなのか。
それとも視聴率狙いなのか。

元生活保護利用者で現在は青柳円(徳永)が経営する定食屋で働いている阿久沢と義経えみるの、ほのぼのした絡み合いがこれからの楽しみでもある。
遠藤憲一、相変わらずいい味だしている。




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「この世界の片隅に」TBS日曜夜9時
原作/こうの史代
脚本/岡田惠和
音楽/久石 譲
松本穂香/松坂桃李/村上虹郎/伊藤沙莉/尾野真千子/伊藤蘭/二階堂ふみ/宮本信子/
古館佑太郎/榮倉奈々

2011年には日本テレビでドラマ化、2016年にはアニメ映画化された漫画原作。
アニメ映画は、のんがすず役ということもあってか、広報の面でいささか難があったようだが、じわじわと映画の良さが広まって、大ヒットとなった。世界各国でも上映されている。

アニメ映画も日本テレビのドラマも観た。
日本テレビでのスペシャルドラマでは、北川景子と小出恵介がすずと周作の夫婦役。小出はその後の不祥事で残念なのと、北川景子が、ぼ~っとしたすず役というのはちょっとミスキャストっぽくはある。
アニメ映画では、のんのずすが大変良かった。ぼ~っとした雰囲気が、もともとの“のん”の性質とも相俟ってすごく良かったと思う。

2018年TBSの夏ドラマでは、連続ドラマなので、スペシャルドラマや映画よりもより丁寧に多くを語ってくれるのだろうと思う。
「日曜劇場」は、最近刑事ものや医療もの、池井戸潤原作などが定番化しているが、今夏のヒューマン系ドラマは、これこそ「日曜劇場」の真骨頂と思わせる。

脚本が岡田惠和。劇伴が久石譲。
すでに、第2話から泣かせてくれます。

岡田ファミリーと言っていいのか分からないが、
松本穂香、伊藤沙莉、宮本信子、古館佑太郎は、朝ドラ「ひよっこ」の出演者。
それぞれ重要な役どころだった。

すずさん(松本)は、絵が上手でよく絵を描いているシーンが出てくるのだが、なぜか現代で言うところの「原爆ドーム」がとても印象的に出てくる。ここには岡田の強い思惑があるのだろうか。アニメでは「原爆ドーム」よりも「呉の軍港」のほうにより視線がいっていたように記憶している。

この物語は、戦争のさなかでの、普通の暮らしと幸福を淡々と描く、というか、そのように生きているすずさんの姿を描くことで人の生活と幸せを観る者に伝えて来る、という静かな迫力がある、と映画を観たときに感じた。
これを反戦映画と捉えるな、という感想を持つ人たちもいた。
確かに、おそらく、どの国にも、あれほど激しい戦争の最中にも、ごく普通に暮らしている人たちはいたのだろう。あるいは、それでも普通に暮らせるんだよ、という意見を持つ人もいるかもしれない。
が、配給や統率は、はやりどう良く見ても「幸福な人間の生活」とは思えない。
戦争が始まったらもう誰も逆らえない。
それゆえの平静を保ちながらの生活なのだと思う。そのように暮らすしかない。
もうひとつは、どんな状況のもとでも、人は喜怒哀楽を心に持っており、表すものだ、ということだ。ナチスのユダヤ人強制収容所をイタリアのコメディアンがユーモアを盛り込んで描いた映画「ライフ・イズ・ビューティフル」もそうだった。
ゆえに余計に、観る者の心に戦争の酷さと悲しさが募るのではあるが。

「静かに暮らすしかない」と「それでも幸せに暮らせるんだ」という複雑に入り組んだ「人間」ということを、私は「この世界の片隅に」に感じている。
ゆえに、あからさまないわゆる反戦物語とは思わないが、これを読み、観たあとに、だったら戦争なんてへっちゃらだ、とは思えない。
むしろ私は、逆に恐怖の深淵すら感じてしまう。

岡田らしい描き方も見どころかもしれないと期待している。
「泣くな、はらちゃん」でも「ひよっこ」でも、戦争や社会について何がしかのメッセージをぶっこんできた。

さらにこれは、すずさんと周作(松坂)の結婚してからの恋愛物語でもある。
そしてすずさんは、ぼ~っとしているかもしれないが、実はものすごく心が繊細でいろいろなことを考えている人。ネガをポジに変えることができるという不思議な能力を持っている人だ。と私は感じています。
おそらくそこが、そういうすずさんが、周作には必要な人だと感じさせてくれたのだろう。


現代の人間が二人出てくる。
この二人の立ち位置がまだ謎だ。



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「グッド・ドクター」フジテレビ木曜夜10時
脚本/徳永友一・大北はるか
山崎賢人/上野樹里/藤木直人/戸次重幸/中村ゆり/板尾創路/柄本明


韓国ドラマのリメイク。
2017年にはアメリカでもリメイクされたようだ。

どうかなぁ、とおそるおそる観た。
なぜなら、山崎賢人を私はあまり高く評価してこなかったので。
それでも「陸王」のあたりから、いい役者になるかも?と少し思い始めていたが、それでも、ああ、この役、山崎じゃなければなぁ、などと身勝手なドラマファン感想を抱き続けていた。
ある意味期待は裏切られている、今のところ。

山崎賢人は、自閉症(サヴァン症候群)の医師・新堂湊の役である。
なかなか上手い。
自閉症の医師、つまり他人とのコミュニケーション能力に難のある人間が医師、という設定。

自閉症の人間に医師の仕事ができるのか?というのは当たり前の疑問ではないだろうか。
医者というのは、患者との心の触れ合いが大事なのに、と思う。ドラマのなかでもそう言われていた。
皮肉なことに最近の医者は(昔からかもしれないが)、心療内科も含めて、マニュアル的で薬漬けという極めて唯物的診断と対応しかできないというのが良く聞く話だ。なぜそういう医師を批判するのかというと、病は気からというのが本当だという症例が多数あるからだ。それにはコミュニケーションが大事だ、というわけだ。

このドラマ、1話2話を視聴したが、一方で人の命を助けるということはこういうことだよね、ということも投げかけているように思った。

つまり、自閉症の新堂は、まず嘘がつけない。
たいていの医者、そして家族は、病人を思いやって嘘をつく。方便だ。
第1話ではまさにそれ。
子どもの病気が再発していることを、親はなかなか言い出せない。子どもが学校へ行くことを楽しみにしているからだ。それを医師も見守っている。
だが新堂は言ってしまう。
第2話でもそうだった。はっきりと言う。このままでは死んでしまう、と。
「助かりますか?」と尋ねられて「死にます」と直接的な表現で言う医者はまずいないだろう。
難しいとか、余命何年とか、いっしょにがんばりましょうとか……。
普通の人間には言えないことを率直に言ってくれる「スタートレック ヴォイジャー」のホログラムドクター、あるいはボーグのセブンオブナイン、「新スタートレック」のデータみたいだ。
そういう意味では、「義母と娘のブルース」の義母(綾瀬はるか)も同質なのかもしれない。

もうひとつ、同質がらみで言うと、
新堂先生は患者を助けることしか考えていない。
良い方向に解決するための方法を、頭脳、データを駆使して導き出す。
新堂先生はサヴァンなので、記憶力は抜群である。
さらに言うと、
つまりそれは「ヒーロー」の要素を多分に含んだキャタクラーだ。
このままだと死ぬけど助ける方法はある、と言う。

「人を助けたらなぜいけないのか」という素朴な疑問すら投げかけてくる新堂。
普通の人間はいわゆる「おとなの事情」で動く。それに慣れている人間どもは、新堂のそういった純朴な言葉を聞いて目覚めるという意味では、彼は「神様からの贈り物」かもしれない。

悪を犯そうとしている人も、圧倒的な善の前では怯むという(もちろん、根っからの悪魔もいるが)。例えればそんな感じかもしれない。

忖度という概念のもと、「良いことをする」「本当のことを言う」と出世コースからはじかれてしまうという公の世界の様子を私たちはここ数年見せられている。独裁的強権。
それゆえか、まっすぐな正直さは、気持ちがいい。

誰かを貶めようとか、自分の出世のためとか、そんな気持ちで動かない新堂。

あ、もちろんこのドラマ、ダークな存在もいます。その役を板尾が演じている。
板尾と山崎、これって朝ドラ「まれ」の親子役。

藤木直人演じる高山は、小児外科の優秀なドクター。新堂もそれをよく知っている。
高山は新堂に冷たいが、第2話では、新堂の診断が正しいことを認めた。
良からぬことを考えている人間ではなく、実は子どもたちを救おうという正義感に裏打ちされた人物のようだ。

新堂の指導をし、面倒をみる医師・瀬戸夏美は、上野樹里が演じる。
上野にはぴったりの役だ、と思う。

新堂の優秀さに気づいて力を貸してくれる看護師・橋口役の浜野謙太もいい味を出している。

戸次重幸が演じる間宮は、新堂に否定的でいわゆる太鼓持ちだが、コメディな役どころで愉快。ドラマ全体を和らげる。

良いドラマだ。
今シーズンドラマのベスト3に入るかもしれない。

このところ韓国ドラマのレベルが高い。
春シーズンの「シグナル」も面白かった。

日本もがんばらないと。





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「高嶺の花」日本テレビ水曜夜10時
脚本/野島伸司
石原さとみ/峯田和伸/芳根京子/千葉雄大/三浦貴大

華道の名門本家の才女、月島もも(石原)としがない自転車屋店主、風間直人(峯田)
格差恋愛物語。
そこに華道世界のあれこれがからんでくるのだろう。

なんだろう、もういいかな、こういう雰囲気。
と今のところ思っている。
野島伸司脚本なのだが。

峯田ファンなので、楽しみにしていたのだが。
「ひよっこ」よかった。


「チアダン」TBS金曜夜10時
脚本/後藤法子 徳尾浩司
土屋太鳳/石井杏奈/阿川佐和子/オダギリジョー


夏休み定番の学園青春ドラマ。
落ちぶれたクラブを立て直すために仲間を集めて、訳あり教師の立ち直りも含めて、
大会に出るという定番。

この手の学園ドラマは、夏にあっても大いにいいと思う。
だいたいのストーリー展開は予測できても、それなり楽しむことができる。
はずなのだが、「高嶺の花」同様、ちょっと食傷気味になってしまうのは、
これは、ドラマのせいではなく、単に視聴者としての私に原因があるのだろうか。
猛暑、酷暑もその一因か?はたまた政治のせいか。

「表参道高校合唱部」はよかった。
2015年かぁ。もう3年前。

見続けられるかな。


「サバイバル・ウェディング」日本テレビ土曜夜10時
脚本/江藤凛
波瑠/伊勢谷友介/風間俊介/須藤理彩/ブルゾンちえみ/高橋メアリージュン/吉沢亮


小説原作もの。
こちらではしつこく書いているが、私は、波瑠ファン。
なので観る。観た。
が、ちょっといただけない。

結婚すると思っていた和也(風間)に振られて、黒木さやか(波瑠)は出版社に再雇用してもらうが、配属されたのがファッション誌で、任された仕事が「婚活」。
自分の市場価値を考えて、半年以内に結婚しろ。そのレポートを雑誌に公開。という命令を編集長(伊勢谷)から受ける。

コメディなのだと思うのだが、それほど面白くない。
同じ枠で今年の冬ドラマ「もみ消して冬」と同じくらい面白くない。
「もみ消して冬」は結局視聴を中断した。
波瑠のコメディな役どころでは、この春ドラマの「未解決の女」はとても良かった。
波瑠さんを中心に喋ってしまいましたが、まあその通りです。

このドラマでも、朝ドラ「半分、青い。」との重なりが気になる。
須藤理彩。現在出演中。

これも最後まで視聴できるか不安だ。

さて、3ドラマについて簡単に触れたが、
これだけ較べると、
世間でよく言われているように、
日本のドラマの質は落ちてるのか?と思ってしまう。

刑事ドラマ、医療ドラマのなかでなら、人生のあれこれが上手に描ける?
それが日本のドラマ界の現在、なのだろうか、
とふと感じている2018年猛暑の夏。




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「義母と娘のブルース」火曜夜10時TBS
脚本/森下佳子
綾瀬はるか/竹野内豊/横溝菜帆/麻生祐未/佐藤健


四コマ漫画原作ということ。
それをドラマにするのがうまくいっているのか?
視聴率は2桁キープの第2話のようだが。

有能なキャリアウーマン、部長の亜希子(綾瀬)が、良一(竹野内)と結婚することになり、娘に気に入ってもらうための手段、生活や娘の学校での問題解決などなどに、ビジネスマンとしての能力、ノウハウを杓子定規に駆使する。
その可笑しさ、というところが見どころなのだということは分かる。

「家政婦のミタ」「女王の教室」「デート」に登場した生真面目でユーモアの通じないロボットのような女性を彷彿とさせる。
「スタートレック ヴォイジャー」のセブンオブナインもそうかな。
契約家族的な感じでいうと、「逃げるは恥だが役に立つ」のテイストも入っている?

その一生懸命さには、悪意がない。彼女たちなりの誠実な仕事をしているだけ。
そして、そうしているうちに、彼女たちは人間的な柔軟性というものを知り得ていき、周囲の人々は定規を当てたような立ち回りが、懸命さの現れだと分かり、いつしかそこに愛を見出していく。
柔軟性のある人間は、ときに不正直だ。
しかし、乱暴かもしれない、不躾かもしれない、空気を読まないかもしれないが、上記のような人々は正直なことしか言わない。そんなキャラクターなのかな、と推測しているが、どうだろう。

実は私はこのドラマ、つまらない。見ているのが苦痛になる。
もっと上手に描けそうなものだが。
なにしろ脚本は森下佳子だ。
「白夜行」「仁」「ごちそうさん」「とんび」「天皇の料理番」「わたしを離さないで」
演出が平川雄一郎。これは、「白夜行」から「仁」「わたしを離さないで」スタッフだ。
つまらないと思いたくない。

綾瀬はるかと麻生祐未は、「白夜行」「仁」「わたしを離さないで」でも共演している。
佐藤健は「とんび」「天皇の料理番」の主役。
森下がお気に入りの俳優たちなのか?

あと気になるのは、朝ドラ「半分、青い。」との重なり。
佐藤健はもうほとんど出ないのかもしれないが、重要な役どころだったし、
麻生祐未は後半期から、つまりこの夏期から出ている。

どうしよう、来週観れるかな。
良一が病で倒れるようだ。そこからの義母と娘の10年間が描かれるようなので、ここからが見どころなのか。

でも経験上、良いドラマは出だしで分かるし、逆に途中から観ても面白いものだ。つまりどこから観ても面白い。

とりあえず、来週も観る。




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「絶対零度 未然犯罪潜入捜査」月曜夜9時 フジテレビ
沢村一樹/横山裕/本田翼/柄本時生/平田満/伊藤淳史/上戸彩


第1、2話視聴。

思ったより面白い。
役者たちもうまい。

「ビッグデータを解析してこれから犯罪を犯しそうな人を割り出して犯行を未然に防ぐ」という新しいシステムを極秘裏にテスト中の部署。
表向きは「資料課」。

内容的に深みがあって何かを語る、というドラマではないのだが、
いや、今のところそのようなエピソードはないのだが、
事件の推移を楽しむことができる。

主人公・井沢(沢村)は、元公安。なかなかのつわもので、その性質には人をも殺しかねない激しいものがある。
第2話の最後では、もしかしてこの人物を突き落としたのは……、と匂わせる演出もあった。

アメリカのテレビドラマ「クリミナル・マインド」「ブラック・リスト」を合わせたような運びになるのかな、と今のところ思っている。

小田切唯を演じる本田翼がうまい。

コンピューターを駆使して事件を追いかける(柄本)は、「クリミナル・マインド」のペネロープ・ガルシアか「NCIS」のアビーの役回りといったところだろうか。
これまでの刑事ドラマにも同質の役どころはあったが、アメリカドラマに較べるとかなり劣る感じはあった。
そのあたりは克服できているかもしれない。

とはいえ、仕事場の貧弱さは否めない。
このドラマに限らないが、こういった優秀な頭脳の集まりが、やっかいものの部署として描かれるので、致し方ないのか。
アメリカドラマでは、完ぺきエリート集団ゆえ。

このドラマの場合は、そもそも極秘任務なのでこれでよいのかもしれないが、
それにしても日本のドラマは、覆面的要素、実は……という、水戸黄門構図が好きなようだ。

トークの部分、つまりセリフの掛け合いだったり、ユーモアだったり、喩えだったりが、
どうも日本のドラマは上手ではないという不満足を私は持っていたが、
このドラマは、けっこういい所まできているのではないだろうか、
と思いながら、次話を楽しみにしている。



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先週から2018年の夏ドラマがはじまりました。
どうだろう。パッと見は期待できそうなドラマが少なそうではある。

今日は、「占いセラピー」のサイトへ書きましたドラマ評をご案内します。
第1話に占いが出てきたので、書きました。

よかったら読んでください。

「ラストチャンス 再生請負人」
月曜夜10時 テレビ東京
原作/江上剛 脚本/前川洋一
仲村トオル 椎名桔平 和田正人 大谷亮平 勝村政信 
町田啓太 石井正則 本田博太郎 長谷川京子

なぜこのドラマについて書こうと思ったのか、と言いますと、
占いのシーンが出てきたからです。
ですので、そこに特化して書きます。

続きはこちらで
「ラストチャンス 再生請負人」~どう?いい運勢?~



よりみちねこのドラマカデミアへようこそ!

「半分、青い。」NHK朝の連続テレビ小説
主演/永野芽郁


第14週
そうですか。
スズメ(永野)、漫画家やめたんですね。

今日は、たらたらと思うところを述べます。

秋風先生(豊川悦司)のような面倒見のいい人、なんとか力になってあげたいと思ってくれる人のそばでさえ、自分で自分の才能がいかほどかに気づけば、そこから先は、どうにもならない、
ということか。

私の友人の話で恐縮だが、彼女は絵を描いていた。が、あるショックな言葉を繰り返し受けて、いっさい描けなくなってしまった。描けばいいのに、と私が言うと、もうだめなのよ、と悲しそうに言った。
才能のあるなしは分からない。ショックなことがあったからといって描けなくなるなら、それはそれで才能の限界なのかもしれない。ただ、なんというか、そういうことってあるので、芸術家タイプには、不用意にネガティブな言葉を発するのは注意したほうがいいと私は思っている。性格にもよるが。
描けるか描けないかは、本人が一番分かっていることだから。やめるときはやめるし、続けたいなら続ける。

スズメも自分で決めた。
でも、スズメには才能がないわけではない、と私は思う。
ただ、理想が高いのかもしれない。その理想に追いつかなければ、小さな成功は成功ではない。
スズメもユーコも、途中からパワーが減退した。実際そういうことはあるのだろう。
例えば小説の世界でも、芥川賞を取ってもそれきり、という人だっている。

作家には、多作の人もいれば、じっくりと1年2年のペースで書く人もいる。
それを考えると、一般論に話は飛ぶが「ベーシックインカム」があれば、少なくとも衣食住のために好きなこと、できること、したいことを諦めなくていい。

スズメのおじいちゃん(中村雅俊)の戦争体験が胸にささる。
敗戦のあと、他国にいて、捕虜になったり、殺されることを避けるために、現地の人の力を借りて洞窟に身を寄せた。外へ出たら殺される、そう思ってじっと耐えた。そこで一日のうち、たった15分、太陽の明かりが入ってくる。その陽光のためだけに生きることができると(15分て朝ドラの時間?)。
人はどんな状況にも喜びを見出して生きることができる、ということ。
そうかもしれない。
偉大な漫画家先生でなくても、オリンピックに出場しなくても、代表選手にならなくても、ものすごく過酷な現場だったとしても。

すずめの新しい世界は、全くの別世界だ。
秋風先生のところと較べて俗っぽい匂いがする。
そして、何やら怪しげなクリエーターぞろい。

すずめはやっぱりクリエイティブなのかな。
秋風先生もスズメはアイデアを持っていると言っていた。
そう、アイデアマンなんだよね。
アイデアを出す人には、それを成形してくれる人が隣りにいればいい。
秋風先生が言っていた。「構成能力は努力では補えない」そうだ。
スズメにとって、ひょっとしたら律が、子供のころからそういう人だったのかもしれない。
糸電話もゾートロープもそうだ。

話は飛ぶが、
首相とか社長は、万能でなくてもいい。アイデアマン、夢を描く力を持っていることのほうが数学や法学ができるよりも大事だと思う。本当は。
首相のアイデアを官僚という頭脳が形にしていく。
主題歌のタイトルは「アイデア」だ。

新登場人物の森山涼次(間宮祥太朗)が忘れていった手帳に挟まれていた紙片。
そこに書かれていた「詩」。
これ読んだら、誰でも「なんや、これ?」と思う、と思う。

「僕は。」
僕は、遅いかもしれない。
でも、走ろうと思う。

僕は、悲しいかもしれない。
でも、隠そうと思う。

僕は、負けるかもしれない。
でも、戦おうと思う。

僕は、弱虫かもしれない。
でも、強くなろうと思う。

人生は、過酷かもしれない。
でも、夢見ようと思う。

翼は、折れたかもしれない。
でも、明日へ飛ぼうと思う。

僕は、きみの望むような僕じゃないかもしれない。
でも、きみの、きみの心の火が消えそうなときは、そっとこの手をかざそう。
いつまでも、かざそう。

それこそ心が折れているとき、すずめも現に翼が折れているわけだが、
こんな詩を読んだら、泣いてしまうな。
例えば、図書館で借りた本にこの詩がはさまっていたら?
この人、いつか分からないけど、前にこの本を借りて読んだであろう人、
どんな人なんだろう、と空想を膨らませずにはいられない。
只者じゃない、と思ったりするかもしれない。
いや、心折れている自分への、神様からのプレゼントだ、と思うかな。

ちょうど翼が折れたばかりのすずめのハートをわしづかみ、
じゃないだろうか。
いわゆる「一転語」みたいな。

一方で、これを書いた人が未知の人物だったとき、
こんなの書いた人どんな人だろうとわくわくして会ったら、がっかりしたなんてこともあるし、とくに深い意味もなく書いたなどとあっさり言われたりしたら、落胆が半端ないなんてこともありうる。
にしても、心に火を灯してくれる詩だ。

でも、ちょっと不思議だよねこの詩。
自分は今ネガなのだけれど、ポジに生きて行こうという意志表明で、
おそらくこの主人公はまだ癒されていない。「そうしようとしている」状態。
なのに最後に、相手のこと、誰かのことを守ろうとしている。

「歌詞」なのかな?
実は、このシーンで瞬間そう思ったのだけれど。
実感じゃないけどこんなの書いた、いいでしょう的な感じだったら、あまり嬉しくない。サイコパスか!と思っちゃうし。
けど、いっか。感動したんだし。


すずめさん、え~~、来週はそんなことになっちゃうの?




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